【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.48「グラスト、祭りの後に残るもの」

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海外メディアの報じるニュースのトップに「Glastonbury Festival」の文字を発見。ちょうどColdplayのオフィシャル・インスタグラムに掲載されたステージ上のメンバーの背中越しに撮られた公演終了直後と思しき写真を見て、きっと今年のグラストも大盛況だったに違いないと遠いイギリスはサマセットに想いを馳せていたところだったので、どれどれと記事に目を通してみた。


しかし、ニュースをいざ読んでみると、タイトルに踊る文字は「ゴミ袋」「泥」「大量に残された椅子」。どこにもColdplayの文字はない…。

その記事によると、会場で音楽を聴き、楽しんだ13万5千人の来場者が会場に残していったゴミは1000エーカーもの広大な敷地に散らばっており、現在1800人の作業員が投入されて清掃作業中。そのゴミのうち、57トンはリユース可能なアイテムで、1022トンはリサイクルできるもの。そして、50万個分のゴミ袋が回収されるだろうと見込んでいるとのことだ。

フェスティバル主催者であるマイケル・イーヴィス氏は「今年のグラストが過去最高のドロドロ具合だ」と語ったとあった。このフレーズはもう何度も聞いているが、報道で見る限りでも今年は相当酷そうだ。

ぬかるんでグチャグチャ、楽しみすぎて疲れちゃったし、片づけるのは面倒くさいし、みんなが置いていくのなら、私も置いていっちゃえ。そんなところだろうか。ただ、13万5千人中、何人がそういった行動をするとゴミ袋50万個分ものゴミが排出されてしまうのかは見当がつかない。

筆者がグラストに参戦した年も大雨に遭い、史上最悪のコンディションと報じられた。フェスそのものは最高だった反面、晴天だったらすこぶる快適なフェス会場であるはずの牧場の、柔らかな土と干し草に雨がミックスされ、ぬかるみに足を取られながらの5日間に及ぶキャンプ生活は正直しんどかった。そのせいで見逃したステージも多かったし、水道で水を汲むのに2時間、シャトルバスに乗るのに2時間といった具合でどこでも並んで待つことを要されたのもキツかった。





でも、最後の力を振り絞って、ほぼ使い物にならなくなったテントを片づけてきた。それは自分にとって当たり前のことだったからだ。

そのように思い、行動できたのは、日本のクリーンなフェスに慣れていたからだと思う。どのフェス、どのイベントに行ってもゴミ問題で不快になることはないし、ゴミで溢れてどうしようもないといったニュースを日本国内で耳にしたことは一度もない。

現在、BARKS編集部の皆さんと共に「フジロックが20年愛される理由」(https://www.barks.jp/keywords/fujirock2016.html)を検証するため、フジロックを支える方々に話を訊いてまわっているのだが、ゴミ問題や環境保全の話になると、開催地・苗場の皆さんしかり、タワーレコードの坂本さんしかり、皆が口を揃えてフジロックのオーディエンスの持つ美意識とモラルの高さを褒め称える。

海外のスポーツイベントなどでゴミを拾う日本人の行為が話題になったこともあるが、我々日本に暮らす者たちは基本的に‘キレイ好き'であり、人に迷惑をかけることを好まない。そして、大切なものを大切に扱うためにはどうすればいいかを考え、行動に移すことができる。これは世界に誇れる日本の音楽カルチャーのひとつの要素だろう。

誤解して欲しくないのは、グラストは非常に魅力的な音楽フェスであり、私はあそこへまた必ず行くつもりでいる。しかし、終演翌日の見渡す限りゴミの山という光景には唖然として、言葉を失ったのも事実。

今日の報道から見ても、その辺はまったく変わっていないどころか、むしろ後退しているようで非常に残念に思う。日本のオーディエンスの誇れるロック・スピリッツがいつの日か世界の音楽フェスにも広がることを願ってやまない。

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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