【ライブレポート】aiko、<LLP19>に溢れた愛とエンタテインメント。「ここに居るみなさんに…また会えますように」

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ライヴの中盤では、恒例の“弾き語りコーナー”で、いつものようにオーディエンスからお題を集め、即興演奏を行ったのだが、この日ライヴを観に来ていた南海キャンディーズのやまちゃんこと山里亮太に語りかけてお題を求め、会場を沸かせていた一幕も。誰にでも壁なく接するaikoを見ていると、自らの心が解されていくのを感じることが出来る。aikoの計り知れない人間力はとにかく素晴らしい。

この日の即興演奏のお題は、手紙・ラジオ・フラダンス・遠征費用・こち亀・恋愛・勘違いの7つ。悩むaikoに、客席から“aikoなら出来るよ!”というフレンドリーな激励の声が飛ぶ。そんな励ましの声に“うん。ありがとう。出来る。出来る”と答え、ポロリポロリとピアノの上に指を滑らせながら曲を作っていくaiko。するとその後、ドスを利かせた恨み節を歌い始めたaikoに客席からは笑いが起こる。なんともつれない1曲を完成させたaiko。ジャジーな雰囲気を放った即興曲「山ちゃん」(aikoによって付けられたタイトル)は、音楽家としての表現力の高さと天性を感じずにいられなかった。

そんなリクリエーションでオーディエンスを楽しませた後は、そのまま弾き語りで「愛だけは」と、久しぶりに歌う伸びやかな歌声に深く深く吸い込まれそうな感覚に陥る「September」を披露し、オーディエンスを魅了した。

aikoという存在そのものが最高のエンタテインメントであることから、ステージにはその歌声と共存するサウンドさえ在れば、その他に何も必要ない。<Love Like Pop>は、オープニングとエンディングにSHOW要素の高い映像が用いられていることから、全体的にとてもショーアップされた印象のステージなのだが、実際のところ、過度なセットがあるわけではなく、ステージの上にあるのは、aikoという存在とaikoの感性を具現化した言葉とサウンドのみ。そこに在るのは“aikoというエンタテインメント”なのである。この日のライヴも、そんな彼女の人間としての奥深さをどこまでもナチュラルに感じられた時間だった。

後半戦は、「好き嫌い」から再びバンド構成で届けられたのだが、「帽子と水着と水平線」では、ステージから限界まで思いっきり手を伸ばし、ファンたちと手を重ねながら歌ったのだった。アカペラでの歌い出しから始まった本編ラスト曲「Loveletter」で完全燃焼したaikoだったが、客席からのaikoを求める声は鳴り止まなかった。もちろん、その声にaikoが応えないわけはない。

アンコールでは、MCでインディーズ時代を振り返り、この先もずっとみんなと歳を取っていきたいと語り、最新シングル曲で映画『聲の形』の主題歌「恋をしたのは」に繋げたのだった。


この曲を届け終えた後、aikoはツアーが終ってしまうことへの寂しさを語った。このツアーは今年最後のツアーであり、このファイナルこそ、2016年最後のライヴであったことから、aikoの胸に込み上げてきた寂しさはひとしおだったのだろう。アンコールラスト曲となった「夢見る隙間」を歌い終えた後、aikoはメンバーと共に手を繋ぎ、マイクレスで想いを伝えた。

「みなさん、本当に今日は最後までありがとうございました! また……ここに居るみなさんに……また会えますように……」

こみ上げてくる涙を必死で堪えながらメッセージを届けたaikoに、オーディエンスも応える。大きな拍手と歓声に贈られてステージを後にしたaikoだったが、オーディエンスは更にaikoの名を呼び続けていたことから、彼女はその声に再び応え、「あたしの向こう」「相合傘」「ジェット」の3曲を届けた。

しかし。この日は、その後エンドロールが流れたにも関わらず、客席からの“aikoコール”は止むことはなかった。客席の電気もつけられた状態の中、aikoは自分の名を全力で呼ぶオーディエンスの声に、たまらずステージ下手から再び走り出て来たのである。このときのaikoの幸せそうな顔といったら。aikoは、オーディエンスの声に応え、「ボーイフレンド」を届け、サビのド頭をオーディエンスと声を重ねて歌い、本当のラスト曲となった「be master of life」では、オーディエンスのクラップに声を乗せて歌い聴かせたのだった。

ちっちゃなaikoのどこに、こんなパワーが潜んでいるのだろう? 彼女に触れる者すべてを幸せに出来る愛が、ちっちゃなaikoのどこに潜んでいるのだろう? きっと彼女はこの先も、変わらぬパワーと愛で、聴く者の背中を押してくれるに違いない。そんな、aikoという最高のエンタテインメントに乾杯。

取材・文◎武市尚子
Photo:岡田貴之


セットリスト<Love Like Pop vol.19>最終公演

9月17日(土)東京・NHKホール
M1.何時何分
M2.プラマイ
M3.どろぼう
M4.milk
M5.信号
M6.遊園地
M7.問題集
M8.微熱
M9.もっと
M10.シャッター
M11.洗面所
M12.愛だけは
M13.September
M14.好き嫌い
M15.冷凍便
M16.帽子と水着と水平線
M17.キスする前に
M18.イジワルな天使よ 世界を笑え!
M19.Loveletter
~アンコール~
M20.蒼い日
M21.恋をしたのは
M22.夏が帰る
M23.夢見る隙間
~ダブルアンコール~
M24.あたしの向こう
M25.相合傘
M26.ジェット
~トリプルアンコール~
M27.ボーイフレンド
M28.be master of life

■リクエストLIVE@NHK aikoの「何歌う?」

放送日:10月1日(土)23:00〜23:58
HP:http://nhk.jp/aikononaniutau


36th Single「恋をしたのは」

2016年9月21日(水)発売
品番:PCCA15036 定価:1,200円(本体)+税
■C/W「夏バテ」「微熱」
All Songs Written & Words by AIKO
※初回限定仕様盤:カラートレイ&8Pブックレット

映画 『聲の形』

9月17日(土) 新宿ピカデリー他 全国ロードショー
キャスト:
 石田将也:入野自由/西宮硝子:早見沙織
 西宮結弦:悠木碧/永束友宏:小野賢章/植野直花:金子有希/佐原みよこ:石川由依/真柴智:豊永利行
 石田将也(小学生):松岡茉優
原作:「聲の形」大今良時(講談社コミックス刊) 
監督:山田尚子 脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン:西屋太志 
美術監督:篠原睦雄 色彩設計:石田奈央美
設定:秋竹斉一 撮影監督:髙尾一也
音響監督:鶴岡陽太 音楽:牛尾憲輔
主題歌:aiko「恋をしたのは」
音楽制作:ポニーキャニオン  アニメーション制作:京都アニメーション 
製作:映画聲の形製作委員会(京都アニメーション/ポニーキャニオン/朝日放送/クオラス/松竹/講談社) 
配給:松竹
(c)大今良時・講談社/映画聲の形製作委員会  
公式サイト:http://koenokatachi-movie.com

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