【インタビュー】アラン・パーソンズ「プログレッシヴ・ロックとは?」

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アラン・パーソンズ・シンフォニック・プロジェクト名義でアーティスト・デビュー40周年を記念する映像作品/CD『ライヴ・イン・コロンビア』を発表したアラン・パーソンズへ、インタビューを試みた。ここ前編では南米コロンビアのメデジンで行われたシンフォニック・ライヴの模様と、コンセプト・アルバムへのこだわりについて、後編では彼のプログレッシヴ・ロックとの交流、そしてエンジニア時代のエピソードを語ってもらった。

◆アラン・パーソンズ画像




──アラン・パーソンズ・プロジェクトの音楽はしばしば“プログレッシヴ・ロック”と呼ばれましたが、その呼称は正しかったでしょうか?

アラン・パーソンズ:私たちはおそらく“プログレッシヴ・ポップ”バンドだろうね(笑)。私自身、ピンク・フロイドやザ・ビートルズの最も先進的な時期に関わっていたことで、プログレッシヴな精神性があった。だからファースト『怪奇と幻想の物語~エドガー・アラン・ポーの世界』(1976)や『アイ・ロボット』(1977)の頃はかなりプログレッシヴだったと思うけど、徐々に離れていき、1980年代にはよりポップ・バンドに接近していたと思う。それは部分的には『アリスタ・レコーズ』のクライヴ・デイヴィスからの要望でもあったけど、私たちのコンポーザーとしての挑戦でもあった。実はコンセプト作品は何について書けばいいか事前にわかっているから、ソングライティングの作業は比較的簡単なんだ。何もないところから歌詞を書く方が難しいんだよ。

──あなたのイメージする“プログレッシヴ・ロック”とはどんなものですか?

アラン・パーソンズ:変拍子だったり奇妙なコード進行だったり…イエスやジェスロ・タル、ピンク・フロイドやキング・クリムゾンのようなバンドかな。特にジェスロ・タルは4分の5拍子とか4分の7拍子拍子とか、“プログレッシヴのキング”だった。私たちの「堅牢の御剣」にも変拍子があって、プログレッシヴなタイプの曲だった。ジェネシスはイギリスの伝統に則っている部分があって、プログレッシヴとは異なった方向性だったかも知れないね。

──彼らプログレッシヴ・ミュージシャン達と交流はありますか?

アラン・パーソンズ:私はカリフォルニア州サンタバーバラに住んでるけど、イエスのジョン・アンダーソンは30~40マイルところに住んでいて、友達だよ。シンフォニック・プロジェクトの前座をジョンのオーケストラ・バンドが務めてくれたこともあるんだ。あとビリー・シャーウッドが率いている“プログ・コレクティヴ”といプロジェクトに参加したし、1990年代にイエスとツアーしたこともある。ジョンやクリス・スクワイア、アラン・ホワイト、スティーヴ・ハウ…みんな知り合いになったよ。

──スティーヴン・ウィルソンの『レイヴンは歌わない』(2013)をプロデュースしたのは、どんな経験でしたか?

アラン・パーソンズ:スティーヴンは私がかつてやったような、1970年代アプローチのエンジニアリングを求めていたのだと思う。レトロな音作りをね。私はアソシエイト・プロデューサーとクレジットされたけど、彼は才能あふれるミュージシャンであり優れたプロデューサーだし、あまり口出しすることはなかった。どちらかといえばエンジニアとしての役割が大きかったよ。私はスティーヴンに嫉妬しているんだ。彼はジェスロ・タルやキング・クリムゾン、ティアーズ・フォー・フィアーズなどの名盤の5.1chリミックスを任されているからね。私は5.1chサラウンドのファンなんだ。サラウンドで聴くときは部屋の中を歩き回って、いろんな位置から聴くようにしている。ベスト・スポットを決めてじっくり聴くのも良いけど、いろんなポジションから聴くのも楽しいよ。


──あなたはピンク・フロイドの『原子心母』(1970)でエンジニアを務めていますが、そのオーケストレーションはアラン・パーソンズ・プロジェクトに何らかの影響を与えたでしょうか?

アラン・パーソンズ:『原子心母』でロン・ギーシンが書いたブラスが印象的で、私も自分の曲でフレンチ・ホーンを4本、あるいは6本入れたりしてきたよ。あのファンファーレ調のサウンドは、アラン・パーソンズ・プロジェクトで随所で使ってきたし、一種のトレードマークとなっていると思う。『原子心母』のアレンジは難しくて、イントロを何度も何度もやり直したのを記憶しているよ。当時はプロトゥールズもないし、とにかく大変だった。『狂気』(1973)の「マネー」では、イントロのキャッシュ・レジスターのループはハサミで切って長さを合わせたんだ。あのイントロだけで2日間かかったよ(苦笑)。

──ザ・ビートルズの『アビー・ロード』(1969)に収録された「サン・キング」のギターがフリートウッド・マックの「アルバトロス」からインスパイアされたとジョージ・ハリスンが後に語っていたそうですが、あなたはそのことを知っていましたか?

アラン・パーソンズ:えっ、今言われるまで知らなかったよ!正直ちょっと驚いている。「アルバトロス」には夢見がちなスライド・ギターはないよね?どちらの曲も好きだけど、関連があるとは知らなかったし、影響を受けたとは思わないな…。

──最近、元ザ・ビートルズやピンク・フロイドのメンバーと会う機会はありましたか?

アラン・パーソンズ:ポール(・マッカートニー)は以前近所に住んでいたんだ。まだリンダが生きていた頃は付き合いがあったけど、私がアメリカに引っ越したんで会う機会が減ってしまった。ロジャー(・ウォーターズ)やデヴィッド(・ギルモア)ともしばらく会っていないけど、ニック(・メイスン)とは去年12月、アビー・ロード・スタジオでレクチャーをやったときに顔を合わせたよ。みんな歳を取ると家族や仕事でなかなか会えなくなるものだ。でも彼らは友達だし、いつか昔話でもしたいね。

取材・文:山崎智之
Photo by Simon Lowery


アラン・パーソンズ・シンフォニック・プロジェクト『ライヴ・イン・コロンビア』

2016年7月6日発売
【初回限定盤Blu-ray+2枚組CD】¥7,000+税
【初回限定盤DVD+2枚組CD】¥6,000+税
【通常盤Blu-ray】¥5,200+税
【通常盤DVD】¥4,200+税
【2枚組CD】 ¥2,800+税
1.アイ・ロボット
2.沈黙
3.ドント・アンサー・ミー
4.ブレイクダウン
5.大鴉
6.時は川の流れに
7.君は他人
8.サグラダ・ファミリア
9.運命の切り札(パート1)
10.神の使者
11.堅牢の御剣
12.失われゆく神々の国
13.運命の切り札(パート2)
14.万物流転
15.ルシフェラマー
16.静寂と私
17.プライム・タイム
18.狼星
19.アイ・イン・ザ・スカイ
20.オールド・アンド・ワイズ
21.ゲームス・ピープル・プレイ

【メンバー】
アラン・パーソンズ(ギター/キーボード/ヴォーカル)
P.J.オルソン(リード・ヴォーカル)
アラステア・グリーン(ギター/ヴォーカル)
ガイ・エレズ(ベース/ヴォーカル)
ダニー・トンプソン(ドラムス/ヴォーカル)
トム・ブルックス(キーボード/ヴォーカル)
トッド・クーパー(サックス/ギター/パーカッション/ヴォーカル)

◆アラン・パーソンズ・シンフォニック・プロジェクト『ライヴ・イン・コロンビア』オフィシャルページ
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