【インタビュー】森田真奈美、多彩な曲想と芳醇なメロディ、楽器バトルが楽しめるピアノ・トリオ・アルバム『Naked Conversation』

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■『Naked Conversation』はコンセプト的に何も装飾したくなかった
■一発録りで切り貼りもしてないし録ったまんま


――目の前に待望のニューアルバム『Naked Conversation』があります。今回は少し時間があきましたね。前作の『When Skies Are Grey』から約3年半です。

森田:特に理由があったわけではないんですけど、『When Skies Are Grey』はすごく作りたかった作品で、それをやったあと、やりきった感があったので。で、実はこの『Naked Conversation』は、けっこう長い時間をかけて録っているんですよ。ニューヨークに仲のいいエンジニアの人がいて、「いつでもいいよ」と言ってくれたので、半年ぐらいかけてユルユル録ってる感じ。なので気持ち的にも焦っていないし、ナチュラルな感じが音にも出ているかもしれない。今回は、そういうコンセプトでやりたかったんです。

――聴き心地として、本当にナチュラルだし、空気になじむというか肌に合うというか。1曲目「Stranded」は、とってもいい曲。寄せては返す波のような、穏やかで心地よいうねりを感じるような。

森田:「Stranded」は“漂う”という意味なので、まさにその通りです。通じましたね! 伝わるのってうれしい~。


――ありがとうございます(笑)。音を聴いているだけでそう思ったので。

森田:インストなので、タイトルはついていても、お客さんはいろんな想像をしてくれるんですよ。でもそれはドンピシャです。

――でもインストの醍醐味って、そこですよね。それぞれが想像を広げて聴くことが。こちらで描いた画がそのまま届かなくても、その人なりの画が浮かべばそれでいいというか。

森田:そうなんです。だから曲の説明もしたほうがいいのか、しないほうがいいのか。タイトルもつけないで、“作品第何番”とかにしたほうがいいのかな?とか思うんですけど。基本インストは、ネタバレしないほうがいいのかな?とは思います。

――真奈美さんの音楽には、タイトルがあったほうがいいと思いますよ。5曲目の「Box of Dreams」とか、とってもいいタイトル。

森田:ありがとうございます。

――メロディもどこか童謡っぽい感じがして、風鈴みたいな音が聴こえたり、細かいパーカッションの音が、さわさわと風が吹くように聴こえたり。もの悲しさもある、すごくいい曲。

森田:この曲にはすごい思い入れがあるんですよ。それこそ、言っちゃうとネタバレになるので、言わないほうがいいと思うんですけど。悲しい感じ、やりきれない気持ちとかを、私なりに表現しています。ミュージシャンには曲の説明をするんですけど、そしたらドラマーが、ああいう演奏をしてくれて。ポジティブなメッセージを込めているんですけど、もう無くなってしまったものと、今もあるものと、どっちも共存して未来がある、という感じです。


――好きな曲を、ランダムに言っちゃいますけど。最後の「To Be Continued」が好きです。最初は不安定な、不穏なムードから始まって、途中でパッと光が射しこんで、未解決で終わるという。あのエンディングが本当に“つづく”という感じだったので。

森田:“つづく”なんですよね。終わり切らない感じを出したくて、ああいう謎な終わり方になっているんです。これはパッと思いついた曲で、「これを入れよう」とすぐに思いました。パッとできることもあれば、すごい時間をかけて、結局曲にならないこともあります。

――あとは「Letter From」。これは、誰からの手紙なのかな?と。

森田:これは、実はすごい古い曲なんですよ。学生の頃に、母親から来た手紙をテーマにしています。この曲を聴くと、やっぱり若いなと思いますけど、いま演ってよかったです。『Colors』には入れられなかったですね。「Letter From」と、6曲目の「Left Alone Tonight」が、けっこう昔の曲なんです。たぶんその時の気持ちが若すぎて、昔のアルバムには入れられなかったんですね。

――「Left Alone Tonight」はかっこいい。変拍子も入って、トリッキーで躍動的で。

森田:私はこの曲が、アルバムの中で一番好きです。でも、すっごい難しいんですよ! コード進行を複雑にしすぎて、ソロが取れなくて、それでレコーディングできなかったという理由もあるんです(笑)。それが最近できるようになった。成長したんですかね。

――そんな盛りだくさんのアルバムの、タイトルが『Naked Conversation』。ありのままの会話。

森田:コンセプト的に、何も装飾したくなかったんですよ。1枚目の『Colors』にはそんなにコンセプトはなくて、バッと録っちゃったんですけど、それでも正直な話、手直しはしているんです。『For You』はわりときれいに録ったんですけど、『When Skies Are Grey』はエディットもしてエフェクトもかけて、ガッツリやったんで、今回は何もしたくなかった。一発録りで、切り貼りもしてないし、録ったまんま。

――それでこの臨場感が。

森田:音量はいじっていますけど、基本的にはそのまんま。一番録ったテイクでも、4テイクぐらいですね。それこそ「Left Alone Tonight」は、ソロを弾くのにてこずりましたけど、それでも4テイクぐらいで、ほかは全部1~2テイク。昔のジャズのアルバムって、だいたいそうですよね。

――ですね。要するに、スタジオ・ライブ録音。

森田:だからマイルスにしろコルトレーンにしろ、すごいんですけど、そこ音外したよね?というのも普通にあって(笑)。あえてそういうものを目指したかったんですね。私、ビートルズ大好きなんですけど、ビートルズの昔のアルバムとか、ヤバイじゃないですか。「ジョン、そこのピッチ、ヤバくない?」って(笑)。でもそれをカバーするパワーがあるんですよね。そういうものをやりたかったんです。

――タイトルの会話というのは、リスナーとの会話というイメージ?

森田:これはミュージシャン同士のカンバセーションです。出したあとは、聴いてくださる方との会話になるんですけど、タイトルをつけた理由はそれですね。一発録りで、ミュージシャン同士の会話をそのまま録るということで。


▲撮影:Koji Ota

――今のメンバー、ずっと変わらないですよね。

森田:いえ、実は今回、ドラマーが違うんですよ。ずっと一緒にやっていたトーマス・ハートマンがほかの人のツアーで忙しくて。デヴィン・コリンズという、ポップスとか、プログレ・ロックみたいなものをやっている人です。ジャズ・ドラマーとは違うタイプなので、ちょっと雰囲気が違う感じがしますね。

――余談ですけど、ドラマーのトーマスって、ジャズ以外の活動も幅広くやってますよね。ほかのバンドで日本に来ていたりとか。

森田:Salt Cathedralで来ていましたね。この間も、ビヨンセのバンドでキーボードを弾いている辻利恵さんと一緒に来ていましたし。トーマスはいろんな仕事をしています。ドラマーって幅広い。みんないろいろできるんですよね。うらやましいです。私、ジャズ仕事ばっかりだから、本当はポップスもやりたいんですけど。

――あ、そうなんですね。アピールしましょうよ。

森田:ポップスの仕事やりたいです!(笑) ポップス大好き。NHK歌謡コンサートとか、出たいですもん。出なくていいって(笑)。

――いやいや。面白いですよ絶対。

森田:何でもやりたい。でも、自分がアルバムを出すとしたら、こういうものになりますね。そして次は、ビッグバンドをやりたいんですよ。

――おおっ。

森田:バークリーのジャズ作曲科の、卒業制作がビッグバンドだったんです。それ以来ずっとやりたいと思っているんですけど、それを次のレコーディングの目標にできたらいいかなと思います。その前に、ライブをやるんですよ。ビッグバンドの初ライブを。

――これですね。<MANAMI MORITA BIG BAND>、5月28日、彩の国さいたま芸術劇場小ホールにて。

森田:新曲もあるし、昔の曲を手直ししたものや、カバーも2曲ぐらいやる予定です。ニューヨークで一緒にやっていた、フランス人のシンガー・Violetteをゲストで呼んで、その子の曲もやります。前半がトリオ編成なので、『Naked Conversation』からの曲もやるつもりです。その日、アルバムを先行発売する予定なので。

――みなさん、ぜひ足をお運びください。

森田:ビッグバンド、ずーっとやりたかったんですよ。アメリカで活動してる挟間美帆ちゃんもビッグバンドをやっていて、「ビッグバンドって大変だよ~」とか言ったら、「書いてあげようか?」って。書いてもらったら意味ないから(笑)。でもビッグバンド、続けていきたいですね。

――最後に、思い切りでっかい質問を。これからのジャズ・シーンを背負って立つとか、そういった意気込みはありますか。

森田:全然ないです(笑)。みんなで一緒に盛り上げていけばいいんじゃないですか。でも将来的には、埼玉県(※彼女の出身地)でジャズフェスをやりたいんです。若手の子や、ニューヨークで一緒にやっていて、そんなにメジャーではないけれどすごい人がいっぱいいるので、そういう人をもっとピックアップできればいいなと思うんです。で、最終的に、自分のビッグバンドをトリで出すという(笑)。それが夢です。

――期待してます。めっちゃ楽しみです。

森田:日本のジャズは、ほかの方に背負っていただいて。私は埼玉のジャズを背負って立ちます!(笑)

取材・文●宮本英夫



『Naked Conversation』

発売:2016年6月1日(水)
RBCP-2995 2,500円(抜)
1. Stranded
2. Beats to be
3. Caravan
4. Letter From
5. Box of Dreams
6. Left Alone Tonight
7. I Will Be Here
8. To Be Continued

ライブ・イベント情報

<Manami Morita Big Band>
5月28日(土)彩の国さいたま芸術劇場小ホール
第1部 Manami Morita Trio
第2部 Manami Morita Big Band Guest:Violette
http://www.confetti-web.com/detail.php?tid=33042

<Ami × Manami feat.Violette>
5月29日(日)JZ Brat (渋谷, Tokyo)
6月1日(水)Girl Talk (水戸, Ibaraki)


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