【音踊人20】福岡発のジョイ・メーカー about a ROOM『無限が似合うヒトたち』全国リリース(坂井彩花)

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今作の『無限が似合うヒトたち』は、“about a ROOM”が既存の1つの部屋から脱却した作品と位置付けて間違いない。1stアルバム『DOOR!!』から4年、確実に彼らは自分たちの音楽を手にしている。コピーバンドをしていた経験を元に、できること・やりたいことをかき集めた『何か』ではなく、しっかりと“about a ROOM”とは「何か」というものを決定づけるアルバム。それこそが『無限が似合うヒトたち』だ。初期からの何も考えずに聞き流すことができる気楽な雰囲気はそのままに、彼らのエンターテイメント性は確実に増している。

1曲目である「ふーふー」を聴いていただけばわかると思うが、出だしの1発から音圧が一目瞭然で違う。気合の1音というのは、こういうことをいうのだろう。興味がなく、なんとなくヘッドホンを耳に当てた人も「新しい音楽との出逢い」に期待せざるを得ない。

耳を傾けると聞こえてくるのは、彼らがバンドのコンセプトとして掲げている“ギターロック×ファンクリズム”。このコンセプトは、最近のシーンにおいて決して珍しいものではない。むしろありきたりすぎるくらいだ。それでも彼らが特別であるのは、その得意技を活かしつつ様々なテイストを昇華しているからだろう。現に「ブルースト」では80年代の歌謡曲のような空気感を、「燃え尽きるその日まで」では爽やかなフォークを鳴らしている。決して速弾きや高速のタム回しなどの技が散りばめられている派手な音楽ではない。しかし、丁寧にテイストを自分たちに取り込み、多くの人が聴きやすいように届けようというその姿勢は、技術的な派手さよりも色濃く何かを主張している。

色々な曲調が繰り出されると、多くの場合は聴いていて疲れてしまう。それにも関わらず、彼らの音楽を気楽に聴くことができるのは、吉原(Gt.Vo.)の優しい声がなせる業と言わざるを得ない。時には透明感ある高音を響かせ、時には安心感のある低音でたたみかける。目まぐるしく変わっていく音楽の中でも、安定感を発揮し常に包容力のある吉原の声は、バンドの中核を担っていると言っても過言ではないだろう。

ふわっと聴いても楽しくて、聴き込むごとに彼らが表現したかった新たな世界に出会うことができるアルバム『無限が似合うヒトたち』。これ以上に最高のエンターテイメントが、他にあるのだろうか。

about a ROOM 3rd mini Album『無限が似合うヒトたち』

9月21日 全国リリース
収録曲
1. ふーふー
2. catch me if you can
3. 泳ぐ未来へ
4. CONTINUE?
5. ブルースト
6. 燃え尽きるその日まで


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