【インタビュー】ブルーズ・ピルズ、飛躍への輝ける助走

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スウェーデン女性シンガー、フランス人ギタリスト、アメリカ人ベーシスト、スウェーデン人ドラマーという多国籍ラインナップによるサイケデリック・ブルーズ・ハード・ロック・バンド、ブルーズ・ピルズが前作『ブルーズ・ピルズ』から2年振りとなるセカンド・アルバム『LADY IN GOLD』を完成させた。

◆ブルーズ・ピルズ画像

前作及びそれに伴う長期ツアーの成功により、ヨーロッパでは一躍若手注目株となった彼らは、この新作でまた飛躍すること確実だろうが、ここ日本でのステイタスアップも望まれるところだ。べーシストのザック・アンダーソンとのインタビューをお届けする。




――2014年にアルバム『ブルーズ・ピルズ』をリリースしました。ファースト・アルバム発表後の活動はいかがでしたか? 満足のいく本数のライヴやツアーを行なうことはできましたか?

ザック・アンダーソン:うん、望んでいた以上の活動ができたと思う。この2年ほどほとんどノンストップでツアーをしていたんだ。大半がヨーロッパだったけれど、ヨーロッパでは非常に良い状況が続いているので、その勢いを止めないようにしたかったのもある。新しいアルバムではもっと多くの国に行けることを期待しているよ。そしてツアーの合間には発売間近の新しいアルバム『LADY IN GOLD』の制作も進めていったんだ。

――あなたの弟のコリー・ベリーが脱退して、後任ドラマーとしてアンドレ・クヴァルンストロムが加わりました。まず、コリーが辞めたのはいつのことで、その理由というのは? コリーはバンドを辞めてアメリカに戻ったのでしょうか?

ザック・アンダーソン:いや、彼は今もスウェーデンに住んでいるよ。俺達は今もコリーと仲が良いままでね、色々な考え方の違いなどがあって一緒にバンドをやっていくのが難しくなっただけなんだ。悪感情などは特にないよ。今も一緒に時間を過ごすし、時には一緒に音楽を書くこともあるんだ。

――考え方の違いというのは、音楽活動や方向性に関するものでしたか?

ザック・アンダーソン:いや、音楽の方向性はそれほど関係なかった。ただ、長い時間を共に過ごしていると、一緒にやっていくのが難しくなることはあるものだよ。こうするのがベストだったんだと思う。彼は当時、個人的なことも色々とあったんじゃないかな。俺の口から喋り過ぎるのは控えておくよ(苦笑)。

――アンドレは、その姓から察するにスウェーデン人かと思います。

ザック・アンダーソン:そのとおりだよ。

――彼が加入した経緯を教えてください。


ザック・アンダーソン:俺達は既に、かなり良い友人関係にあったんだ。コリーが脱ける前に、このバンドで一緒にプレイしたこともあった。だから最初に声をかけたのが彼だったんだ。トライアウトなんかをする必要はなくて、ただ声をかけた。それ以降、ずっとうまく行っているよ。俺達は同じ町に住んでいてね、小さな町だから全員が知り合いという感じなんだ。彼は前に別のバンドでプレイしていて、俺が知り合った時にはTRUCKFIGHTERSというバンドでプレイしていた。それで彼がとても良いドラマーだということを俺も知っていて、一緒にジャミングしたり遊んだりしていたから。

――ドラマーが交代するとバンド・サウンドをもう一度タイトなものとするのにある程度のリハーサルやツアーを行なう必要になるかと思いますが、今回のラインナップの変更にはポジティヴな面の方が多かったのでしょうか?

ザック・アンダーソン:うん、これほど素晴らしいドラマーをすぐに見つけられたから、俺達はとても運が良かった。アンドレは基本的には生まれてからずっとドラムスをプレイしているようなものだから、曲もすぐに覚えた。前に進むのは良いことだったと思う。俺達がまたライヴをやれるようになるまでに、1ヵ月ぐらいしか必要なかったと思うよ。それ以後、どんどん良くなってきている。この数年間で凄く沢山のショウをやってきているからね。彼の加入は新しいアルバムにとっても良いことだったと思う。彼も沢山貢献をしているんだ。

――『LADY IN GOLD』のための曲作りを始めたのは具体的にはいつのことですか? バンドのメンバーで特に話し合ったことはありますか? それとも、自然に曲が向かう方向に任せて作り上げたという感じでしょうか?

ザック・アンダーソン:何かが浮かんだ時に書いていったという感じだったよ。『LADY IN GOLD』は、かなり長い間にゆっくりと書いていったレコードなんだ。というのも、ずっとツアーをしていたから。でも曲作りはスタジオで行ったから、ツアーから戻ったらスタジオに入って何曲かを書いて、という風にやっていったんだ。ツアー中に曲を書くのは、どういうわけか俺達には難しくてね。だからツアー中に書くことはほとんどなかった。だから、かなりゆっくり進んだよ。2年以上かけてね。アイディアのいくつかはかなり古くて、1stアルバムより前からあったのもあるけれど、それもベーシックなアイディアでしかなかったから、全員で一緒にスタジオで曲に仕上げていったものだね。

――あなた方はそれぞれ優れたミュージシャンですが、他のバンドではなかなか聴けないタイプのシンガー、声も歌も魅力的なシンガーがバンドにいるというのは大きいことですよね? バンドで作り上げる曲の多様性も格段に広がると思いますが、いかがでしょうか?

ザック・アンダーソン:うん、エリンの声が素晴らしいことは一緒にプレイするようになった時から明らかだったし、俺達は常に彼女のヴォーカルの才能を披露できるものを書こうとしてきているよ。彼女のようなシンガーと組めている俺達は幸運だと思う。ソフトな曲もスローな曲もヘヴィな曲も、どれも楽にやれるからね。どんなタイプの曲でも上手く演奏できるんだ。もしかしたら凄く良いシンガーがいないバンドには無理だったかもしれないようなことがやれる。ヴォーカルが重要な、ソフトで心の底から出て来るような曲なんかは、ヴォーカルがあまり上手くなかったら、曲全体を維持することはできないだろう。でもエリンにはやれる。彼女は様々なタイプの曲、様々なフィーリングの曲を見事に表現することができるし、歌うことで自分の感情を本当に上手く伝えることができるんだ。

――彼女はジャニス・ジョプリン、アレサ・フランクリンらの時代に生まれていても対等にわたり合っていたシンガーかもしれません。

ザック・アンダーソン:うん、そのとおりだと思う。

――前作に引き続いてオランダ人アーティスト、マリク・コーゲル・ダーナムがアートワークを手掛け、プロデュースも前作と同様にドン・アルスターベルグが担当しました。前作と同じ陣営で取り組んだのは、バンドの、またはアルバムの特定の方向性を維持したいという意識があったからですか?

ザック・アンダーソン:同じ人達と一緒にやったのは、上手くいっていることは変えたくないと思ったからだよ。彼女のアートワークが俺達はとても好きだしね。それにアートワークには継続するテーマのようなものがある方がいいと思うんだ。ドンとまた組んだのも同じ理由からだよ。前回一緒にやった仕事がとても気に入ったから、もう1枚彼と一緒にアルバムを作りたかったんだ。それに、全部アナログでレコーディングをする彼のやり方がとても好きなんだ。俺達が大好きなアルバムのほとんどは、すべてをアナログでレコーディングしているから。そのやり方でやれるのは俺達にとってクールなことなんだよ。今はもう、全部アナログでやれるスタジオはそんなに沢山は残っていないからね。

――新作を象徴する曲として3曲挙げてください。そしてその理由は?

ザック・アンダーソン:そうだな、勿論「Lady In Gold」は入るよ。アルバムのタイトルはこの曲から採ったものだし。全体としてクラシックなブルーズ・ピルズのサウンドになっていると思うし、それがタイトル・トラックにした理由なんだ。それから、「Little Boy Preacher」も選ぶかな。バンドの少しばかり新しい方向性も見せられていると思うし、他の幾つかの曲と比べて実験的な部分もあると思うから。それから…難しい選択だけど…、多分「Gone So Long」かな。ソフトでエモーショナルな曲だから、このアルバムとバンド全体のダイナミックな面が出せると思う。

――「Little Boy Preacher」はジャミングから生まれた曲だそうですが、次回もそういう書き方も試してみたいですか?


ザック・アンダーソン:うん、そう思っている。まずはツアーをしていない時間をもっと作って、リハーサル・スペースで過ごす時間を増やして、スタジオに入る前に曲作りをしたいね。ジャムったり、もっとリラックスして色々やれる時間が過ごせるように。そういうところから出て来たアイディアを使って曲を作れるようにしたい。次のアルバムはそういうものにしたいというのが、少なくとも今の俺達が考えていることだよ。

――2月から4月にかけて、アルバム発表に先駆けて既にヨーロッパ・ツアーを行なっていましたが、今後の予定を聞かせてください。

ザック・アンダーソン:アルバムは8月に出るから、夏の間は沢山のフェスティヴァルに出演して、ずっとツアーをやっている予定だよ。フェスティヴァルとフェスティヴァルの間でクラブ・ショウもやる。そしてヨーロッパのフェスティヴァル・シーズンが終わったら、KADAVARと一緒にツアーに出るよ。彼らもやはり『Nuclear』に所属しているバンドなんだ。そのバンドと一緒にヨーロッパでツアーをする。それが10月のはずだ。その後のことはまだ何も決まっていないけれど、来年のブッキングを始めて、新しい国にも行けることになったら嬉しいと思っている。もしかしたら、アメリカや日本にも。

――日本公演を期待しています。日本でプレイすることに興味を持っていることがわかって安心しました。

ザック・アンダーソン:一度行くチャンスがあったのは知っているんだよ。でも、残念ながらスケジュールが合わなかったんだ。でも、今回はもしかしたら、と期待している。

取材・文:奥野高久/BURRN!
Photo by Peder Carlsson


ブルーズ・ピルズ『レディー・イン・ゴールド』

2016年8月5日 世界同時発売
【完全生産限定盤CD+ライヴDVD+ライヴCD】 ¥3,800+税
【初回限定盤CD+ライヴDVD】¥3,200+税
【通常盤CD】 ¥2,300円+税
1.レディー・イン・ゴールド
2.リトル・ボーイ・プリーチャー
3.バーンド・アウト
4.アイ・フェルト・ア・チェンジ
5.ゴーン・ソー・ロング
6.バッド・トーカーズ
7.ユー・ガタ・トライ
8.ウォント・ゴー・バック
9.リジェクション
10.エレメンツ・アンド・シングス
【ライヴDVD・CD】<2015年4月7日 ベルリン公演>
1.ハイ・クラス・ウーマン
2.エイント・ノー・チェンジ
3.ブリス
4.ディグ・イン
5.ノー・ホープ・レフト・フォー・ミー
6.デヴィル・マン
7.ブラック・スモーク
8.リトル・サン
9.アストラルプレイン

【メンバー】
エリン・ラーソン(ヴォーカル)
ザック・アンダーソン(ベース)
ドリアン・ソリオー(ギター)
アンドレ・クヴァーンストローム(ドラムス)

◆ブルーズ・ピルズ『レディー・イン・ゴールド』オフィシャルページ
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