岩盤はオフィシャル・フーリガン【検証】フジロックが20年愛され続ける理由 ~岩盤/GAN-BAN編~

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■富士祭電子瓦版にも、宿命的にバックラッシュはあります
■「フジロック、芸能人を持ち出してきたよ。オワッタな」と

──豊間根さんが1999年に苗場に行っていなかったら…をつい想像してしまいますが。

豊間根:32歳で理想主義に目覚めたんです(笑)。岩盤を始めた頃の僕を知っている人ならわかると思うんですが、ほとんどチンピラみたいな男でしたから。それも内向的なチンピラ(笑)。

──ははは、怖くない(笑)。

豊間根:そうそう(笑)、派手好きなオタクとか(笑)。でもフジロックって、何かきっかけがないと入りにくい場所だって言われてますよね。

──昨年スタートした富士祭電子瓦版も、そのきっかけを作っているメディアですね。

豊間根:ありがとうございます。僕は10年前、SMASHから話を受けてInter FMでフジロックのオフィシャル・ラジオ番組を3年半やったんです。フジロック・オフィシャルショップ岩盤の代表として出演していたので、フジロックを「評価しない」立場で、そこでも「フジロック最高!」と言い続けるのが僕のミッションでした。ただ、毎週毎週生放送で、どうしてもフジロックを代表して話さなければいけないという立場が、どんどん苦痛になって行って。番組が終わるって聞いた時は、正直心底ホッとしました。その時に、岩盤という立場はメディアとは馴染まないと痛感したんです。

──オフィシャルだからこその苦しみですね。

豊間根:あれから10年経って、あの当時とは違う形で、そしてやるからには今まで誰もやっていなかったメディアじゃなきゃ意味がないと考えました。岩盤が発信するのではなく、自身のファンを持ち発進力がある有名人に、独自のフジロックを語ってもらうメディアができれば、これまで誰もリーチできなかったところにフジロックを届けられると。

──沢尻エリカさんのインタビューをはじめ、俳優、芸人の方々が、“いちファン”としてフジロックを語っているのが新鮮です。

豊間根:ミュージシャンは出演者側として瓦版に出ていただいていますが、他の方々はフジロックのお客さんです。お客さんと同じ目線で語る有名人の言葉が新鮮に映ったんだと思います。ただ、コラボ・グッズと同じで、宿命的にバックラッシュはあります。「フジロック、芸能人を持ち出してきたよ。オワッタな」と。

──フジロック内部にも起こったんじゃないですか?

豊間根:多分あったと思います。今まで守ってきたフジロック・ブランドを崩されるんじゃないかって。でも、あれだけの人たちが瓦版に登場してくれたこと自体、当たり前ですけど瓦版がすごいわけじゃなく、岩盤がすごいわけでもなく、他でもない「フジロックがすごいんだ」っていうことなんですね。改めてフジロック・ブランドの強さを実感しているんです。彼らが嬉々として語ってくれて、かつ読者に強烈な印象を与えるのは、フジロックだからなんですよ。だから瓦版では、これからもっといろんな人を通じて、「フジロック最高!」ということを伝えていきたいと思っています。

──今年は日高さんのインタビューをされていますね。

豊間根:本当に慎重に進めました。瓦版は、今までの他のメディアとは違うことをするために始めたわけですから。「富士祭電子瓦版」というタイトルも日高さんに付けてもらって最も近くにいるのに、去年はやってないですからね。20年という括りがなければやらなかったかもしれないです。インタビューの中でも残してありますが、おでん屋で口説いたんです。こういうインタビューにしたい、ってある程度説明して。フジロックが20回目で岩盤が丸15年で、去年からもう渋谷パルコが閉館することはもちろん知らされていたわけですから、とにかく今年は僕や岩盤にとって大きな区切りの年になる。そこで、僕を育てた「ロック」と、同じく僕を育てた──フジロックとは全く関係ないですが──「プロレス」が日高さんインタビューの裏テーマでした。今では僕の中の「ロック」の中心は日高さんなので、日高さんにプロレスを仕掛ける気持ちでやりました。インタビューは最初から時間無制限3本勝負だと想定していて。1本目のテーマは「フジロックというアイデアが生まれるまで」。僕の中の裏テーマは「どうしてアントニオ猪木は異種格闘技戦を始めなければならなかったのか?」。2本目は「97年について」で、裏テーマは「猪木vsアリ戦の真実」。3本目は「苗場」で、裏テーマは「そして王道へ」でした。3本目だけ急に猪木から馬場になりますが(笑)。公開時に、前・中・後編として、それぞれタイトルをつけたのは『仁義なき戦い』が頭にあったからです。「広島死闘編」とか「代理戦争」、「頂上決戦」とか。

──なるほど。

豊間根:個人的なことですけど、僕、日高さんの大ファンなんです。僕には仕事上のボスって日高さんしかいないんですが、尊敬とはまた違う。言わばファン目線でインタビューができました。これだけ長く付きあわせていただいて、分かっていたことですが、やっぱり日高さんはプロレスが上手い(笑)。

──日高さんの人となりがとても伝わってきました。

豊間根:あの話の中で、80年代のレッチリの登場を、「いつの時代もパンクが必要なんだよ」と、日高さんは表現していますが、あれはSMASHのことであり日高さん自身のことですよね。

──だからこそ、こうして時代を切り拓いてきたわけですよね。

豊間根:完結編では、今年のフジロックを語ってもらっています。前・中・後編と合わせて是非読んでいただきたいです。

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何事にも「役割分担」は必要だが、岩盤が選んだ「フジロックのフーリガン」は斬新だ。フジロックのイメージが定着したことで「敷居が高い」とも言われるようになったその敷居を、誰よりも下げようと働きかけてきたのは岩盤かもしれない。アパレル/ディズニー/芸能人…それまで誰も押せなかった、押そうともしなかったボタンを鋭い嗅覚により次々と押してきた岩盤は、深いフジロック愛の上に成り立つフーリガンスピリットによるものだった。

人生観を変えてしまうほど強烈な体験を与えてくれるフジロックに対し、豊間根氏は、「体験しないことによって得られなかったものの可能性を考えると、できるだけ早いうちに体験しておいたほうがいい」とフジロック参戦を心から願っていた。それは生きる面白さと歓びを若者に伝えたいと願う、一人の男の純粋なメッセージであった。

取材・文=早乙女“ドラミ”ゆうこ、BARKS編集部

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<FUJI ROCK FESTIVAL'16>

2016年7月22日(金)23日(土)24日(日)
@新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※各券種、受付などの詳細はオフィシャルサイトへ http://www.fujirockfestival.co

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