【ライブレポート】己龍、2年連続武道館公演からその先の未来へ

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8月29日(月)、己龍が自身2度目となる日本武道館公演を行った。己龍は若手ヴィジュアル系バンドの中でも躍進目覚ましく、「挑戦する姿」を見せ続けている。今回の武道館公演は2年連続での開催だ。

◆ライブ画像

この公演は己龍のワンマンライブ400回目の記念公演、かつ6月にリリースされたアルバム『百鬼夜行』を掲げたツアー<己龍単独巡業「百鬼夜行」>の千秋楽公演でもあり、己龍にとっては特別な一日だ。

このツアーのコンセプトアルバムとなった『百鬼夜行』は、ライブ感の強い楽曲で構成されている。本アルバムがリリースされたときはこれを持って武道館へ挑むその姿勢に驚嘆したが、これも「挑戦し続ける」というスタンスを持った己龍らしい作品なのかもしれない。

この日のステージは、アルバム『百鬼夜行』の世界観に基づき、障子や燭台に彩られた怪談のようなセット組みがなされていた。朱の鳥居や太鼓橋が設置され艶やかな印象だった昨年の武道館公演とはまた違った雰囲気。開演前のSEもなんと国歌「君が代」のアレンジ。“和製”をコンセプトに掲げる己龍ならではの演出だ。


君が代が入場SEに変わり、手提灯をもったメンバーがそれぞれ現れ、黒崎眞弥(Vo)がさっとステージに提灯をかざすとステージ上の燭台に火がともり、武道館公演が幕を開けた。

1曲目はアルバム「百鬼夜行」に収録されている「日出ズル國」。そこから「鬼遊戯」、「阿吽」と、アルバムとツアーのコンセプトにぴったりのセットリストでライブがスタート。「彩」「朔宵」ではファンの掲げる色とりどりの扇子が舞い、武道館が彩られる。

そして六曲目「百鬼夜行」。大きな音とともに火薬の特効がなり、ステージ花道に現れたのは妖怪。妖怪たちを足元にまとわらせながら演奏するメンバーの姿は「百鬼夜行」のミュージックビデオの世界観そのもの。己龍のコンセプトでもある“和製ホラー”の世界観にファンは大きな歓声を上げた。

そこから「千鶴」「イナイイナイ」「泡沫」とアルバム収録曲を立て続けに演奏。「百鬼夜行」での演出の流れを汲み、ひとつのエンターテインメントショーともいえる構成。ファンもその雰囲気にのまれるかのようにヘドバン、ジャンプを繰り返し、いつもライブハウスで行っているライブとまるで変わらないような光景が生み出された。改めて己龍はライブバンドだということを想わせてくれるライブだ。


その雰囲気をガラッと変えたのがライブ中盤で披露された「盲」。重いサウンドに切ないメロディがのる、バラードである。黒崎眞弥自身、目の病を患っているのだが、せつせつと“見えるもの、見えないもの”を歌い上げるその姿には胸を打つものがあり、涙を浮かべて聴き入るファンの姿もあった。

再度アルバム収録曲が披露されたあとのMCでは、黒崎眞弥が「荒ぶる叫声を俺たちにぶつけろ、荒ぶり続けろ」と煽り、会場からはわれんばかりの声が上がる。メンバーとファンのコールアンドレスポンスで互いの激情を確認しあった。

「日本武道館、全員で飛ばしていくぞ」の声から始まった終盤は、「化猫」「井底之蛙」「鬼祭」「心中歌」と新旧織り交ぜた攻撃的なナンバーのオンパレード。頭を振り続けるファンは、もうここが日本武道館であることも忘れたかのように、座席も何も関係なく暴れ続けた。

本編ラストで披露されたのは、これぞ己龍、という和テイストの楽曲「アマテラス」。ボーカルソロでは、会場全員で歌う場面も。発射された銀テープを振りながら、日本武道館全体がメンバーも客も一体となった瞬間だった。

「今日は本当にどうもありがとう」と感謝の気持ちを述べ、ステージを去るメンバーの顔はみな穏やかで幸福に満ち溢れていた。昨年の武道館公演では、どのメンバーもどことなく緊張感があったように見受けられたが、今回の公演ではある種の余裕が感じられた。

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