【インタビュー】韻シスト、ヒップホップを聴かない人にも「“これ、かっこええわ”という聴かれ方をしたい」

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時代は回る。本物は残る。韻シスト、2年8か月ぶりのニューアルバム、その名は『CLASSIX』。PUSHIMが立ち上げたレーベル“Groovillage”を通して、久々のメジャーリリースだ。生バンドでヒップホップを奏でるという、15年以上に及ぶバンドのコンセプトは不変。それどころか、ジャズ、ソウル、ディスコ、ファンクなど、バンドのルーツとなる音をふんだんに散りばめた、過去最高に豊かでグルーヴィーなアルバムだ。PUSHIM×韻シスト「Don’t Stop」、Chara×韻シスト「I Don’t Know」と、2曲のヒットシングルも当然収録。流行りに流されず、貫いてきた音楽への愛と情熱が、再び時代をとらえるか。BASI(MC)とShyoudog(B)のアツい話を聞いてくれ。

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■生バンドでヒップホップを始めたきっかけ

――メジャーリリース、久々ですよね。どうですか、居心地は。

BASI:いやあ、行きの新幹線の中でも話してたんですけど、こうやってインタビューさせてもらう機会も増えますし、それを通しても僕らも、どんな作品やったかを客観的に感じることもできますし。インディペンデントって、そういうことがなかなかないんで。自分たちからアピールしないと。

Shyoudog:この作品を届けるためにこんなに動いてくれてるんや、ということに感動してます。すごくうれしい。その気持ちに応えられたらいいなと思うんですけど、頑張るしかないです。

――いい機会なので、新しいリスナーのために、韻シストとは?という話もあらためてしておきたいと思っていて。そもそも90年代の終わりに、生バンドでヒップホップバンドをやるというのは、どういう発想から始めたんですか。

Shyoudog:僕とMCのサッコンが高校が一緒で、奴のバンドのベースが抜けて、僕が誘われたところから始まったんですけど。二人ともヒップホップが好きで、この前(2016年4~5月)も日本に来ていた、ビートナッツというジャズのネタを使ってトラックを作るグループが特に好きで。“これを生でやったらめっちゃかっこよくない?”というところから始まったんですよ。

――自己流ですか。当時の生ヒップホップバンドといえば、ザ・ルーツとかいましたけど。

Shyoudog:クソ自己流で。だからザ・ルーツとかよりもビートナッツ、ウータン・クランとか、そういうところからインスパイアされてます。でもあの感じには、どうしてもならないんですよ。やりたいイメージがなかなか形にならないまま、今になって頭の中で鳴ってるものが、ようやく音にできてるかな?という段階まで来れたかなと思ってるんですけど。

――BASIさんは、最初に何をやりたかった?

BASI:僕はずっとラップですね。それで19歳ぐらいの時に、シュウ(Shyoudog)とサッコンが二人でやってる音を聴かせてもらって、“こんなんやってるんやけど。BASIもやりぃや”みたいな感じで。ただ、サッコンは嫌だったみたい。MCは一人でいいって、シュウに言ってたみたいなんですよ。だから最初にスタジオに行って、サッコンに“はじめまして”って言って、俺のリリックを聞かせた時に、俺は“やったった”って、爽快感たっぷりやったんですけど。その帰りにサッコンに“俺も韻シストやな”って聞いたら、“いや、わからんわ”って言われたんですよ。そこから実は、俺が韻シストのメンバーになれたのか、聞いてないんですよ。

――あははは。それは重大な問題だ(笑)。

Shyoudog:まだわからへん(笑)。

BASI:これ、ほんまの話ですよ! “いや、おまえは無しや”って言われるのがめっちゃ怖くて、1週間たって、1か月たって、“いつ聞こうかな”と思ってるうちに今になった。

――シュウさん大丈夫ですか。BASIさんはメンバーですか(笑)。

Shyoudog:大丈夫です。僕が連れてきてるんで(笑)。

BASI:サッコンと二人で遊んだり、飲みに行ったりしたことがないんですよ。スタジオとライブでしか会わないんで、これは今後ヤバイかもしれないと思って、出会ってから2年ぐらいたった時に、勇気を振り絞って電話したことあるんですよ。“今日スタジオ終わったら、二人で腹割って話したいから、マンツーマンで飲みに行こ”って。ほならサッコンも“おう、わかった”って。で、練習が終わって“ほなサッコン、行こか”って言ったら、“いや、やっぱやめとくわ”って言われたんですよ。それ以来、一度も誘ってないんですよ。

――ネタみたいな話(笑)。

BASI:これもほんまの話ですよ! 俺、けっこう傷ついたんですよ。なんで行けへんの?って、理由がわからへん。でもそれ以上聞かれへんし、もうわかったと。サッコンはこういう奴やと思って、今まで来てますね。不思議な人ですよ。

――じゃあリリックについても、ぜんぜん話さない?

Shyoudog:そこは話すよな。

BASI:うん。めっちゃ細かいところを、すごく聞きに来ますね。音楽に関しては妥協がない。僕がはしょったりしたら、“え?”っていう顔をしますし。そこで“まあええやん。ノリやし”とか言うてしまうと、“それはどういうこと?”とか言ってくるんで。ラップに関してはものすごく厳しいです。

――面白いですね。この関係性。

BASI:だから、音楽だけなんでしょうね。音楽するために集まったから、それ以外の普段のこととか、興味が湧かないんじゃないですか。でも、MC間は特別かもしれない。


――面白いんで、ほかのメンバーにもひとことください。ギターのTAKUさんは?

Shyoudog:TAKUはもともと俺らのお客さんで、ライブにしょっちゅう来てくれてたんですけど。今は、僕の人生のお手本です。一番しっかりしてるよな?

BASI:うん。

Shyoudog:後輩ですけど、怒られることもありますし。“シュウくん、そんなんじゃあきませんよ”と。僕はお酒が好きで、飲むと演奏が全然あかんようになって、それをよく怒られてました。反省して、今は飲まなくなったので、“シュウくん、成長しましたね”と言ってもらえてます。

――頼もしい。バンドのお母さんみたいな。

Shyoudog:竹田一彦さんという、日本のジャズギタリストのレジェンドがいるんですけど、TAKUはその人に教わっていたので。僕はTAKUにいろんなことを教えてもらって、僕の音楽の先生です。譜面が読めるようになったし、理論もわかるようになったのは、TAKUがむっちゃでかいです。

――ドラムのTAROW-ONEさんは?

Shyoudog:TAROW-ONEは、TAKUの音楽学校の先輩なんですけど、むっちゃヤバいドラマーがおるということで、前から知っていて。その頃ちょうど、嵐の櫻井翔くんの曲を韻シストでやってほしいというオファーが来た時(2008年『Dream“A”live』初回盤収録の「Hip Pop Boogie」)に、韻シストは曲を作るのがめっちゃ遅いから、レコーディングが1日で終わらへんと思って、僕とTAKUがCOUNT FORCEという別名義を作って、TAROW-ONEに手伝ってもらったのがきっかけです。彼はほかにもいろいろやってたから、入ってもらうのは難しいと思ってたんですけど、“韻シストやったらええよ”って感じで、メンバーになってくれました。キャラクター的には、常に酔っぱらってるんちゃうかな?と(笑)。ライブ中に酔っぱらって寝たことがあるんですよ。RizeのKenKenと一緒のライブで、ドラムが聴こえてこないと思って、パッと見たら寝てる(笑)。KenKenが“タロウちゃん起きて~”って言ってたのが、めっちゃおもろかった。僕らの中ではそんなキャラとして認識してるんですけど。

――いいバランス(笑)。5人のキャラがすごく立ってる。

Shyoudog:3人は専門学校に教えに行っているし、韻シストBANDとしてもやっているので。仕事もライブもずっと一緒におる感じですね。

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