【ライブレポート】aiko、<LLP19>に溢れた愛とエンタテインメント。「ここに居るみなさんに…また会えますように」

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aikoの全国ツアー<Love Like Pop vol.19>が、先日9月17日に東京・NHKホールにて千秋楽を迎えた。aikoは9月末から10月上旬にかけ、最新シングル曲「恋をしたのは」のミュージックビデオを期間限定フル公開したばかり。本記事ではそんなaikoの新曲がリリース前にいち早くファンへと披露されたツアー最終公演の模様をお届けしよう。

◆aiko<Love Like Pop vol.19> 写真

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aikoは人を幸せにする天才である。そして。この人こそ真の音楽家である。この日。それを改めて確信した。デビュー20周年を目前にする彼女に対し、何を今更、と思われるかもしれないが、彼女のライヴを観る度に、毎回自分でも驚くほどに新鮮な気持ちが体に流れ込むのを感じるのだ。

aikoは常に初々しく、驚くほど自然体で、聴く者1人1人の心の扉を開けていく。そして、聴く者は、aikoという存在をとても近く感じながら、彼女の歌と彼女の存在そのものを受けとめている。aikoのライヴは、そんな光景がとてつもなく心地良いのである。


18時34分。スタート時間を少し過ぎたあたりから、フロアに手拍子とaikoコールが自然発生した。客席からは、最新アルバム『May Dream』を引っさげ、4ヶ月で35本をまわったツアーを終え、再び東京に戻って来たaikoを迎え入れる、ファイナルならではの特別な熱量を感じた。

18時37分。会場SEが止むと、その声に応えるかのように赤い緞帳が一気に落とされ、薄い紗幕の向こうで歌うaikoの姿が目に飛び込んできた。円柱上に迫り上ったステージの上で1曲目に選んでいた「何時何分」を歌うaiko。『May Dream』の1曲目を担っていたこの曲は、一聴してaikoだと解る、ならではの肌触りを持つ旋律。彼女は、この歌に精一杯の想いを込めて届けた。
「ありがとう———」
曲終わりに小声で深く頭を下げたaiko。自分を待っていてくれた人たちを目の前に、大切に届けたこの歌の歌詞は、愛し合った人との“さよなら”を体温のある言葉で綴ったもの。新たに生み出されたaikoの感性。ミディアムなその旋律にオーディエンスは大きな拍手を送った。

アッパーなイントロが客席にクラップを促した「プラマイ」。aikoはステージ前方に走り出ると、これまた彼女らしい、ボリュームたっぷりな真っ赤なチュールが覗く白と黒のシマシマワンピースを翻しながら、溢れ出す“好き”を全力で歌った。まさに。水を得た魚のよう。aikoにとってもそこが1番の至福の時であることが、何よりも観る人を幸せに出来ている最大の要因なのだろうと感じた。


裏拍が強調されたリズムが印象的な「milk」は、aikoの驚異的な音楽センスと歌唱力に改めて引き込まれた瞬間。ラグタイムと呼ばれる音楽ジャンルを彷彿させるリズミックなこの曲に身を任せたオーディエンスは、とても自然なクラップで盛り上げていったのだった。

「来てくれてどうもありがとうございます! 本日最終日を迎えることになりました! いやぁ。終りたくない。でも、ほんまに“もうaikoもういらん!”ってなるくらい、に濃い時間を過ごしてもらいたいと思っています!」と挨拶。会場からの“乾杯しよう!”の声に、素直に応じるaiko。全員知り合いかのような距離感で、客席からのファンの声と対話していく彼女が創り出すライヴ空間は、本当にあたたかい。

会場のどの場所に居ても、aikoを本当に近くに感じられるのは、上辺だけのやりとりではなく、ちゃんとそこに“会話”が成立しているからである。驚くほどの記憶力の良さを持ち合わせているaikoは、会場からの声に的確な返事を返すことから、毎回オーディエンスからは驚きの声が上がるほどなのだ。

「ちょっと! ふくらはぎ立派とか言わんといて! 34本ツアーしてきたから子持ちししゃもみたいになってんねんよ。」と、愛しいあまりに、幼稚園生が好きな子にわざとちょっかいをかけるように、aikoにちょっかいをかけるファンの言葉には、とことんやんちゃな言葉を返したりもする(笑)。aikoのライヴは、そんなやりとりも人気なのである。

ジャズからの影響を強く感じる高い音楽性も彼女の魅力。少し太めの声色を使い、絶対的な歌唱力を見せつけたシャッフルのリズムの中で躍りじゃくりながら届けた「遊園地」。もはや、ポップシンガーには止まらない実力を見せつけた、新曲シングルのカップリング曲「微熱」。初めて披露するという「微熱」のメロウなナンバーの中で、aikoはマイクを離して極上のフェイクを聴かせてくれたのである。
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