コンピに見るフジロックマジック【検証】フジロックが20年愛され続ける理由 ~レコード会社編~

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6月29日に、ついにフジロック・コンピ『FUJI ROCK FESTIVAL 20 TH ANNIVERSARY COLLECTION』が発売となった。フジロック20周年を記念して登場したコンピレーション・アルバムだが、20年もの歴史を重ねながらこれまで一度も実現しなかった、ありそうでなかったコンピ作品である。

数々の伝説を生み、延べ数百万人の音楽好きに強烈な思い出とインパクトを与え続けてきたフジロックだけに、たった2枚のアルバムでフジロックを象徴するのは土台無理な話なのだけど、だからこそ収録楽曲やラインアップなどはどのようにしてセレクトされ、誰の判断で決定が下ったのか、非常に興味深くもある。

20年の歴史を重ね、今こうして誕生したフジロック・コンピ2作品は、テーマを前期10年と後期10年に分けそれぞれユニバーサル ミュージックとワーナーミュージックからリリースされる。BARKSでは各レーベルの制作担当者を直撃、2人に制作秘話を訊いてみた。

  ◆  ◆  ◆

■ 普段はコンピの参加NGなのに「フジロックならOK」のアーティストが非常に多かった

──おふたりは、フジロックの経験は…

関口裕之(ワーナーミュージック・インターナショナル本部):数えたら8回でした。20年前は高校1年生だったので、雑誌で読んでいたくらいで実際には行けなかったんですが、フジロックはとにかく超楽しいですね。最高です。

──竹野さんは?

竹野竜治(ユニバーサル ミュージックユニバーサル インターナショナル):僕は今年43歳になるんですけど、行ってないのが3回くらい。最初の3年間は仕事と関係なく普通に行ってました。

──さすがディープですね(笑)。これがレコード会社に務める人の“普通”なのでしょうか。

竹野:洋楽の仕事に携わっている人はフジロックに行きますよね。担当アーティストが来たら行かなきゃいけないですし。

──仕事のフリして、楽しんじゃっている気もしますが(笑)。

竹野:ま…24時間のうち仕事じゃない時間もありますからね(笑)。そこはやっぱりタイムテーブルとの葛藤が。観られる時間があったら少しでも観たいとか、その場の空気を感じたいみたいな。

関口:これだけのアーティストが一堂に会すことってないですから。僕は毎年発表されると真っ先に携帯のカレンダーでキープするんです。今年はこの週だ、と。

──フジロッカーは、フジロックを中心に年間予定を組みますからね。

関口:そこの有給を取るだけのために、公務員になった友達がいますよ。それ以降は皆勤で毎年自転車で参加しています。

──本末転倒人生、ステキです(笑)。やはりそれだけフジロックって特別なものなんでしょうか。

竹野:特別なもの…うーん、そうですね。海外ではウッドストックに始まり色んなフェスがありますけど、こういうものが日本でもあの時代に始まったという意味では特別かもしれないです。当時、凄く衝撃的でしたから。

関口:これだけすごい特別なことが当たり前のように毎年あることに、麻痺しちゃっているかもしれないですけど。

──今思う、フジロックの魅力って何ですか?

関口:まず、100%身をゆだねても絶対楽しい。それは何度か行くとわかってきます。初めて行った時は分からなくて「なんでこんな暑いんだろ」「なんでめっちゃ雨降るの」って思うかもですけど、それを楽しみ始めるポイントがあると思うんです。20年を経て、フジロックにはいろんな楽しみ方があることに気づいてきました。逆に言うと、一発目の新鮮な感じは強烈に覚えてますけどね。これからあの感覚を味わう人は、逆にいいなあって思います(笑)。

──「まともにステージは見ていないけど、ゆったりとお酒を飲んで楽しい」みたいな参加もアリですよね。

竹野:それでもいいんです。一方真剣に観るときもあって、その自由な感じがすごくいい。そこは非日常ですから、ただボケーっとしてても凄く気分がいいというか。

──そんなフジロックのコンピですが、そもそも誰の発案なんですか?

▲『FUJI ROCK FESTIVAL 20TH ANNIVERSARY COLLECTION (1997-2006)』


竹野:自然発生です。SMASH(フジロック主催会社)さんと弊社のスタッフが盛り上がって、もう20年だねみたいな話になってそこから。色んなレコード会社さんと話を進めて、最終的に前半10年を弊社、後半10年をワーナーさんで作ることになりました。ソニーさんには音源のライセンスでむちゃくちゃ助けていただきました。

──制作にあたっては、アーティスト/楽曲のセレクトの難しさって並じゃなかったでしょう?

竹野:難しかったんですけど、基本的にみんなの記憶に残っているアーティストをたくさん入れようと。そうなると必然的に各ステージのヘッドライナーに近い人が基準になってくる。あとは、あれはすごかったという伝説を生んだ人は入れようという話もあり、それを共有しながら作った感じですね。

──フジロックを彩ったみんなの総意のようなもの、ですね。

竹野:そうですね。ただ、実際に制作をしたのは僕らふたりなので、僕らの意図っていうのがけっこう入っている(笑)。これはやっぱり入れとかなきゃな、みたいな。選曲は楽しかったですよ。CDって収録時間に限界があるので、どれ削りゃいいんだろ、みたいな。

──許諾も大変でしょう?

竹野:コンピには絶対参加しないアーティストも多いので諦めざるを得ないところもあるんですが、フジロックに関してはアーティストが持っている愛情の強さをすごく感じました。普段はNGの人が「フジロックならOK」してくれた人が非常に多かった。フジロックってすごいなって改めて思いました。

──出演アーティスト自身がフジロックを楽しんでいますよね。

▲『FUJI ROCK FESTIVAL 20TH ANNIVERSARY COLLECTION (2007-2016)』


関口:出演者とオーディエンスとの分け隔てがない感じがします。飯食ったりしていてもみんな優しく見守っていてくれているんですよね。パティ・スミスが普通に歩いていたりとか。ロン・セクスミスを担当していた時は、彼が他のアーティストのステージを観たいと言ったので一緒に山を歩きましたよ。アーティストもお客さんみたいに楽しんでるんじゃないかなあ。

──種のフジロックマジックですね。

関口:楽しくなるんですよね。雨が降ってきたり夜寒かったりもするんだけど、でもそれがエンターテインメントな瞬間みたいなの、ないすか?

竹野:それすら楽しむみたいな?

関口:ご飯食べている時、すごい雨が降ってきたのにもかかわらずそのまま食べてるんです。この人たち最高だなと思って。

──普段の生活ではあり得ない。

関口:吹っ切れる場所なのかもしれないです。そういう魔法がありますよね。

竹野:あります。僕も基本的にはすっごいインドア派で、キャンプに行ったりとか絶対ないんですけど(苦笑)、フジロックはやっぱ行きたい。その日のためだけにレインコートのちょっといいやつを買ったり、普段絶対使わないし、レインブーツなんて全く使わないんですけど、ちゃんと持っていったりする(笑)。

──フジロックが放つ魅力ですね。

竹野:「毎年どんなラインナップでも必ず行く」という人を増やしたいというのがフジロックの理念にあると思うんですけど、僕は逆に、ちゃんと毎年よく考えてこれだけのラインナップを出し続けてきたなと思いますよ。

関口:やっぱり音楽ありきですよね。もちろん久しぶりに会った人とゆっくり話をするとか、のんびりするとかもあるんですけど、素晴らしいラインナップを素晴らしい場所でやっていることが徹底されている。この20年間の洋楽の本流が、ここで提示されていることがコンピを作って分かりました。普段都会で働いていて緑を見る機会もなかなかない人が、そうじゃない所に行って音楽を楽しめるのはとても大きなことですよ。

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