【インタビュー】ヘヴン・シャル・バーン「20秒聴けば俺たちだってわかる」
ヘヴン・シャル・バーンにとって、約3年半振りの8作目『ワンダラー』が9月16日に発売となった。リリースを1か月後に控えた8月下旬、バンドの頭脳的存在でありギタリストのマイク・ヴァイヒェルトに電話インタビューを敢行、新作への想いなどを語ってもらった。
◆ヘヴン・シャル・バーン画像
――アルバム『Wanderer』のリリースを控えた最近の活動を教えてください。
マイク・ヴァイヒェルト:8月中旬までサマーフェスティヴァルへの出演が続いていて忙しかったね。先週はラムシュタインも出たHighfield Festivalでプレイしたんだ。これからはアルバムのリリースに向けてプロモーションをしっかりやっていこうと思っている。近いうちにファンを集めて今作のアートワークの展示会や試聴会を行う予定なんだ。エキサイティングな日々が待っているよ。
――今作も前作『VETO』と同じく、マイクともう一人のギタリストのアレックスがプロデュースしていますね。
マイク・ヴァイヒェルト:いや、プロデューサーはアレックスだ。俺は共同プロデューサーというカタチで作品に関わっている。俺はソングライティングも全曲の歌詞も手掛けている、だから客観的な視点をもった人間が必要だと思っている。曲も詞も書いてプロデュースもしている人もいるけど、そこまでやってしまうのは俺のスタイルじゃないんだ。
――いつ、今作の制作に取り掛かったんでしょうか?
マイク・ヴァイヒェルト:年末年始の2週間をアイスランドで過ごしながら、作品のコンセプトを考えていたんだ。そうしているうちにアイスランドの美しい景色にインスパイアされて、自然の写真をテーマにしたアルバム・コンセプトやデザイン、歌詞のアイデアを得た。だから、今作について一言で言い表すとしたら“Beautiful”な作品だね。本格的なアルバム制作に入ったのは今年の1月。3月にはデモを作り終えて、4月から5月にかけてレコーディングを行った。ミックスは6月に済ませて、最後にマスタリング・エンジニアがデンマークとドイツで仕上げを行ったよ。
――レコーディングはアレックスのスタジオで行ったんですよね?
マイク・ヴァイヒェルト:その通り!アレックスのケミカル・バーン・スタジオで行ったよ。自宅に近いから作業が終われば住み慣れた自宅に帰ることができる。アルバム制作中も常に頭の中をクリアにしておきたいって俺は思っている。だから、何もないスタジオに籠っていることに耐えられない性格なんだ。だから、マスタリング・エンジニアをわざわざケミカル・バーン・スタジオまで呼び寄せて作業してもらったんだ。
――アルバム制作はスムーズに進みましたか?
マイク・ヴァイヒェルト:そうだね、本当にスムーズに進んだと思う…俺たちギタリスト2人のパート以外はね(笑)。実は7月までギターパートの録り直しをしたりしていたんだ。あれは本当にストレスだった。
――ヘヴン・シャル・バーンの3枚目のアルバム『Antigone』から5作目『Iconoclast(Part 1: The Final Resistance)』、6枚目『Invictus(Iconoclast III)』までの作品でイントロとアウトロの楽曲を手がけているオラフル・アルナルズ(Olafur Arnalds:シガー・ロスや坂本龍一とのツアー経験もあるアイスランドの音楽家)は、今作には参加していないのでしょうか?彼の存在はあなたたちのアルバムにとって大きいと思っています。
マイク・ヴァイヒェルト:オファーはしたんだけど、彼は他のプロジェクトの活動で忙しくてスケジュールが合わなかった。それで残念だけど今回の参加を見送ることにしたんだ。彼は参加していないけど、同じアイスランドからはソルスターフィアのアザルビョールン“アディ”トリッグヴァソンが参加してくれているよ。
――アルバムを聴かせてもらいましたが「Prey To God」が超攻撃的で印象に残る楽曲でした。
マイク・ヴァイヒェルト:ありがとう!あの曲にはCannibal CorpeseのヴォーカリストGeorge "Corpsegrinder" Fisherが参加してくれている。この曲が完成したときCannibal Corpseの雰囲気をすごく持っているってみんなが感じていた。Marcus Bischoff(ヴォーカル)はCorpsegrinderと共演することが長年の夢だったんだ。今作では、ほかにも「Save Me」のギターソロをNICK HIPA(現Wovenwar、元As I Lay Dying)が弾いているし、いろんなゲストを迎えている。
――アイスランドの大自然に魅せられたことが今作のコンセプトになっているということですが、アルバムのアートワークも素晴らしいですね。
マイク・ヴァイヒェルト:あのアートワークは、アイスランドの名山と言われるカークワフェル山が映し出されている。
――あなたはアルバムを一言でいうなら「Beautiful」と表現しましたが、このアートワークから美しさと同時に強さも感じました。
マイク・ヴァイヒェルト:まさにそれを言いたかったんだ。山は圧倒的な美しさもあるけど、決して動かすことのできない大きな強さの象徴でもあるだろ?アイスランドでカークワフェルを見たときに、これをアートワークにしたいって思った。“美しさと力強さ”は、今回の作品を的確に表した言葉だとおもうよ。日本人にはこの気持ちはすごくよく伝わるんじゃないかな。日本にも美しい山=富士山があるからね!
――個人的にヘヴン・シャル・バーンはスタイルを変えないバンドだという絶対的な信頼感があり、新作が出ても安心して聴けるバンドだと思います。
マイク・ヴァイヒェルト:ファンが俺たちの音を20秒聴けばヘヴン・シャル・バーンだってわかる。それが俺たちの進むべき道だと思っているし、そのスタイルを変えるなんてことはあり得ないね。俺たちは、ファンにとって変わることのないブランドのような存在でいたいんだ。例えば一度口にして好きになった食べ物が、別の機会に全然違う味になっていたらガッカリするだろ?俺たちは変化することでファンをガッカリさせることだけはしたくない。俺自身も好きなバンドが全く違う音楽性になっていたりすると本当に残念な気持ちになるからね。
――何度も来日をしていますが、日本の思い出は何かありますか?
マイク・ヴァイヒェルト:初めて日本のスーパーマーケットに行ったとき、日本語が読めなくて何も食べ物を買うことができなかったなぁ(笑)。新幹線もクレイジーだと思ったね。あと、次に日本に行ったとき、機会があれば札幌でスキージャンプ大会を見てみたいね。
――スキージャンプ大会ですか?
マイク・ヴァイヒェルト:そう、俺はスキージャンパーの葛西紀明選手の大ファンだから、地元の北海道に行ってこの目で彼のジャンプを見るのが夢なんだ。なかなか札幌でライヴをする機会はないから、休暇を取ったときにでも実現させたいね。
――今後の予定を教えてください。
マイク・ヴァイヒェルト:アルバムリリース日にMetal Hammer Awardsでプレイをして、いくつかのクラブ・ツアーを予定している。このツアーのチケットは24時間以内にソールドアウトしたんだ。そのあと、2017年まで続くワールド・ツアーの準備に入る予定さ。
――そのツアーの中に日本公演が入っていることを期待します。
マイク・ヴァイヒェルト:日本には必ず行くよ。それまで新作『Wanderer』を聴いておいて欲しい。アルバムに入っている「Passage Of The Crane」は原爆が落とされたヒロシマを想って書いた曲なんだ。日本のファンに是非聴いて欲しいって思っている!日本にはLoyal To The Graveとか本当に仲のいいバンドもいるし、来日を楽しみにしているよ。
取材・文:澤田修
ヘヴン・シャル・バーン『ワンダラー』
【通販限定サイン入りカード付CD+カヴァーCD+ミックスCD】¥5,000+税
【完全生産限定盤CD+カヴァーCD+ミックスCD】¥3,500+税
【初回限定盤CD+カヴァーCD】¥3,000+税
【通常盤CD】 ¥2,500+税
※歌詞対訳付き/日本語解説書封入
1.ザ・ロス・オブ・フューリー
2.ブリング・ザ・ウォー・ホーム
3.パッセージ・オブ・ザ・クレイン
4.ゼイ・シャル・ノット・パス
5.ダウンシフター
6.プレイ・トゥ・ゴッド
7.エージェント・オレンジ *限定盤のみ収録
8.マイ・ハート・イズ・マイ・コンパス
9.セイヴ・ミー
10.コリウム
11.エクスターミネーション・オーダー
12.ア・リヴァー・オブ・クリムゾン
13.ザ・クライ・オブ・マンカインド
《カヴァーCD》『トゥー・グッド・トゥ・スティール・フロム』
1.ワットエヴァー・ザット・ハーツ [ティアマット]
2.ヴァルハラ [ブラインド・ガーディアン]
3.ブラック・ティアーズ [エッジ・オブ・サニティ]
4.ヨーロピアン・スーパー・ステイト [キリング・ジョーク]
5.シュトラッセンカンプ [ダイ・スケップティカー]
6.ノーウェアー [セラピー?]
7.トゥルー・ビリーフ [パラダイス・ロスト]
8.ノット・マイ・ゴッド [ヘイト・スクワッド]
9.デストロイ・ファシズム [エンドスタンド]
10.ディスロケーション [ディスエンボディード]
11.アウゲ・ウム・アウゲ [ドリッテ・ヴァール]
12.ダウンフォール・オブ・キリスト [メラウダー]
13.リヴァー・ランズ・レッド [ライフ・オブ・アゴニー]
《ミックスCD》『ダーク・ピュアリティ・ミックス』
1.ザ・ロス・オブ・フューリー
2.ブリング・ザ・ウォー・ホーム
3.パッセージ・オブ・ザ・クレイン
4.ゼイ・シャル・ノット・パス
5.ダウンシフター
6.プレイ・トゥ・ゴッド
7.マイ・ハート・イズ・マイ・コンパス
8.セイヴ・ミー
9.コリウム
10.エクスターミネーション・オーダー
11.ア・リヴァー・オブ・クリムゾン
【メンバー】
マーカス・ビショフ(ヴォーカル)
マイク・ヴァイヒェルト(ギター)
アレクサンダー・ディーツ(ギター)
エリック・ビショフ(ベース)
クリスチャン・バス(ドラムス)
◆ヘヴン・シャル・バーン『ワンダラー』オフィシャルページ