【インタビュー】オワリカラ、メジャーデビュー作のテーマは「“変化”かなと思っているんです」

ツイート

オワリカラが、5月18日にメジャーデビューアルバム『ついに秘密はあばかれた』をリリースする。“サイケでポップでカルト”とは、所属レコード会社が彼らに付けたキャッチコピーだ。その言葉どおり本作は前半6曲をA面・後半6曲をB面とし、ディープな一面とカラフルでサイケデリックな一面が詰め込まれた作品となった。

◆関連画像

今回BARKSではタカハシヒョウリ(Vo&G)にソロでのロングインタビューを行ない、じっくりと話を訊いた。「立っている場所が違うだけで、音楽が言っていることは全部同じだと思う」と語ったタカハシ。自らを“謎係(なぞがかり)”と称し、変化球を投げ続けるオワリカラが伝えたいメッセージとは? さあ、一歩足を踏み入れてみよう。めくるめく世界が幕を開ける。

  ◆  ◆  ◆

■実はこのアルバム、A面とB面に分かれているんですよ
■何万人の前でやるべきだと思っているんです

――メジャーデビューというタイミングなのでおさらいしておきたいのですが、オワリカラはどのような経緯で結成されたグループなのでしょう? 皆さん出身地も年齢もばらばらですよね。

タカハシ:知り合ったのは僕が二十歳くらいの頃かな。もともと4人ともそれぞれバンドをやっていまして、下北沢屋根裏(ライブハウス)とかでよく対バンしていたんです。それくらいの年齢のときによくある“このままバンドを続けていくか否か問題”が勃発しまして。結構みんなやめていくんですよね。僕のバンドも僕以外のメンバーが全員就職するというので解散的な感じになりまして。でも僕はすごく音楽をやりたかったから、やるんだったら一緒に面白いロックバンドを作っていける人とやりたいなと思ったので、対バンしていた人たちのなかで、同じようにバンドが解散した状態だった、気の合う変な人に声を掛けました。

――この3人に声を掛けた理由とは。

タカハシ:…彼らは3人とも変わっていて。ベースのツダ(フミヒコ)はレディオヘッドっぽい音響系のロックをやっていたんですけど、めちゃくちゃベースラインが変で! “このバンドこのベーシストでいいのかな!? すげえ変わったベーシストだな!”と思っていたんです(笑)。ドラムのカワノケンタも当時椎名林檎みたいな歌もののバンドをやっていたんですけど、ドラムの音がでかすぎて。そういう僕的にちょっとはみ出してる人を集めて、それぞれが自由に音を出したら何か新しいものができるんじゃないか、面白いんじゃないかと思って。それでもう8年やっていますね。

――そこまで続けられたのはなぜでしょう。

タカハシ:このバンドはとにかくスタジオに入ってセッションする――リフとかのアイディアを持ち寄ってみんなで音を出し続けるということを結構するんですよね。それがアルバムの曲作りに反映されるんですけど、セッションをしているとすごく奇跡的なことが起こったり、マジックが生じる瞬間があるんです。正直僕はそれがなかったらバンドをやめていると思います。そうやって出来上がったものは、頭で考えただけでは生まれないものだったりするんです。“このバンドにしかできないことができている”という実感があって楽しいですね。

▲『ついに秘密はあばかれた』初回生産限定盤

――オワリカラは2010年にリリースされた初の全国流通盤『ドアたち』を含め、フルアルバムを計4枚リリースしています。この8年間はバンドにとってどんな時期でしたか?

タカハシ:…だんだん人間性を獲得していったかな。最初はただのカオスでした(笑)。インディーズの1stの『ドアたち』、2ndの『イギー・ポップと讃美歌』、3rdの『Q&A』という最初の3枚のアルバムは、もともと頭のなかにあった“3部作”で。『ドアたち』は自分たちが考えていた面白いものを試してみた“実験編”“クエスチョン編”、『イギー~』はライヴを意識した“実践編”で、『Q&A』はソングライティングとしてオワリカラの1つの到達点を見つけたな…という意味で“解答編”。3部作として完結しちゃったからね、本当はそこでこのバンドは終わるのかなと思ったんですけど…スタジオに入るとやっぱりすごいマジックが起きるんですよ。それで「踊るロールシャッハ」「マーキュリー」「サイハテソング」とかの曲が出来て、“面白い曲が生まれる限りこのバンドはずっとやって届けていたいな”と思って『サイハテ・ソングス』を作った。そこで課題ができて。

――“課題”ですか。

タカハシ:もちろん毎回満足して、いいものが出来たと思っているんですけど、“もっとオワリカラが伝わる伝え方や音があるんじゃないか”と思って…なかなかその「音」に近付くことができないというジレンマや挫折があったんですよね。自分が好きな70年代のロックのアルバムや、80年代のポップスのアルバムに音の面で近づかない。どうしたらそこにいけるんだろう?とずっと思っていて。このアルバムをレコーディングし始めたのは一昨年(2014年)で、まだメジャーデビューすることも決まっていないときから録り始めて、とにかく実験をしようと。自分たちが求めている音や曲は一体なんなのか、自分たちがやりたい音楽を突き詰めたいな…と思って、ずっとレコーディングをしていました。

――アナログテープを使ったレコーディングもその一環だったと。

タカハシ:そうですね。70年代の磁気テープを回してレコーディングしたいと思っていて、なかなかそれを実行できなかったんですけど、ついにそれを実現することができて。そのときに録音したのが今回のアルバムの12曲中後半の6曲なんですよね。実はこのアルバム、A面とB面に分かれているんですよ。A面に当たる最初の6曲は今年(2016年)録ったもので、後半は去年(2015年)録ったものなんです。

――そうだったんですか。

タカハシ:だから後半の6曲はアナログテープで自分たちが納得いくまでやりたいようにやる、やりたいようにしかやらない、という考えで作っていって。後半6曲が完成したときに自分的にずっとやりたかったことの引き出しがバン!と開いて、“サウンド的にもオワリカラが伝わる音に辿り着けた”と、一度やりきった感があったんです。そしたら「次はこれをたくさんの人に聴いてもらうぞ」と思ったんですよね。そこに今回メジャーレーベルの話があって。それで今年(2016年)、ここを入り口にしてオワリカラの世界に入ってきてほしいなという想いでライヴ感のある前半の6曲を作りました。反動もあったと思いますね。

――オワリカラの“やりたいこと”を具体的な言葉にすると?

タカハシ:んー、言葉にするのは難しいなあ(笑)。でも徳間が作ったキャッチコピーの“カルトでポップ”はなかなかズバリかなと思っていて。ひとつのアルバムのなかにディープなところと、カラフルなサイケデリックなところがある――そういうものを作りたくて。今回前半と後半で振り切って作ることができたので、とても手応えがありますね。前半と後半は作っている脳みその構造も違って。後半6曲は聴く人をまったくイメージしていないし、ライヴのことも何も考えないで、とにかく自分が部屋で聴きたい音楽を作ろうと。だから向いている方向は完全に内側ですよね。

――後半6曲を録音していた2015年は、夏にカナダツアーも回ってらっしゃいました。

タカハシ:飛び飛びでずっとレコーディングをしていた感じでしたね。無間地獄というか(笑)、終わることのないミックスをひたすらやって。“どうしたら自分的にグッとくるものができるかな”と作業していて……そのポイントを見つけられたんですよね。アナログとデジタルのバランスの発明ができたんです。2年間じっくり時間をかけてアルバムを作ったのは初めてだったので、僕ら的には2枚分のアルバムを1枚に濃縮している感じですね。

――今回徳間ジャパンからリリースをすることになった決め手は?

タカハシ:自分たちでレーベルを作ってB面の6曲を出すという考え方もあったんです。でも僕らのようなバンドが自主レーベルから出すって、わりとよくあるとも思うんですよね。僕としては“存在”として“どこにも属していない”というのが理想の状態なんです。アンダーグラウンドだけでもないし、メジャーなフィールドだけにいるわけでもない、自由なところにいるのが僕にとってはベストなんですよね。だからこういうバンドがメジャーレーベルから出せるって状況の方が刺激的だし、自由で面白いかなと。それにやっぱり僕はね、オワリカラはかっこいい曲だしいいバンドだと思っているんです。何万人の前でやるべきだと思っているんです。いいものが出来る限り、それをひとりでも多くの人の前でプレイするというのがバンドの使命なのかなと思っているので。

◆インタビュー(2)へ
この記事をツイート

この記事の関連情報