【インタビュー】奥華子、切ない恋愛ソングの達人が語る“男性目線”と新境地

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6月、7月に行なわれた「10周年ありがとう!全曲ライブツアー」では、福岡、大阪、名古屋、東京と、各都市A~D公演で合計14時間かけて自分のレパートリーを歌い切るという偉業を成し遂げた奥華子。10周年記念のメインイベントを経て、アニバーサリーイヤーも幕を閉じたが、その公演のアンコールでも披露された「思い出になれ」と、「2016 cross fm オフィシャルGREENキャンペーンソング」として作曲した「愛という宝物」が両A面シングルとして9月21日にリリースされる。

◆奥華子 画像

■男性目線だからこそ、より切なくなるかなぁと。女の子よりも男の子のほうが恋愛をひきずる傾向があるっていうじゃないですか。



──<10周年ありがとう!全曲ライブツアー>では、2日で150曲、14時間も歌ったわけですが、人間ってそんなに長時間歌っていられるものなんですね。

奥華子(以下、奥):私もそれ、思いました(笑)。正確には、東京公演は2日間で154曲歌っているんですよ。それだけ歌ってもまだ元気だった自分にビックリ(笑)。

──すごいですね。どういう経緯で決まったの?

奥:ライブ活動を続けていても、150曲もレパートリーがあると歌わなくなる曲もあるんですよ。そうすると、ファンの人にも「あの曲が聞きたかった」ってアンケートで言われたりするんです。そういう意見を読むたびに、「これはもう全曲ライブをやるしかないね」ってスタッフと冗談半分で話してたんですが、10周年だし何か面白いことをやりたいなってことで、「じゃあ、全曲ライブやっちゃう?」と。最初は東京で1公演というのをイメージしてたんですけど、だったら大阪もやろう、福岡もやろうと、結局、名古屋も入れて全国4都市でやることになったんです。1週間おきにやってたから、声が出なくなったらどうしようって、ツアー中はビクビクしてました(笑)。

──過去の曲も紐解いて「こんな曲もあったなぁ」と感じることも多かったんじゃないですか?

奥:はい。CDには収録していたけどライブで初めて歌う曲もあったんですよ。今回は弾き語りのスタイルだったんですけど、今までは、弾き語りだと歌う自信がないと思っていたような曲も、やってみたら良かったとか。新しい発見もあって。

──今後のライブのセットリストが彩り豊かになりそうな。

奥:そうね。本当に締め括れた気がしました。歌う曲がなくなるまでやるわけですから(笑)。それでアンコールでは「もうやる曲がないので、新曲を作ってきました」って「思い出になれ」を弾き語りで歌ったんです。その後、「ありがとう!」って言ったあとに「愛という宝物」をカラオケで流し、それに合わせて会場を歩き回るという。

──「思い出になれ」は<全曲ライブツアー>で歌うために作ったんですね。「思い出になれ」というフレーズが、自分に言い聞かせる呪文のように響いてくる失恋ソングですが。

奥:確かに「思い出になれ」というのは呪文みたいですね。「思い出になれ」って、普段あまり言わないですよね。でも、言葉としてはおかしくない。今言ってもらったように、「思い出になれ」って自分に言い聞かせながら、でも涙は出ちゃうみたいな感じというか。お風呂に入っている時に「♪思い出になれ~」というメロディと歌詞が浮かんだんですよ。

──歌詞は切ないけど、曲は明るいんですよね。それが余計に切ない。

奥:そう。男性目線だからこそ、より切なくなるかなぁと。女の子よりも男の子のほうが恋愛をひきずる傾向があるっていうじゃないですか。

──男性が女性に「距離を置こう」ってよくあるシチュエーションですよね。こういう体験をした女性もたくさんいそう。

奥:ですよね。設定は実話ではないので、全部が実体験ではないけど、ここで描かれた感情には私が実際に感じたことも散りばめられているんですよ。男性にとって、距離を置く=嫌いということではないんですよね。でも、彼女としては「えっ? なんで距離を置くの? 好きなら一緒にいればいいじゃない?」って思う。男性は、好きだからこそ、距離を置きたいんだけど。そこで男女がすれ違いはじめるんですよね。それで、どっちが振るっていうわけでもなく、実は振ったつもりなんてないのに別れちゃう。

──結果、男性が切ない立場になってしまうという。結局、彼女は寂しくて、別の人に心が向いてしまったわけですね。「寂しさに負けた君のこと」って出てきますけど……

奥:でもそれは男性のせいで……。こういうことがあった男性が聞いたら、ちょっと辛い曲かもしれないですね。男目線の方が客観的に見れることがあるんですよ。だから男性目線で書く曲があるし、好きなんですよね。

──10周年が終わって、「思い出になれ」っていう曲だと、「これまでの10年は思い出にして、これからの私を見てください」というニュアンスにもとれますね。

奥:あぁ、そうですね。気づかなかった(笑)。今、12年目に突入したわけですけど、私としては再スタートというのは全然意識していないんですよ。だから偶然。でも、曲調的にも、歌詞の内容的にも、今までの奥華子ではあるんだけど、ちょっと今までとは違う新しい部分は出せたと思っていて。新鮮な感じがするんですよ。

──コーラスとかね。

奥:そう。今までこういうアレンジはなかったので。

──「愛という宝物」も今までにない雰囲気の曲ですね。「思い出になれ」とは真逆のハッピーソングですし。

奥:はい。これは「2016 cross fm オフィシャルGREENキャンペーンソング」として作った曲で、「愛」と「自然」をテーマに作ってほしいと言われたんですよ。壮大なテーマなので最初は「どうしよう」って思いました。でも、人間は自然の中で生きていますよね。街には普通に緑があるわけで、その自然も何億年も前からずっと繋がっているものじゃないですか。人の命も誰かと誰かが愛し合った結果で、その命が繋がって今自分がここに生きてて。じゃあ、なんでそうやって繋がるかと考えたら、自分の隣にいる大切な人を好きだって思う気持ちでしかないんじゃないかなって。それが壮大なことだって誰も考えてないと思うんですよね。で、自分の目の前にある幸せを見つめることが幸せなんだなって。そういう思いから歌詞は出てきました。

──歌い出しで描かれている「太陽の光があなたの手のぬくもりに似ている」という表現がまさに「愛」と「自然」ですもんね。

奥:そう。実は壮大だと思っているようなことと、自分の隣にあるものって似ているなって。あとはとにかく明るい雰囲気にしたいと思って。私の歌詞でなかなか「I love you」って言わないですよね(笑)。ライブではカラオケでハンドマイクでノリノリで歌ってるんですけど、そんな自分は今まで想像できなかったんです。でもこの曲では出来ちゃうんです。そういう意味でも新しい挑戦。こうじゃなきゃ奥華子じゃないっていう部分ももちろんあるんですけど、逆に、いつもと違うことをやっても奥華子っていうのも最近はわかってきたのかもしれない。少し違うことをやったところで、人って変わるものじゃない。

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