【連載】逆襲のアキラ「第7戦 女帝が恋する小説家!少女達に刮目せよ!桜庭一樹様!出撃!」

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皆様コンニチハ、2,5次元ロックアーティスト逢瀬アキラです。気がつけばもう夏。灼熱の夏。冷凍庫の中はアイスでパンパン。お外にはもう本当に極力出ていません日差し怖い。季節が過ぎるのは本当に早い。春夏秋冬、目紛しく季節を越える度に「この季節は何が残せたんだろう」と自問自答しています。4月では、憧れの声優さんに提供した楽曲が長年聞いている大好きなラジオ「ほめられてのびるらじおZ」様のOPに総選挙で1位に選んで頂いたり、初めての仙台ライヴで冠イベントをやらせていただきました。5月はお誕生日に初めてのワンマンイベントを開催して、それから長年憧れていたイベント「マチ★アソビ」様に出演させていただきました。そして6月、なんとドイツのブレーメンで行われたアニメコンベンション「Nippon Con 2016」に出演させていただきました。そうです、とうとうアキラ帝国が海外に進出してしまいました。「変態と言う勇気」を合い言葉に叫びまくっていたアキラ帝国が、、、何と言いますか、感無量でございます。ブレーメンは本当に素敵な街でした。食べ物もお酒も美味しいし、建物は可愛くて街並がとっても綺麗だし、何より会う人みんなが優しくて親切。そして美形。イベントでは日本のアニメが大好きな方ばかりがビックリするぐらい大勢集まっていて、初対面なのに初対面じゃない通じ合う心を感じてアニメやコスプレの話でアツく語り合えました。「アニメ」というものが国境を越えて我々を繋いでいてくれる。その事を実際にこの身で体験して、非常に衝撃で感動。日本のアニメ文化は本当に素晴らしいし、なんだか日本人である事が誇らしく思えました。そして凄く素敵だなと思ったのはアニメコンベンションの主催者様や現地スタッフさん達のアニメに懸ける情熱が猛烈に伝わってきた事。「日本のアニメはこんなに面白いんだよ!」「日本のアニメをもっともっと沢山の人に知ってほしいんだ!」という熱意、信念があるスタッフさんばかりが集まって一生懸命イベントを創り上げていて、アニメへの愛を心から感じました。ライヴがあんなに大成功したのは主催者様やスタッフさん達のおかげです。本当にありがとう。ドイツ、また行きたいな。みんなにまた会いたいな。とても素晴らしい体験をさせてもらいました。このアツい想いをますます真っ赤に燃やしながら、2016年の下半期に繋げていけたらなと強く思います。

さて、話は変わりますが、先日「もし音楽を選択していなかったら将来何になりたかったですか?」という質問を受けました。むむむ、音楽をとったらオタク要素以外何も残らない女帝、選択肢が無さ過ぎます。絵を描くのは好きだけど仕事とは考えられなかったし、お花屋さんになりたかったけれどお花屋さんのアルバイトの面接受かった事無いし、アニメは好きだけど自分が作るとなると考えられないし、、、うーん。しかし夢見るだけならタダ。色々考えましたが勇気を出して「やっぱり小説家ですかねぇ」と少しドヤッみたいな顔で答えてしまいました。

私の母は昔からとても沢山本を読む人で、その影響なのか私も本が大好き。読んで読んで、子供の頃からちょっとした詞や詩や小説みたいなのを沢山書いておりました。読んで書いて読んで書いて、その日常が今の音楽制作にも生きているのだと思います。小説家になりたかったというのもあながち嘘ではなく、音楽の道に進んでいなかったら本当に小説を書き続けていたと思います。実はペンネームも考えてありますえへへ。本を読んだインスピレーションで曲を書く事も多いので私の中で読書は生活の大切な一部。好きな作家さんは沢山沢山いますが、1番最初に名前が出るのは「桜庭一樹さん」です。2008年に直木賞を受賞しその作品が近年映画化という事もあり、名前を耳にした方は多いのではないでしょうか。というか今や大人気作家さんでいらっしゃる桜庭一樹さん。今日はその一樹さんの本をご紹介させて下さいませ。


「桜庭一樹」という男性っぽいお名前ですがそれはもう知的で綺麗な女性の方です。まずこのロマンチックなペンネームが素敵。うっとり。「アキラ」みたいに男っぽいお名前の女性なのでちょっぴり勝手に親近感////(ファン心理)

一樹さんは子供向けの本を長く書いていた事もあって「少女」の心情を書き出すのが本当に上手い。子供なんだけれど大人で、でも大人ではない少女達の繊細過ぎる情緒の描き方がなんともグッとくる。無垢で好奇心旺盛で必死で子供らしい少女は勿論。ストーリーに沿って痛々しく、生々しく、グロテスクな心理描写でガンガン攻めてくるんだけど、純粋さ故のその思いがもうなんとも愛おしいこと!子供の力では抗えない運命の輪の中で、それでも闘おうとする少女達は堪らなく美しく、滑稽なほど真っ直ぐに命を燃やしている。だから読んでいくにつれて登場する女の子がどんどん好きになっていってしまう。

私が思う一樹さんの1番好きな所は、小説の中で登場人物達が生きて生活している土地や部屋やその場の「空気」というものが強烈に伝わってくる所。雪が積もって冷たく澄んだ空気。じっとり湿ったどこか土っぽい部屋の空気。夏の山の暑い中に吹くひんやりとした風の空気。ゆっくり、しかし確実に進む静かな時間の空気。緊張感が纏わり付いたザラっとした空気。まるで自分もその場に居るかの様に錯覚させられてしまう。どの小説の世界にも「空気」というものは感じるのですが、一樹さんの書く「空気」は絶品。1番好き。

この他にも、漢字ではなくワザとひらがな表記にしてみたりする所も大好き。唐突にやってくるあのひらがな表記本当に堪らない。そして痛快で笑える話も多いのだが、後味が悪かったり「え?これでどうなるの?」というもやもやしたラストの話が私は猛烈に好き!本によっては読んでる途中に強烈すぎて(いい意味で)疲れてくる本もあるのだが、そこまで登場人物にも読み手にも攻めてくる一樹さんの鬼気迫る文章が良い。凄く良い。女帝はフランス映画みたいなモヤモヤ報われないラストシーンの話、背徳的なモノがテーマな話、そして家族の話に弱い。めっぽう弱い。一樹さんの小説はこの女帝の大好物が絶妙に混ざり合っているお話が多くて、これからも死ぬまで一樹さんの小説を読み続ける事だと思う。

それでは、一樹さんのオススメ本をご紹介。本当はもう全部読んでみてほしいんだけどね!

「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」

小説を読んだ後、この題名のセンスに脱帽した。どこにでもいる少し不幸な少女山田なぎさと、自分を「人魚」だと語る謎多き転校生の海野藻屑(凄い名前!)との奇妙な友情を描く青春暗黒ミステリー。この小説がまたかなりの話題になった。可愛らしい表紙の萌絵からは想像のできないグロテスクで残酷で酷く落ち込む内容になっていて、当時の私は読みながら大号泣して若干トラウマになるレベルだった。海野藻屑ちゃんが実父から虐待を受け心がボロボロになっていくにも関わらずそれを「愛情表現」と言い父を庇う姿や、なぎさに「ぼくおとうさんのことすごく好きなんだ」「好きって絶望だよね」「…こんな人生ほんとじゃないんだ。きっと全部誰かの嘘なんだ」と言う所なんかはもうなんとも言えない苦しさに襲われた。二人の変化していく友情、そして少女達の心理描写や絶妙な発言の数々に一樹さんのセンスを感じてほしい作品。

「少女七竈と七人の可哀想な大人」

無人島に1冊だけ本を持っていくとしたら?と聞かれたら、私は間違いなくこの1冊を選ぶだろう。ユーモラスな視線や作中の空気感、少女の心理描写の巧みさ、複雑なテーマ、一樹さんの良い所ががぎゅうううっと凝縮されていると胸をはって言えるぐらい、それはそれは大好きな小説なのだ。舞台は北海道の旭川。高校生の七竃は「いんらん」な母から生まれた非常に美しい少女。彼女の美貌に振り向かない者はないほどの類い稀な「かんばせ」を持つ。唯一、心許せるのは幼なじみの少年・雪風のみだが、彼もまた美貌持ち主だった。趣味の鉄道を通じて言葉少なに心を通わせる二人には、決して口には出さない秘密があった、、、。まず表紙の「わたし、川村七竈十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。」という見出し言葉にもう好奇心を掻き立てられてしまう。登場人物みんなのキャラがとても立っていて、各章ごとに語り手が変わっていくのがとても楽しめた。私はこの少女七竈が大好きで大好きで「七竈」という歌を作ってしまったほどだ。(直球過ぎて今頃恥ずかしい!)超絶美人なのに変わった喋り方に鉄道オタク。どこかズレていてふわふわおっとりしているのに心に中では「男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風」と強かに願っているのが本当に可愛い。この小説は私の好きな「空気感」がバシバシ伝わってくる代表作で、初恋の相手、雪風とのなんとも残酷で美しい距離感、空気感が1番の読みどころかもしれない。ツンとした肌寒さ、その中に流れるゆっくりと流れる時間、淡い恋の音、繊細な一瞬一瞬を描ききれる一樹さんが本当に素晴らしすぎる。前に進み未来を切り開く七竈、この七竈と雪風、七竈と母親の変わってゆく関係性、その中で大人へと変わってゆく少女七竈の心情。そこに是非注目して読んで欲しい。私の好きな映画「愛を乞うひと」の様な切なさも感じられグッとくる。

「GOSICK」シリーズ

ライトノベルをよく読まれる方には特にオススメしたいダークでキュートなミステリーシリーズ。20世紀初頭、西欧の小国ソヴュールの名門校、聖マルグリット学園に留学してきた久城一弥は図書館塔最上階の小部屋で奇怪な美少女ヴィクトリカと出会ったー。2011年にアニメ化した一樹さんの大人気シリーズ!ミステリーとしてはライトで読みやすく、探偵ヴィクトリカがもう可愛いのなんのっ!!!!!一弥とヴィクトリカの掛け合いや個性的なキャラクター達が面白くどんどん読めてしまう作品。アニメもオススメ!

「少女には向かない職業」

自分たちを苦しめる「悪い」大人たちを殺す計画を立てる事になった2人の13才の少女の物語。「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人を殺しました」こんな衝撃的な冒頭から始められてはもう読まずにはいられない。この物語は「殺人」という重いテーマにも関わらず、そこまでサイコパスな重々しい所まではあえていっておらず、あくまで「ごく普通の思春期の少女」を描く為に「殺人」というテーマが組み込まれているんだと思う。思春期独特の危うさ、胸を刺す痛さ、切実な叫び、これらの心理描写の繊細さといったらもう!これは一樹さんにしか書けないだろうなと痛感した作品。

「c」

最後に紹介するのは絶対に読んでほしい1冊。2008年には直木賞受賞、2014年に映画化されたのが記憶に新しい。ご存知の方も多いのではないだろうか。震災孤児となった9歳の少女花。親戚にあたる男、腐野淳悟の申し出によって引き取られ親子となる。これは道徳に背き続ける二人の歪んだ愛の家族関係の物語。この物語、とんだ曲者である。今までの一樹さんが鬼に化けた様な、挑発的なテーマに圧倒的な文章力。ぐいぐい引き込まれてあやうく飲み込まれてしまいそうになった。「殺人」と「近親相姦」という心を抉り取られそうな背徳感の中に光る「愛」という真のテーマが、言葉にできないほどの痛みと苦しみを美しく魅せてくれた。愛情に恵まれず居場所がなかった2人が渇望し合った究極の愛というものを、これでもかと生々しく描ききる筆にはもはや狂気を感じる。例え禁忌を犯したとしても「貴方になってしまいたい」と貪る様に求め合う愛。私はこれを「純愛」と呼ばせてもらおう。強烈な作品故に好き嫌いが別れるかとは思うが是非挑戦してほしい。

この他にも紹介したい最高の本がいっぱいある!「ファミリーポートレイト」「ばらばら死体の夜」「道徳という名の少年」「赤朽葉家の伝説」「製鉄天使」「荒野」「傷痕」「無花果とムーン」「ルナティック・ドリーマー」、、、もう挙げていけば全部言ってしまう!

一樹さんの小説は幅が広い。非常に広い。したがって簡単にカテゴライズするのは難しいし小説がそれを許さない。時に痛快でコミカルな作品、時に危険で妖艶な作品、時に純粋無垢で誰もが経験する淡い思いの作品、、、。この枠に捕われずに紙の上を自由自在に飛び回る一樹さんがとても素敵だ。この人は一生本と共に生き書き続けていける、私の憧れで最高の小説家なのだ。

◆【連載】逢瀬アキラの『逆襲のアキラ』
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