【インタビュー】Crack6、3年ぶりフルアルバム完成「テーマは“戦争と平和”」

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■メロディ、コーラス、ギターソロも含めて
■僕の理想に近い曲ですね

──アルバム『薔薇とピストル』には本当にいろいろなタイプの楽曲が収録されていて飽きさせない。さっき民族音楽の話が出ましたが、エレクトリックシタールで始まる「我考エル故ニ我有リ」もエキゾティックな曲になっていますよね。

MSTR:この曲はSHIGEさん (SHIGE ROCKS)がスタジオでギターリフを弾き始めたのがキッカケで、「それ、いいですね」って盛り上がって、みんなで「こういう展開、リズムはどうだろう」ってアイデアを出し合って完成させました。SHIGEさんを主体とした共作ですね。

▲TENZIXX (B & Cho / 長野 典二 from everset)

──歌詞はラテン語ですか?

MSTR:そうですね、英語とかドイツ語とかフランス語とかじゃないので何かないかな?って考えてまして。フランスの哲学者、デカルトの有名なラテン語の名言“Cogito, ergo sum"を引用しています。小学生の時に読んだ漫画『コブラ』に出てきたんですよ。コブラとサラマンダーが対決する時に、この言葉をコンピュータに入力するとサラマンダーがぶっ壊れるっていう。当時は「どういうこと?」って意味が分からなかったんですが、今考えるとデカルトの哲学は深いなと。まぁでも、そもそも、この曲はインストだったんですけど、楽器的な声を入れたかったんですよね。だから、自分の中では歌というよりも言葉という感覚です。

──途中、スパニッシュ的な展開になるのも面白いですよね。

MSTR:ちょっとしたプログレみたいなイメージの曲ですね。最初と最後はシタール (インド楽器)的な音色も入れたし、いろいろな要素をごちゃ混ぜにしている。

──そんなプログレロック的な濃い曲もあれば、「Baby I love you」のようなポップでロマンティックなラブソングもあるし、振り幅がデカいですよ。

MSTR:そう言われたらその通りですね。「Baby I love you」とか超絶ベタなラブな歌詞ですもんね。アルバムの中でいちばん最初に作った曲で、この曲だけ僕のアコースティックライヴにも参加してくれている山田巧くんというギタリストにアレンジしてもらってるんですよ。僕が作ったデモだけ渡して後は全部お任せ。要するに、この曲では僕自身は歌だけで、ギターも巧くんに弾いてもらってるんです。初の試みなのですごく新鮮でしたね。

──任せたことによって、こういうストレートなラブソングになったんでしょうか?

MSTR:イヤ、歌詞はその後に作ってますから、直接は関係ないかな。むしろ仮歌詞のほうから影響受けてるのかも。最初は「チャイナブルー」っていう仮歌詞がサビで出て来てたんですよ。大げさにいうと夜景を見ながらプールバーで君に乾杯みたいなイメージだったんですが(笑)。

──めっちゃバブルじゃないですか(笑)。

MSTR:そうなんですよ。そうしたら歌詞を共作している (大久保) 英紀に「それはちょっと止めた方が良いっすよ」って言われて、「そうか?」みたいな(笑)。まぁ、タイトルだけじゃなくサビ頭でもガンガン「Baby I love you」と歌っているので、どれだけスイートなんだって思いますけれど。こういう詞を歌える限界の年齢までベタなラブソングを歌おうという、ある種、挑戦の曲ですね。この曲は“薔薇"のど真ん中かもしれない。

▲JIRO 6 (Dr / O-JIRO from PENICILLIN)

──シリアスなロック「Love&Hate」からユーモラスでキュートな「ポップ☆コーン」への流れもギャップ大でした。

MSTR:「Love&Hate」はSHIGEさんが作ってくれた曲で映画音楽っぽい感じにしたかったというか、これこそ“薔薇とピストル"のテーマと直結する大事な曲ですね。そこからの流れは確かに。

──「ポップ☆コーン」は料理がモチーフだし、『Crazy Monsters Parade』に収録されていた卵料理の曲「キミが好き」の続編なのかと思いました。

MSTR:そうおっしゃる方もいるかもしれないですけど(笑)。

──あ、違うんですか?

MSTR:ポップコーンの曲を作りたいという構想は10年ぐらい前からあったんですよ。なので、やっと実現したというか。しかも詞と曲とほぼ同時に出てきて。

──出だしのコーラスも笑えるし、セリフ入りだし。

MSTR:セリフはふだんの僕らの会話に近いですね。人間性が非常に表れてる。1番で僕は良かれと思ってキャラメルポップコーンを作ってるんですけど、JIROさん (JIRO 6) に「俺は塩味のほうが好きなんだけど」って真逆の意見を言われ、TENちゃん (TENZIXX) は「バターのが好きっす」って言うし、SHIGEさんも「俺も」って便乗するっていう(笑)。それで2番で「じゃあ」って塩バターポップコーンを作るという展開になっています。ただね、音楽的にみれば、ギターソロ明けのセリフバックでヴァンヘイレンっぽいフレーズが出てきたり、メロディ、コーラス、ギターソロも含めて僕の理想に近い曲ですね。

──個人的に押し曲なんですか?

MSTR:でも、そうなるとタイトルが『薔薇とポップ☆コーン』になっちゃいますからね(笑)。

──いきなり軽いテイストになっちゃいますね。あと面白かったのはフュージョンテイストの「サムライウーマン」です。

MSTR:16ビートのカッコよさを出したいと思っていちばん最後に作った曲ですね。フルアルバムだからこそ入れられたタイプ。

──OL視点の曲ですよね。

MSTR:歌詞はネットサーフィンしていたら、会社の上司や部下に疲れてる“独り言"を書いていらっしゃる方がいて、面白くてブックマークしていつも読んでたんですよ(笑)。毎日、へとへとになっても一生懸命戦っていて、彼女もサムライなんだなと思って書きました。ちょっとデフォルメされている箇所もありますし、こんなにみんながストレスたまっているかどうかはわからないですけど。

──やー、上司にムカついたり、たまっている女子は多いと思いますよ。共感する人も多いんじゃないかと。

MSTR:「こういう人もいるかな?」と思って作りました。上司や部下、取引先の人と戦うということではなくて、弱い自分や情けない自分と戦ってる人の曲ですね。弱さも自分だよねって僕は思うんですけど、例えば土日にライヴで楽しんで「さあ、月曜から戦おう!」って思っている人たちはいっぱいいるんじゃないかと思ったので、応援する気持ちで作りました。主婦の方が旦那に当てはめて聴いていただいてもいいし、こういう薔薇と棘をみんなが感じて生きていると思うんですよね。

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