【ライヴレポート】A9、ツアー最終日に「この空間こそが俺たちの光」

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A9の卓越したメロディ、洗練されたバンドアンサンブルを全面に押し出した最新EP『LIGHT AND DARKNESS』を引っ提げた全国ツアー<TRUTH IN LIGHT AND DARKNESS>が、5月29日にTSUTAYA O-EASTでファイナルを迎えた。

◆A9 画像

品川ステラボールで幕を開け、全16本におよんだ本ツアーはA9にとって挑戦でもあった。バンド史上初の2部制という形式をとり、第1部では映像をふんだんに取り入れ、“動と静”で分けるなら“静”でありながら、とてつもなく刺激的で生々しいA9を見せた。一方の第2部ではライヴのキラーチューンを織り混ぜつつ、オーディエンスと熱い空間を共有するアグレッシヴなステージを展開。初の試みゆえに前半戦では試行錯誤もあったようだが、コントラストをつけてバンドの匂い立つような色気と繊細さ、熱量をあますことなく表現することによって、A9というバンドが化けたと思わせてくれたのが最終公演だった。


第1部ではSEもない無音の中、Naoがひとりで歓声とともにステージへ登場。リハーサルでのA9を再現したポジション(正面ではなくメンバーの顔が見える斜めの位置)のドラムセットに座り、「ツアーファイナル! バッチリだ!」と叫んでドラムを叩きだすと、沙我がベースで加わり、ヒロトに続いて虎とギター陣が順に姿を表わす。4人の音が鳴らされたところで最後に将がハンドクラップで登場。いつもなら下手の虎は上手のやや後ろの立ち位置だ。

第1部の幕開けは『LIGHT AND DARKNESS』収録曲のメロディックでグルーヴィな「SILVER」。ほの暗い照明の中、虎プロデュースによる映像がステージ全体を覆い、向かい合ってギターを鳴らすヒロトと虎、将がNaoの方を向いて煽る光景はジャムセッションを見ているように刺激的だ。続いてヒロトがギターのネックを高く掲げ、妖艶で熱いソロで魅了したインディーズ時代のナンバー「Siva&Diva」へ。ループする沙我のフレーズが心地よく、10年以上の月日を飛び超える2曲が今のA9のスキルで鳴らされた。


「オマエら、スイッチ入ってるか!? アガってるか!?」

将が超満員のフロアを煽り、ヒロトが本ツアーで全国各地のファンを驚かせてきた2曲のニューヴァージョンについて触れた。

「僕たちが大事に育ててきた「華【h?・nə 】」と「RAINBOWS」という曲が沙我くんの提案によって生まれ変わりました。「華~」は本来、曲が持っている可憐で美しい世界観をより強調したアレンジになっていて「RAINBOWS」は曲の持っているインダストリアルな部分や僕たちのルーツを押し出したクールなアレンジになっています」

蝶が舞うように聴いてほしいというヒロトの言葉どおり、「華【h?・nə 】」はセンシティヴで浮遊感のある演奏と将の伸びやかなヴォーカルが印象的で花をモチーフにした映像が彩りを添え「RAINBOWS」はまさにインダストリアルで大胆なアレンジが施されて、EASTはクラブ空間と化した。


日本的で美しい景色を描き出すポップチューン「BLOSSOM」、沙我がギターに持ち替え、トリプルギターで響かせた幻想的な「INSOMNIA」、虎がベース、将がアコギを弾き、沙我のポエトリーリーディングが空気を変える「ハロー、ワールド」など、第1部はめくるめくA9の新世界。Naoのタイトで緻密なドラムは大黒柱としてAORやディスコミュージックのエッセンスを取り入れた新曲のビートをきっちり支え、曲が演奏されるごとに拍手やため息混じりの歓声で反応するオーディエンスは視覚と聴覚に刺さりまくるアーティスティックな前半のセクションを楽しみ尽くしていた。そしてアイコンタクトをしながら音と音の間合いがスリリング且つ細やかな演奏を響かせるA9は成熟したロックバンドへ進化した姿を見せてくれた。

第2部へとシフトする転換時にはコズミックなインストゥルメンタル「THE SOUNDS OF GALAXY」と本ツアーの映像が流れ、ライヴはいよいよ後半のセクションへ。第1部とはうってかわって、まばゆい光がステージに注ぎ、ライヴは最新EPの1曲目を飾るファンキーで洗練されたリズムの刻みが心地いい開放的な「PRISMATIC」からスタート。


将のハイトーンで甘い声が活きるメロディが場内を包んでいき、ヒット曲「TSUBASA.」では将がマイクスタンドを高く掲げ、沙我、虎、ヒロトがステージぎりぎりまで前に出てきてパフォーマンス。“可能性しか要らない 何が出来るかさ”という歌詞がさまざまなことを乗り越え、凜として今、このステージに立つ彼らの今を象徴しているように響いてきた。幸せだと連発した将がツアーの実感について触れた。

「『LIGHT AND DARKNESS』というアルバムでは“闇の中で俺たちがみんなの光になれたらいいなって、そんな想いもあったんですが、このツアーを廻ってみて、みんなの存在、みんなの作るこの空間が俺たちにとっての光だと再確認させられました。ありがとう!」


続けて最新アルバムの中からの曲が放たれ、場内の温度はどんどん上昇していった。鉄板曲「九龍-NINE HEADS RODEO SHOW -」ではヘドバンではじけ、沙我が「このツアーで初めて演る曲」とレコーディング当時のエピソードにも触れた「JEWELS」ではイントロで歓声が上がる。会場の一体感もさることながら、1つになっているとしか表現しようがない5人の一体感ゆえに放たれる熱は時間をも溶かしていく感覚に陥るほどだった。

オリジナルヴァージョン「RAINBOWS」では沙我がベースを置いて何度もジャンプし、ヒロトが「オマエらの全てを俺たちが受け止めてやるよ! このツアーでいちばん狂った夜にしようぜ!」と煽り、ライヴは終盤戦に。スピードチューン「DEAD SCHOOL SCREAMING」では将が全員にマイクを向け、本編は「闇ニ散ル桜」で締められた。


アンコールでは全員がトーク。8月28日に新木場STUDIO COASTで開催されるライヴについて将が、「12周年ライヴで原点回帰してもう1度スタートするんだよ」と話し、虎は「このバンド、アホみたいに仲がいいから」と笑顔。ヒロトは「言わせてもらうと俺らは解散しないから! お客さんが最後の1人になっても絶対やるから!」と宣言。大歓声が起こったのは言うまでもなく、「ヴェルヴェット」では大合唱に。虎の野太いカッティングが痛快な「ブループラネット」で終了。

スクリーンに告知映像が映し出されてもアンコールの声は大きくなるばかりで、再び5人が登場。「この景色にぴったりの曲を」と再度「PRISMATIC」が演奏された。

5人のピースが絡み合い、ぶつかりあうバンドマジックで終始、魅了したA9。“2004-2005”の原点がコンセプトとなる新木場COASTのライヴが意味するものに期待は募るばかりだ。

取材・文◎山本弘子

■<TRUTH IN LIGHT AND DARKNESS>
5月29日@TSUTAYA O-EASTセットリスト

【第1部】
01.SILVER
02.Siva&Diva
03.華 (New ver.)
04.RAINBOWS (new ver.)
05.BLOSSOM
06.INSOMNIA
07.ハロー、ワールド
【第2部】
SE.THE SOUNDS OF GALAXY
01.PRISMATIC
02.TSUBASA.
03.ZERO
04.DARKER AND DARKER
05.ANIMUS
06.九龍-NINE HEADS RODEOSHOW-
07.JEWELS
08.jellyfish
09.RAINBOWS
10THE LAST EMPIRE
11.DEAD SCHOOL SCREAMING
12.闇ニ散ル桜
encore
13.イレイザー
14.ヴェルヴェット
15.ブループラネット
W.encore
16.PRISMATIC

※KKBOXにてプレイリスト公開中
http://kkbox.fm/R55NEg

■ライヴ情報

■<A9 XII ANNIVERSARY LIVE"NO NAME"-名前は未だ無い->
2016/8/28(SUN) STUDIO COAST
OPEN/START 16:45/17:30
チケット一般発売:7月23日(土)

■<Saga&Show Birthday Feature Live 『SS』-Saga side->
2016/6/24(FRI) 新宿ReNY
http://0624saga.peatix.com

■<Saga&Show Birthday Feature Live 『SS』-Show side->
2016/7/5(TUE) 新宿ReNY
http://0705show.peatix.com

■2nd EP「LIGHT AND DARKNESS」

2016.4.13 Release
NINE-0002 ¥2,500(+tax)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/6936798

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