井口裕香「キャラクターたちが存在を守るために戦い続ける不安、葛藤、そして冷めた感じを聴いてほしい」

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7月にリリースされた2ndアルバム『az you like...』は「井口裕香のA to Z」をコンセプトに、全編から本人の思いが満ち溢れた作品となった。そんな自分発信の濃い作品に続くのは本人も主演を務めるアニメ『Lostorage incited WIXOSS』のオープニングテーマ「Lostorage」。作曲に井内舞子、作詞にKOTOKOを迎え、アニメの内容に添いながらも、アーティストとして次のステップに踏み出す第一弾にふさわしい、新たな井口の魅力を引き出した楽曲だ。

◆井口裕香~画像&映像~

■歌詞の内容は登場人物の誰かの視点で見ることで思いも変わってくるんです
■現実の世界でもがいている人にも共感していただけるポイントがあると思います


――10月26日にリリースの新作「Lostorage」は8月に行われた<Animelo Summer Live 2016刻-TOKI->で初披露された曲ですね。初披露となると、イベントでの盛り上がりも凄かったんじゃないですか?

井口裕香(以下、井口):公式YouTubeでは「MV制作順調!」というメイキング映像の後ろで1コーラスだけすでに流れていたり、アニメのPVのバックでチラッと流れてはいたんですけど、私のファンの中でも見ている人は限られていたんじゃないかという状況だったんです。今年の<アニサマ>では、初披露の曲をやる出演者は私だけだったのでプレッシャーを感じつつの挑戦でした。特にイベントともなると、私のファンだけではなく、他のアーティストさんのファンで<アニサマ>を楽しみに来ている方に向けても初披露になるので、「1コーラス知ってるから、後半も乗れる!」という感じではないんですよね。本当に「初めまして!」から、耳にしたことのない曲を披露というのは、緊張感というか責任感が大きかったです。<アニサマ>に出演したいと思っているアーティストさんも多いですし、私もその中の一人だったので、出演できるだけで嬉しいけど、そこで挑戦的なことをするのは、リリースしている曲を披露する以上にプレッシャーでした。

――特に「Lostorage」はアニメ『Lostorage incited WIXOSS』のオープニングテーマでもあるから、アニメの作品も背負ってる感じがありますしね。

井口:そうなんです。<アニサマ>の時は「これからオンエアするアニメ」ということもあったので。私の歌を聴いて、それが期待になってくれたらいいけど、「なんだかよくわからない歌を聴いてしまった」とならないように。ちゃんと爪痕を残せるように、バトンを次に託せるように、というのは意識しました。


▲「Lostorage」<アーティスト盤>


▲「Lostorage」<アニメ盤>


▲「Lostorage」<通常盤>

――アニメ「Lostorage incited WIXOSS」には井口さんも声優として主演されるんですよね?

井口:はい。カードバトルのアニメではあるんですけど、子供たちが「カードバトルしようぜ!」ってバトルするような感じではなく、もっと登場人物に焦点が当たっていて、その日常の中にカードバトルがあるという感じです。

――高校生活もしっかり描かれていますしね。

井口:そうですね。今回の「Lostorage incited WIXOSS」では、中学生の女の子たちがメインだった前作と違って、主人公は高校生なんですけど、大学生や大人の男性キャラクターもたくさん出てくるんです。人間ドラマみたいなものもポイントになっているかなと思います。

――歌詞はKOTOKOさんが書かれていますが、「カード」というワードも出て来ますし、アニメのストーリーともリンクしていますね。

井口:はい。今作は、カードバトルをして勝たないと記憶を失くしてしまうんですよ。カードバトルをする子たちの手元にはコインが5つあるんですが、一回負けるごとにコインを一つずつ失って、最終的にその5個のコインがなくなると、記憶がすべてなくなって、カードをプレイするときの相棒に自分を乗っ取られてしまう。プレイヤーは自分の存在が失くなってしまわないように戦い続けるというストーリーなんですが、キャラクターたちが「ここにいたい」という気持ち、不安、葛藤、もがいているんだけど、どこかちょっと冷たい感じがKOTOKOさんの歌詞からもすごく出ているんです。でも歌う時はキャラソンにならないようにっていうのを意識しながらレコーディングしました。

――演じているから物語の世界観はよく理解しているけど、キャラソンとしての立ち位置でなく、あくまでオープニング曲としてワクワクさせる役割の曲なんですね。

井口:はい。レコーディングの時期は、アルバム『az you like...』をリリースしてすぐくらいの時だったので、まだアニメも制作途中で、キャストももらっていなかったシナリオを6話まで読ませていただいて、先の展開を知ってから、この歌詞の世界観に納得して、レコーディングに臨んだんです。こういう経験は、今まで主題歌を担当させてもらった中でも初めてのアプローチの仕方でした。

――声優さんとしても関わって、主題歌も担当したということで、さらに深く作品に関わったという感じなんですね。

井口:シナリオを読ませていただいたりする中で、過激なシーンもあったりしたので、アニメではどこまで描かれるんだろう?と自分の中で想像しながらレコーディングしたんです。歌詞は、私が演じる森川千夏、その親友の穂村すず子、どちらの視点からも受け取れるんです。千夏は、成績優秀で運動も得意で、お父さんは会社の役員という家に育っている完璧なプロフィールなんですけど、お父さんの会社が倒産して以来、生活が一変して、バイトで学費を稼ぎながら私立の進学校に通っているんです。キービジュアルでも背を向けて暗い顔をしているので、明らかにこのあと、「何かあるぞ」っていうところを匂わせているので、この歌詞にもあるような、ここから先、もがいてもがいて転がり落ちていく感じをアニメでも楽しんでいただきたいです。

――光と陰を感じるキャラですよね。それは楽曲自体にも出ています。歌詞の中で「fund my real」という言葉がすごく気になって、楽曲のテーマのようにも感じます。すごく耳に残る。

井口:特に千夏の場合は、本当に自分を探しているんですよ。一番、「こんなはずじゃなかったのに」ってもがく展開が待っているので。千夏に起きていることって、極端ではありますが、誰にでも有り得ると思うんですよ。KOTOKOさんの歌詞は、登場人物の誰かの視点で見ることで、思いも変わってくるんです。作品の世界の中にいなくても、現実の世界で「どうしたらいいんだろう?」ってもがいている人にも、背中を押されるのとはまた違いますが、共感していただけるポイントがたくさんあると思います。

――井内舞子さんの楽曲もグイグイ引き込まれますね。

井口:はい。かっこいいですよね。この曲もそうですし、アニメの中の楽曲(劇伴)も井内さんが担当しているんです。だから、主題歌とのリンクも楽しんでいただけると思います。主題歌とサウンドトラックで一つの世界観を作り上げているので。

――7月にリリースされたアルバム『az you like...』は、井口さん自身のことがよりわかる一枚でしたけど、「Lostorage」はアニメ作品というフィルターがありながらも、また違う一面が引き出されたような感じですね。

井口:まさに、私の「A to Z」が詰まったアルバムを出したあとすぐにガラッと違う今までにないクールなものを歌わせてもらえたのは嬉しかったです。挑戦という思いも自分の中にはあります。ファンの皆さんもそうだし、作品を好きな方も作品を知らない方も、主演だからというだけではなくて、この曲を私が歌う意味がちゃんとなくてはいけないなと思って、自分の中でももがいたんです。この曲の歌詞じゃないですけど、「どうしたらいいかな」っていう葛藤を自分の中でたくさんしながら。実際に、作曲の井内さんとお会いして、レコーディングの前にキーチェックとどんな風に歌うかというプリプロ作業をした時にも話し合ったんです。そういう作業をしたあとにレコーディングに臨むというのは、アルバムを経たからできたことだったのかなと思います。

――なるほど。井口さんのかっこいい部分が出ましたね。

井口:KOTOKOさんに詩を書いてもらうのは1stシングル「Shining Star-☆-LOVE Letter」以来なんですが、井内さんの曲を歌ったのは初めて。でも、このお二方は、私が声優として主演させていただいた『とある魔術の禁書目録』というアニメでも音楽を担当されていて。そういう縁のある方々だったので、『az you like...』というアルバムを出したあとの、次の私を見てもらうタイミングで初心に戻るような感覚にもなりました。次のステップに向かうところで、お芝居や歌で関われるチャンスをもらえたのは大きいですね。だから、レコーディングにもすごく気合が入ったんですけど、結果、今まで一番早かったんですよ。逆に不安になるくらい(笑)。

――楽曲も速いし、起伏に富んだメロディだったにもかかわらず。

井口:はい。途中で転調もありますし。だから間に休憩も入れずに勢いで一気に録っていきました。

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