【インタビュー後編】スコーピオン・チャイルド「予期してないから“おお!”とびっくりする、アレだよ」

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1970年代ロックのルーツを強くもつ、テキサス州オースティンのハード・ロック・バンド、スコーピオン・チャイルドの2ndアルバム『アシッド・ルーレット』が完成した。前編では、バンド自身について語ってくれたヴォカールのアーリン・ジョナサン・ブラックが、後編ではニューアルバムのテーマやコンセプトについて語ってくれた。

◆スコーピオン・チャイルド画像




――『アシッド・ルーレット』と題されたこの新作はストーリー・アルバムであり、出所した元囚人が耐え難い現実に直面した結果、失意と絶望に苛まれて旅に出るというのがその内容だそうですね。

アーリン・ジョナサン・ブラック:実際の旅ではなく、心の中で放浪の旅に出るんだ。

――そして1年間を通じての、元囚人の感情の推移や心理の描写が各曲にてなされているのだとか。

アーリン・ジョナサン・ブラック:君はそう解釈したの?(笑)

――新作の資料にそう書かれていましたが…。

アーリン・ジョナサン・ブラック:そうか。インタビューを受けるたびに、みんながどのような解釈をしてくれているのかを聞きながら、俺は新しい発見をしている。「なるほど、そういう見方もあるな」とか「本当だ、政治的な内容という解釈もできるな」などと思ったりする。だから、色々な人と話して色々な解釈の仕方に触れるのは、俺にとって凄くエキサイティングなことだ。俺は夢の中で見たことや実際に経験していた色々な状況や感情を、この音楽に乗せた。それがどんな内容かと言うと、ある男、いや女でもどちらの性でもいいんだが、とにかくその人が誰かを深く愛していて、その人と家族を持っている。とにかく、長い付き合いなんだけど、そのパートナーのどちらかが環境の変化を欲するようになり、それは時として辛いことであり、時として互いに必要なことでもあったりする。そしてこのケースに関して言えば、一方はもう一方を深く愛しているけれど、もう一方は別の人物と結ばれたいと考えている。そしてその人物は富と権力を握っている。この世で愛がどう打ち砕かれていくのか。当事者は理解し難いと思うことだけど、これはよく起こることだ。

――それでは音楽面について。レッド・ツェッペリン・タイプのグルーヴで勢いよく弾む「She Sings, I Kill」でアルバムは幕を開けます。あなたの歌声は若い頃のロバート・プラントを思わせ、演奏陣のパフォーマンスも重厚かつ生き生きとしたオーガニックさを感じさせます。新生スコーピオン・チャイルドを印象づけるにはうってつけの曲ですね。

アーリン・ジョナサン・ブラック:ああ、そうだな。これは一番古い曲で、3つの異なるラインナップで書いていたんだけど、やっと今になって完成できた。実際には前のアルバムの時にも録音してあったけど、新しい息が吹き込まれ、今ではまるで違う曲として完成した。そして、頭に持ってきて凄く良かったと思っている。

――「Reaper’s Danse」は、前作収録の「Polygon Of Eyes」と同じくユーライア・ヒープやルシファーズ・フレンドを想起させるリフとシャッフル・ビートがリードする曲です。やはりこういうタイプの曲にはオルガンが効果的ですね。それを強く実感しているのではありませんか?

アーリン・ジョナサン・ブラック:おお、ユーライア・ヒープ、まさに(笑)!ユーライア・ヒープは素晴らしいバンドだし、今でも現役でプレイしている。俺の大好きなバンドだ。

――新作『アシッド・ルーレット』の収録曲は今の編成になってから書いたのでしょうか?


アーリン・ジョナサン・ブラック:ああ、全曲ではないが、何曲かは今の編成になってから書いた。特にタイトル・トラックの「Acid Roulette」はAJが持ってきたものであり、俺達に新たな境地を開いてくれた。

――新境地ですか?

アーリン・ジョナサン・ブラック:ああ、「俺達にはこんなこともできるんだぜ」と言う感じだ(笑)。将来こういうものもやれる、やろうと思わせてくれた。俺達は色々なタイプの音楽が好きで、カンやフラワー・トラヴェリン・バンドなども聴くし、そういった幅広い影響は俺達の音楽の中にも感じ取れると思う。言うまでもなく、曲作りしている最中は「さあこれからあのバンドが書くような曲を書こう」などと思いながら取り組むわけではない。5ピース・ロック・バンドでも、バラエティに富んだ楽器が揃っている今、音楽的に彼らのような取り組み方をすることは可能だ。次のアルバムではパーカッションを足すこともシタールを足すことも可能だ。実際、何ができるかはやってみないとわからない、やってみてのお楽しみってところだ。この編成になってからは、色々な可能性が広がったんで、やってみるまでは何ができ上がるか判らない、そんな感じなんだ。

――最後の曲「Addictions」が4分ほどで終わると、しばらく海岸に波が打ち寄せる音や風が渦巻く音が流れ続け、そのまたしばらく後、唐突な感じで女性の悲鳴が聞こえるという構成で幕が下ろされます。

アーリン・ジョナサン・ブラック:そのとおり。

――歌詞を読めば、物語の大まかなところは掴めるのでしょうか? 物語がポジティヴに終わるのか謎めいた感じで終わるのか、はたまた最後に物語の秘密が暗示されているのか、ちょっと判断できないのですが。

アーリン・ジョナサン・ブラック:ホラー映画のことを思い起こして欲しい。今ずっと説明してきたこのアルバムの物語を念頭に入れながら、これから説明することを想像して欲しいんだけど…。

――はい。

アーリン・ジョナサン・ブラック:ホラー映画の最後に、殺人者は退治され、みんなが燃え盛る炎の中から救出され、太陽が照って総てが幸せな空気に包まれエンドロールが流れ始めた、その次の瞬間、殺人者がいきなりまたワッと現われる…そういうのってよくあるだろ(笑)?

――わかります(笑)。

アーリン・ジョナサン・ブラック:あれだよ、あれ(笑)。観ている側がそんなこと予期していなかったもんだから、「おおお!」とびっくりする、そんな場面だ(笑)。

――ラジオ番組にゲストとして呼ばれたとして、先方から3曲かけてくれとオファーされた場合、あなたはどの曲を選びますか?

アーリン・ジョナサン・ブラック:その時々で気が変わるから、3曲だけ迷わず選ぶのは凄く難しいことだが、まずは「Reaper’s Danse」。俺達のこのセカンド・アルバムを紹介するのに非常に相応しいナンバーだ。実際これがファースト・シングルになる。あ、これはまだ正式発表はされていないが、まあいいや。君には今日教えておこう(笑)。そしてその理由だが、ファースト・アルバムのファースト・シングルは「Polygon Of Eyes」だったから、それに最も近いタイプの曲がこれだし、今の時代の人達は昔と違って注目する対象がどんどん移り変わっていくんで、(過去のものと)何か同じようなものを出さなければならない。親しみを感じるような、例えば「Polygon Of Eyes」に似たタイプのもの、この曲を持ってくれば、みんな「ああ、これってクールだぜ!前回のものの延長にある曲だ」と親しみを持ってもらえる。そういう曲の方が良いのさ。それから「My Woman In Black」。あのリリック・ビデオを作ったが、本当はシングルにできたら最高だし、シングルにしたい曲は沢山あるが、それだけの予算がないときてね。シングルは大多数の意見ではどうにもならない、ビジネスが大きく絡んでいることだから。残念ながらマネー・ゲームなんだよ。最悪な話だけど、これが現実なのさ。で、とにかく、これはもうリリック・ビデオは作ったんで、あれをみんなに観てもらえばいいかと思った。別にシングルにしなくても、みんなに知ってもらえると思う。そして3曲目は「Acid Roulette」、もしくは「Survives」かな。まさにラジオで掛けたいタイプのナンバーだよ。

文・奥野高久/BURRN!
Photo by Rodrigo Fredes


【メンバー】
アーリン・ジョナサン・ブラック(ヴォーカル)
クリストファー・ジェイ・カワート(ギター)
ジョン“チャーン”ライス(ドラムス)
アレック・カバレロ・パドロン(ベース)
AJ ヴィンセント(キーボード)


スコーピオン・チャイルド『アシッド・ルーレット』

2016年6月10日発売
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
通販限定CD+Tシャツ ¥5,000+税
CD ¥2,300+税
1.シー・シングス、アイ・キル
2.リーパーズ・ダンス
3.マイ・ウーマン・イン・ブラック
4.アシッド・ルーレット
5.ウィンター・サイド・オブ・ディレンジド
6.セアンス
7.トワイライト・コーヴェン
8.サヴァイヴス
9.ブラインド・マンズ・シャイン
10.ムーン・テンション
11.タワー・グローヴ
12.アイ・マイト・ビー・ユア・マン
13.アディクションズ

◆スコーピオン・チャイルド『アシッド・ルーレット』オフィシャルページ
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