PENICILLINのギタリスト千聖のソロプロジェクト“Crack6”が6月1日、フルアルバムとしては約3年ぶりとなる『薔薇とピストル』をリリースした。昭和映画のポスターを思い起こさせるジャケットと衣装はMSTRこと千聖曰く、「ロックと民族音楽の融合」。“薔薇”をドラマティックな人生の日常に例え、“ピストル”を紛争やテロが起きている世界の非日常に例えている。

◆『薔薇とピストル』Digest映像

深いテーマをはらみつつもサウンドは、Crack6ならではのハードロック/ヘヴィメタル炸裂のナンバーあり、スイートなラブソングあり、恋の駆け引きを歌ったシャッフルナンバーあり、はじけたポップチューンあり……と実にヴァラエティ豊かな構成となっている。現代社会で誰もが考えさせられるテーマをCrack6流に表現した“人間臭くてエンターティンメントなアルバム”の制作エピソードについてMSTR (千聖) にたっぷり語ってもらった。

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■薔薇にも棘がある
■幸せと困難は背中合わせ

──約3年ぶりのフルアルバム『薔薇とピストル』はメッセージ性がありつつ、バリエーションに富んだ作品になりましたね。前ミニアルバム『Change the World』は“破壊と再生"がテーマになったコンセプチュアルな作品でしたが、今回もテーマを立てたのですか?

MSTR:『Change the World』でコンセプトを立てて作ったら歌詞の世界観も含めて面白かったというのがあって、今回も作る前にテーマの候補を箇条書きしていきました。ただ前作はミニアルバムというサイズのわりにテーマがグローバルで、すべてを語り切れなかったという思いもあったんですね。生命の美しさ、強さをテーマにしている曲もありましたが、“生命は生まれて死ぬ、そしてまた生まれて…”っていう事実を科学的というか、現実的側面から捉えた無常な世界を表現していたのもあったので。

▲Crack6

──ダーウインの『種の起源』の話もしていましたもんね。

MSTR:そうですねぇ。画家のポール・ゴーギャンの思想だったり、生命について先人たちが考えていたことと自分が考えたことを融合させたストーリーになっていたんですが、今回のアルバムではもっとヒューマニズム的なところに焦点を当ててみようと思ったんです。日々、生きていると人間、ドラマティックなことがいろいろと起きるので、そういうことを考えていた時に思いついたのが『薔薇とピストル』というタイトルです。人生の中で幸せな状態を“薔薇"に例えたんですが、その薔薇にも棘がある。幸せと困難は背中合わせだと思ったんですね。

──なるほど。

MSTR:自分のことで例えたらアルバムを作れて幸せなんだけど、締め切りという棘があるっていう(笑)。痛みと幸せって表裏一体で、棘がなかったら幸せを感じることもないだろうなって。で、薔薇さえ感じられない状態のことを例えたのが“ピストル"で、テロや紛争など最悪の状況のことを意味しています。花があるのかすら、わからないというか。

──そこに花があったとしても、それすら見えなくなってしまうような。そんな深いテーマがありつつ、『薔薇とピストル』って昔ながらのロックの王道をいくタイトルですね。

MSTR:2つ合わせたら完全に王道ですね。LAから発祥したバンドみたいな。

──ははは。ガンズ・アンド・ローゼズですか?

MSTR:そうそう(笑)。個人的には大好きですけどね、今回は残念ながらそれは関係ないんですよ。いちばん最初、このアルバムのテーマは“戦争と平和"だったんです。作っていくうちに結果、日常の中の幸せだったり困難を歌った曲が増えましたね。

──アルバムは「名もなき聖歌~little anthem~」で幕を開けます。

MSTR:スコットランド民謡みたいな牧歌的な曲を前から作ってみたかったんですよね。スコットランドだと通常はバグパイプという楽器を使うんだけど、僕の場合、そこはエレキギターで表現しようと。だから、どちらかというと民謡、民族音楽方向ですね。歌詞は日本の四季を取り入れていて、生きとし生けるものを祝福しているので『Change the World』に近い世界です。神様を讃えるというよりは今、生きている人たちのための聖歌。だとしたらアンセムかなと。

▲SHIGE ROCKS (G & Sound Producer)

──なるほど。衣装やジャケットを含めて、今回のアルバムは日本を意識している?

MSTR:衣装やジャケットはロックと民族音楽の融合のイメージですね。単純に着物とかというより‘80年代の『カムイの剣』(※アイヌの血をひく忍者の冒険活劇)というアニメや、映画『ZIPANG』(林海象監督の時代冒険活劇)がヒントになって、和洋折衷のイメージでいこうと。この服、着物のように見えて実はTシャツと合体しているんですよ。だから、ステージでも動きやすいデザイン。

──そうなんですね。昭和の映画っぽいアートワークだなとは思っていました。

MSTR:そうそう。黒澤明監督の映画みたいなイメージもあったんです。内ジャケットのモノクロの写真はかなり、意識していますね。

──タイトル曲「薔薇とピストル」はMSTRのハードなギターがフィーチャーされつつ、メロディには昭和歌謡のテイストもあって歌謡メタル的。“あなたの武器は 愛か? 憎しみか?"と問いかける歌詞が出てきますが、アルバムのテーマと直結する曲ですか?

MSTR:そんな歌謡でしたか? それはそれで面白い意見ですね(笑)。基本的には激しい曲を作りたいというところからスタートしたんですが、まわりから「これがいちばんタイトルチューンに向いてる」という意見があって。

──派手でキャッチーですからね。

MSTR:僕らしいんじゃないかということで。“時代を撃ち抜いて咲け!"とか今のCrack6にピッタリの表現であり、曲調ですね。今の状況に対して問題提示をしている曲です。

──ミュージックビデオの見どころは?

MSTR:Crack6では初めての監督さんと、綿密に打ち合わせをした上で撮ったので、面白いミュージックビデオになりましたね。映像は全部合成なんですよ。全員揃って演奏しているように見えるカットも実はバラバラに撮ってますし、前半と後半の背景が全く違うので驚くかも。僕ら自身が一番驚いたかもしれない(笑)。最初のクローズドな世界から最後の展開はアバンギャルドな砂漠の広大でオープンな世界に移行するというパンチのある映像になっています。

──演技もしているんですか?

MSTR:イヤ、撃たれて死んでしまうシーンが出てくるんですけどね、まぁ大した演技ではないです(笑)。それは置いといて、展開も派手だし見応えがあると思いますよ。

──活劇風なんですか?

MSTR:というより、どちらかというと『スター・ウォーズ』風ですかね(笑)。

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