【ライブレポート】エレファントカシマシ、27回目の野音で宮本浩次「これからも喜んでもらえるような俺でいたい」

ポスト


デビュー29年目となるエレファントカシマシが、1990年より連続で行っている日比谷野外大音楽堂での公演を完遂した。オフィシャルより届いた当日(2日目)のライブレポートをお届けしたい。

◆エレファントカシマシ ライブ画像

  ◆  ◆  ◆

とてつもなくロックなステージだった。

デビュー29年目、メンバーの4人中3人が50歳という年齢構成になったにもかかわらず、“円熟”の境地とはまったく違う、荒ぶる魂が炸裂するアグレッシヴなライブが展開されたのだ。もちろん今の彼らだからこその味わい深い演奏もたくさん披露されたが、最終的に伝わってきたのは前に進み続けるバンドの姿、そして27年間、培ってきたバンドと観客との揺るぎない連帯感だった。

1990年から27年連続開催となるエレファントカシマシの日比谷野外音楽堂、9月17、18日2DAYS。ここでは2日目、18日の模様をレポートしていこう。この日はあいにく曇りのち雨という天気だったのだが、雨雲の彼方から月に見守られているような気がしたのは彼らのホームグラウンドとも言うべき“野音”だからだろう。壁や椅子にまで、27年間分の歴史や思い出が染みこんでいるような気がする。場内は立ち見客も含めて超満員だ。17時5分すぎにメンバーが登場。宮本浩次(Vo&G)、石森敏行(G)、高緑成治(B)、冨永義之(Dr)という不動のメンバーに加えて、ここ数年、サポートで参加しているヒラマミキオ(G)、初期からの付き合いとなる細海魚(Key)という6人編成。“エレファントカシマシのロック”を奏でる上で現時点での最強と思われるメンバーが揃った。

1曲目の「ズレてる方がいい」からいきなり重厚な演奏がズシッと体を直撃してくる。人間に例えるならば、足腰が強靱で体幹がブレないサウンドといったところだろうか。“どうせ流す涙ならお前と流したい”というフレーズにグッときたのは野音に漂う濃厚な一体感によるのかもしれない。演奏する側だけでなく、聴く側の集中力も素晴らしい。これがエレファントカシマシの野音。歌う年齢によって、歌の表情が変化してきている「歴史」、ダークでノイジーなサウンドの奥底から生命力がほとばしる「ゴッドファーザー」、緩さと軽やかさを備えた演奏が楽しい1stアルバム収録の「浮き草」などなど、レアな曲、マニアックな曲が並ぶ“野音仕様”の構成もこのライブを特別なものにしていく。



「今、いちばんやりたい曲を精選してきたので、自信を持ってお届けするぜ」と宮本。驚くべきなのは昔の曲でも新鮮な息吹きが吹き込まれ、リアルに響いてきたことだ。つまりどの曲も“懐かしの歌”というような過去形ではなくて、現在進行形で更新され続けているということ。表情豊かなグルーヴが歌に奥行きと広がりを与える「おれのともだち」、ソウルフルな歌と起伏に富んだ演奏が見事だった冨永作詞作曲の「土手」などなど、どの曲もみずみずしい。「珍奇男」は89年の曲なのだが、今もなお、“なんなんだ、これは!?”という衝撃をもたらしてくれる。

この野音では月にちなんだ曲が演奏されるのが恒例になっている。ドラムの後ろから照らされる1本の照明のみで演奏された「月の夜」ではその灯りが月の替わり。宮本の歌とアコギに虫の声が勝手に加わっていく。細海のオルガンが月の光のように密やかに降り注いでいく。深遠と呼びたくなる宮本のボーカルに盛大な拍手が起こった。「日比谷公園へ散歩に行こう。ここは武蔵野」という言葉で始まったのは「武蔵野」。抑制の効いたバンドのグルーヴがトリップ感をもたらしていく。

27年連続だから、今さらすぎる言及となるが、エレファントカシマシには野音がよく似合う。都心の公園というロケーションで、ステージの後ろに高層ビルが見えて、まわりは木々で囲まれ、虫の鳴き声が聞こえ、見上げれば、空があり、時折風が吹く。そうした環境と彼らの風流な歌とがシンクロする瞬間が多々あるからだ。第一部のラストの「四月の風」は九月の雨が降る中での演奏。これはこれでありだ。まるで観客へのラヴソングのように温かく染みこんでくる。“明日もがんばろう”という言葉が真っ直ぐ届いてきた。




二部の始まりの曲、「友達がいるのさ」も会場内にフレンドリーな空気が充満した。宮本がステージ上を歩き回りながら歌っている。曲が進むほどに、エモーションが渦巻いていく。歌の後半で“来年も再来年もどこまで行けるかな〜”“行くぜ〜”とのフレーズも歌われた。エレファントカシマシの最新のロックが炸裂したのは「i am hungry」。「行くぜ〜!」というシャウトに観客がこぶしを挙げて応えている。柔らかな歌声でありながら、胸の奥深くまで届いてきた「今宵の月のように」、「9月18日〜、everybody〜、東京日比谷の野音〜、everybody、サンキュー」という即興でのささやくような歌声に続いて、宮本のアコギの弾き語りで披露された「涙」など、染みてくる曲もたくさん演奏された。「コールアンドレスポンス」は宮本のソリッドな歌声、石森の鋭角的なギター、ヒラマの骨太なストローク、冨永と高緑の生み出す硬質のビートとが一体となって、破壊力を発揮していく。雨が強くなる中での「RAINBOW」は強烈だった。いきなり宮本の歌で始まり、その歌に続いてバンドも一気に疾走していく。歌はどんどん加速していく。見えない壁をぶち壊して、乗り越えていくかのようだ。得体のしれない混沌としたパワーが渦巻いていく。これこそが夜の雨の中で出現した虹。この歌は演奏されるたびに、様々な表情を見せて、その都度、とてつもないパワーをほとばしらせてきたが、まだまだ底が見えない。その時のテンションや気分によって、またメンバーによって、この曲は色合いや形を変えていきそうだ。



「30年、ひとえに俺の努力のみでやってきた気がします。これからも喜んでもらえるような俺でいたいと思ってます。ついてこさせてやるよ」という“上から目線”の言葉に続いては「FLYER」。“いつの日にか落ち合おう”という言葉が未来への約束のように響く。ここで二部終了。

三部は高緑と宮本の共作曲「星の降るような夜に」での始まり。バンドの絆の深さが見えてくるような温かな演奏にほっこりする。宮本が石森と肩を組む場面もあった。「さあさあさあ」と言いながら始まったのは最新シングル曲「夢を追う旅人」。包容力あふれる歌とスケールが大きくてエモーショナルな演奏に包み込まれていくのが気持ちいい。宮本がジャンプして、両手両足を広げてフィニッシュのポーズを取っている。冨永の切れ味抜群のドラムが強烈な推進力を与えて、ただならない境地まで突入していく「ガストロンジャー」、「みんなに、俺に、全員に捧げます」という言葉に続いて、ロックンロールのパワーが炸裂しまくった「ファイティングマン」で三部が終了した。ステージからはける時に、宮本が石森の帽子を取ると、三つ編みで炎のようなオレンジ色のヘアスタイルが出現。悲鳴にも似た歓声も起こるというハプニングもあった。

アンコールでは「最高最高」というメンバーのハモリも最高だった「この世は最高!」と強靱なグルーヴが気持ちいい「待つ男」が演奏された。「サンキュー、everybody、また会おうぜ、ありがとう」と宮本。3時間、34曲。しかもどの曲も渾身、全身全霊の歌と演奏。最後まで宮本の声は伸びやかでパワフルだった。バンドも驚異的な集中力とテンションとを持続していた。心技体、バンドの充実ぶりがしっかり伝わってくるライブだった。この日、歌詞の中だけでなく、即興も含めて、様々な曲の中で「行くぜ」という言葉が飛びだした。今のバンドのベクトルをひと言で表すならば、「行くぜ」ということになるのではないだろうか。一方的にバンドだけが前に進もうとしてるのではない。バンドと観客とがその絆を確かめ合ってともに前に進んでいこうとしている。野音はそんなきっかけの夜でもあったと思うのだ。“everybody ファイティングマン”というフレーズは圧倒的に正しい。




  ◆  ◆  ◆

なお当日は、日本武道館にて、2017年1月6日(金)に新春公演が行われることも発表された。

撮影=岡田貴之

【9月18日公演セットリスト】

M1 ズレてる方がいい
M2 歴史
M3 ゴッドファーザー
M4 浮き草
M5 道
M6 おれのともだち
M7 土手
M8 サラリ サラ サラリ
M9 風に吹かれて
M10 いつものとおり
M11 月の夜
M12 珍奇男
M13 武蔵野
M14 流れ星のやうな人生
M15 昔の侍
M16 流されてゆこう
M17 Baby自転車
M18 悲しみの果て
M19 うれしけりゃとんでゆけよ
M20 so many people
M21 四月の風

二部
M22 友達がいるのさ
M23 i am hungry
M24 今宵の月のように
M25 涙
M26 コール アンド レスポンス
M27 RAINBOW
M28 FLYER

三部
M29 星の降るような夜に
M30 夢を追う旅人
M31 ガストロンジャー
M32 ファイティングマン
EN1 この世は最高!
EN2 待つ男

エレファントカシマシ 新春ライブ 2017 日本武道館

2017年1月6日(金) 日本武道館
開場/開演:17:30/18:30
席種:指定
チケット料金:¥6,900(税込)
備考:3歳以上チケット必要
公演に関するお問合せ:DISK GARAGE 050-5533-0888 (月〜金12:00〜19:00)

オフィシャルHP先行受付:10月1日(土)21:00〜10月16日(日)23:59まで
この記事をポスト

この記事の関連情報