【ライブレポート】極上空間でKREVAが生みだす“大人のHip Hopナイト”夢のビルボードライブ公演

ツイート

この後、舞台にはスツールが用意され、KREVAがそこに腰掛け、トークがスタート。ここでは、今回スペシャルなこととして楽曲を作ったときの自分の気持ちを解説して演奏することも考えたが「みんながキャッチした気持ちが正解だから止めた」と説明。また、KREVAのウィキペディアに書いてあることが「まぁーひどい」といってその例を上げ、みんなで大笑いした後は、「俺が喋ったことの生き証人はここにいる人たちだから」と伝え「次は歌詞をじっくりしっかり聴いて。もしかしたら、今日違う気持ちを発見するかもしれないし。俺も一生懸命じっくりしっかり歌うんで」といって届けられた曲。それは「EGAO」だった。曲はダウンテンポアレンジ。KREVAが紡ぎだす言葉が記憶の奥深くに落ちて、気持ちとコンタクト。ブルージーなフレーズを描くベースソロ、オートチューン効果をフルに使った歌い回しが、KREVAの心の叫び声となって響き渡り、それが彼方の光となっていった後半、曲はテンポアップ。ドラマチックな「EGAO」に続いて始まった「スタート」もバンドならではの即興性の高いジャジーなアレンジが施されていて、その中で、KREVAが珍しくこの曲をファンに振らずに一人で歌ってみせた。「EGAO」も「スタート」も感極まって泣きだすファンがいるほど、客席が“歌詞”に集中しているのが分かった。

歌い終えた後、KREVAが「昨日と今日はライブで“スタート”全部一人で歌ったスタート記念日!」とおどけて場内の緊張感をうまい具合にほぐして、この後ライブは終盤へと向かう。次は908FESの最後に披露した新曲「居場所」を歌うと話し、この曲はレーベル移籍に合わせた作ったものではなく「1年間ライブを休んで、手ぶらでみんなの前に現れる訳にはいかないなと思って生まれた曲」だと解説。そして「もう終わりだよ。心ゆくまで“ガン見”“ガン聞き”“ガン盛り上がり”して」といって、この日は武道館とは違うバンドバージョンの「居場所」を披露。言葉一つ一つをみんなに大切に届けるように歌い紡ぎ、最後に“2016、ここが俺の居場所!”と高らかにいい放ったKREVA。そうして「アグレッシ部」では、センチメンタルな鍵盤のフレーズをどんどんドラマチックに盛り上げていくバンドサウンドで己を鼓舞していった。

曲後「久々に“アグレッシ部”を歌えて嬉しい」と笑顔を浮かべたKREVAからは、来年の予定も告げられた。「これから大きい会場も小さい会場、こういう場所でもやりたいし。来年は会える回数増やすから。アルバム出して全国ツアー回るけど、そのあとも」といきなり最新情報がKREVAの口から飛び出し、興奮しきった客席からは割れんばかりの悲鳴が上がった。「だから、お金貯めといて下さい! 貯めたら俺に下さい(笑)」とKREVAらしく結び、本編ラストの「音色」を、この日1番のソウルフルな歌声で歌い上げて本編を締めくくった。


客席のアンコールに応えて、再びステージに戻ってきたKREVA。まずは、ファンに断ってステージに用意されていたお酒(テキーラ)をメンバー全員が一気飲み!「初めてだよ。メンバー全員で飲酒してライブやるのは。KICK THE CAN CREWのときはステージドリンクがアルコールのときもあったけど」といいながら、KREVAが羽織っていたジャケットを勢いよく脱ぐと「カッコイイーっ!」と客席から声が上がる。「今日は908FESでやってない曲を用意したんだけど、もっとレアな曲をやってくれてもいいんじゃないの? って思ってる人の要望に応えたいと思います」。そう言って始まったのは「ma cherie」。“Dance With Me…”で始まるこの曲は、3連譜を乗りこなしながらアクセントをつけてラップしていくというKREVAのラップのスゴ技を思う存分堪能できるナンバーだ。この日はさらにそこに生バンドのセッションも加わり、とびきりジャジーな「ma cherie」も味わえた。こうして、想像以上にKREVAのNext Stageとも思える新しいスタイルのライブを堪能できた夢のようなビルボードライブ東京公演は、本当にあっという間に幕を閉じてしまった。

武道館とはまた違う意味で大満足! どこまでもKREVAに、そのラップと歌詞やバンド演奏の基盤となるトラックメイクの奥深さと素晴らしさ、そしてヒップホップという音楽の可能性にことごとく感動した夜だった。ありがとう、KREVA。まだまだ私たちが知らないヒップホップという音楽の可能性を、これからも見せていって欲しい。

取材・文◎東條祥恵


セットリスト<KREVA in Billboard Live>

2016年9月9日 一回目公演
ビルボードライブ東京

1.瞬間speechless
2.王者の休日
3.成功
4.I Wanna Know You
5.It's for you
6.ビコーズ
7.EGAO
8.スタート
9.居場所
10.アグレッシ部
11.音色
EN1.ma cherie

この記事をツイート

この記事の関連情報