【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.52「レクイエムは「愛を止めないで」」

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一昨日、大好きな伯父を見送りました。先月還暦を迎えたばかりの、伯父の中でも一番若い人でしたが、病が我々に早すぎる別れをもたらした現実に人生の不条理さをまたひとつ感じています。

伯父は1970年代から80年代を彩った「ニューミュージック」と呼ばれる時代背景にドンピシャとはまった団塊の世代より下の世代で、お気に入りはオフコースと小田和正。口癖は「小田さんはすごいんだよ」でした。

無論、私のような若輩ものであっても、シンガー小田和正の“天からの授かりもの”としか形容しようのないその声と、時代を超越して求められ続ける普遍を切り取る抜群のセンスから生み出される歌詞とメロディーを初めて耳にしたときに受けた感銘は忘れようにも忘れられぬものとして心に刻まれていますし、その第一声に驚きの余り眼を見開くという経験は今のところ小田さんのライブでしか経験したことがありません。

そしてまた、一度だけ小田組と仕事をご一緒させていただいたときがありました。噂には聞いていましたが、プロフェッショナル集団の織り成すワークには無駄が一切なく、かといって嫌な緊張もなく、ただ自然とそのミュージシャンの良さを引き出す雰囲気に至るまでをプロデュースする小田さんとそのクルーからは学ぶことばかりでした。

俗に言う音楽ギョーカイで働く姪っ子に対し、伯父は2つの願いを話してくれました。ひとつは小田さんのコンサートチケットの入手。こちらは幸運にも叶えることができ、当日は日頃の感謝を表すべく伯父と伯母をパシフィコ横浜へ送迎し、当時はまだ学生だった10歳離れた従姉妹と2人でライブ観覧する夫婦を隣のコスモワールドで遊んで待ったのも今ではよい思い出です。11年前のちょうど今頃、夏の暑い日でした。

残念ながら、もうひとつの願いであった「クリスマスの約束を観覧すること」は叶えてあげることはできませんでしたが、今年もまた空の上で観覧していて欲しいと思います。

そんな伯父のレクイエムはオフコースの曲「愛を止めないで」。従兄妹と伯母が用意した伯父に似合いの帽子やサングラスを今頃喜んで身につけていることでしょう。空の向こう側であっても、冗談を言い合えなくなってしまっても、ニューミュージックというものを私に教えてくれた格好の良い伯父でいて欲しいです。ありがとう。


◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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