【総括レポ】<VISUAL JAPAN SUMMIT>、あの狂乱3DAYSの回想録「もう無敵である」

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10月14日から16日の3日間にわたって、幕張メッセで行なわれた<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powerd by Rakuten>。ヴィジュアル系バンドを集めたフェスだが、27年前の目黒鹿鳴館で行なわれた<第2回 エクスタシー・サミット>から観てきた者としては、これは大規模な<第8回目 エクスタシー・サミット>と位置づけたいフェスだった。嬉しいぐらい、いちいちエクスタシー魂を感じさせる発言やステージパフォーマンスも目立った。実は昔の<エクスタシー・サミット>と同じように、楽屋裏の密着取材をすべく、開催中も連日、オファーを出しまくっていたが、楽屋裏でも多忙なミュージシャン達。残念、願い叶わず。ということで客席側から観たあの狂乱の3日間の回想録を、エクスタシー視線でお届けしたい。

◆<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016> 画像

ご存知の方も多いだろう。もともと初日の14日は“24年ぶりのエクスタシー・サミット”という触れ込みで開催されたことを。その24年前というのは、1992年10月に大阪城ホールと日本武道館で<第7回 エクスタシー・サミット>が行なわれた。ちなみにバンド名がX JAPANになる直前の時期だ。当時を知らない方もいるだろうし、内容を忘れている方もいると思う。ここで明らかにしておきたいのは、意外なことに24年前、Xは<エクスタシー・サミット>に出てなかったこと。


大阪城ホールのときにはYOSHIKIはまだLAで『DAHLIA』のレコーディング中、国際電話で声だけの出演になった。翌日に緊急帰国して武道館のステージには登場したが、Xとしてのライヴはやっぱり行なっていない。その代わりと言うには豪華で驚きの連続だったが、その2会場のライヴにてXのメンバーは様々なバンドに飛び入り。武道館のラストを締めくくったのは、出演バンドが総登場の“無敵バンド”。が、そのひとつ前にステージを占拠したバンドもまた凄かった。

その名を“サイレントいやらし〜ず”という。バンド名はふざけている。LADIES ROOMのSEX GEORGEの発案でXのナンバー「SILENT JEALOUSY」を元に名付けられた。GEORGE、あのときも今もセンス最高である。そしてメンツもまた最高。なにしろX、LUNA SEA、東京ヤンキース、ZI:KILLのメンバーら総勢11人による、エクスタシー軍団が集ったXのコピーバンドである。プレイしたのは、未だにキラーチューンのひとつとして有名な「X」。ギターソロのときには、HIDE、PATA、LUNA SEAのSUGIZO、ヤンキースのNORI、そしてギタリスト=YOSHIKIが横並びになって決めるという、強烈かつ豪華な絵面&プレイ。これには野郎どもは興奮でいきり立ち、淑女達もいろいろとツユダク。男女ともビショビショ。さすが、サイレントいやらし〜ずと名乗ることだけはある。<エクスタシー・サミット>のクライマックスのひとつでもあった。



その24年後、これから始まる3日間のオープニングをド派手に飾ったのは、サイレントいやらし〜ずの遺伝子を受け継ぐXの究極のコピーバンド。その名はX-SUGINAMIだ。JAPANではなく、SUGINAMI。しかもメンバーの大半は、縁もゆかりもない杉並。ヴォーカルを務めるNoGoDの団長、杉並区に住んだこともないだろがッ。そのふざけたバンド名は、サイレントいやらし〜ず譲りか。そこはともかく、中身は本物志向だった。X JAPANではなくXにこだわったメンバー構成とヘアスタイルやコスチュームに、ファンはまず感涙。で、ステージが始まれば、あの時、あの感じ、あの興奮を、リアルなまでに伝えてくれるX-SUGINAMI。彼らをパロディとかいうふざけた輩もいるが、X-SUGINAMIは1ミリたりともふざけていない真っ正直なXマニアだ。プレイ中の表情やパフォーマンスも、どれだけ好きなのかってのが丸分かり。Xマニアの記憶の奥底をかき乱し、覚醒させるライヴだ。



こうして金曜日の朝っぱらからエクスタシー魂を思いっきり感じながら、このフェスはスタート。若手バンドが次々にステージを繰り広げていった午前中、あのBEASTも登場した。彼らはYOSHIKIのプロデュースで2000年にデビューしたラウドバンドだ。解散して10年以上経っているが、今年、再結成したという。メンバー全員、タトゥの数も思いっきり増え、当時からあったワルのムードに今は風格さえ漂わせているのも年季が入った証拠か。しかし、こういう近寄りがたいチンピラの匂いこそ、初期のエクスタシーである。BEASTはその見た目にふさわしい極悪な音をぶちまけ、メンバーはたびたび不敵な笑みも浮かべる。客の反応や盛り上がりなど気にせず、爆音を鳴らし続けるという傍若無人ぶり。



午後に入ると、かまいたちが登場。彼らは去年、一夜限りの再結成ライヴを行なって以降、再び休止状態にあったが、なんと、このライヴのために再び復活。なにしろKEN-chanは<第3回 エクスタシー・サミット>の無敵バンドのドラマーだ。この場にいなきゃいけない男でもある。しかし出てきて驚いたのは、あの当時そのままのピンクのツインテールに、タータンチェック柄のミニスカート。さすが、ヴィジュアル界における元祖女形。よく見りゃ、ギターを弾くのは元GARGOYLEの屍忌蛇じゃないか。一気に時間は20数年前にさかのぼったような感覚だ。昔はバンドサウンドも、彼らのキャッチフレーズをそのまま引用するが、はちゃめちゃ狂だった。だが今は荒っぽいパンクではなく、ハードコアな重みとタイトさも兼ね備え、屍忌蛇の弾く流麗なソロフレーズが新たな魅力となって輝く。来年には再びライヴも行なうという。



さらに時間がさかのぼる錯覚に陥ったのは、14時を回ったころ。1988年9月に大阪で行なわれた記念すべき初の<エクスタシー・サミット>にも出演した、あのBY-SEXUALの登場である。しかも当時と同じような派手な色のヘアースタイル。当時のメンバーが集まってステージに立つのは5年ぶりというが、キレのあるビートに衰えは感じさせない。しかも楽屋で話が盛り上がった末のことなのか、「BE FREE」ではGLAYのHISASHIがギターで飛び入り参加。こういうセッションやサプライズ、<エクスタシー・サミット>では日常の出来事だったりした。それに、かまいたちもそうだが、YOSHIKIから声が掛かれば、是非やろうと、この日のために集まるという男気っぷり。そこにもエクスタシー魂を感じてしまうのだ。

かまいたちやBY-SEXUALはエクスタシー・レコードのバンドではなかったものの、あの当時はレーベルの垣根なんてまるでなかった。むしろお互いに盛り上がっていこうぜ、と同じバンドマンとしての共通意識もつながりも強かった。バンド同士の交流も、居酒屋から出禁を食らったり苦情が来るぐらい盛んだった。だから<エクスタシー・サミット>を行なうとなったら、当時から楽屋はド派手なミュージシャンの巣窟であり宴会場。そこに24年前、顔を出していたのはGARGOYLEだったりする。



BY-SEXUALの直後、別ステージでGARGOYLEが咆哮した。ヴォーカルKIBAのロングシャウトから1曲目に突入。本日はいつにも増して攻めモードであり、選曲もスラッシーなものばかり。さすが、分かってらっしゃる、こういう場に何が必要かってことを。「来年で30周年を迎えます。歴史が長いバンドも今日はいますが、唯一違うのは、活動停止をしたことがない。好きなことをやりたいようにやっている。…オメーら、やれんのかよ!」と他のバンドもオーディエンスも煽るKIBA。完全無敵モードだ。いや、分かってらっしゃる。



16時半を回ったころ、各ステージをいよいよエクスタシー軍団が占拠する。そのトップを務めたのはエクスタシーの若手(と、ここでは敢えて紹介したい)バンドであるGLAYだ。ようやく<エクスタシー・サミット>にも出れると思ったら、その後はサミットが行われることのないまま24年も経ってしまい、叶わぬ夢になっていたステージ。それが今、現実のものになったのである。メンバーの輝く笑顔からは万感の思いも伝わってくる。



また途中、若き日の話も。HIDEがいなかったら今のGLAYはなかったという。というのもHIDEがGLAYの音源を入手して気に入ったことから、“これいいから聴いてみてよ”とYOSHIKIにも薦めて、エクスタシー・レコードとのつながりが生まれたからだ。そういえばHIDEは、肩書こそなかったが、エクスタシー・レコードの新規バンド開拓部長的な役割も担っていたものだ。Xがデビューして忙しくなったときでも時間を作ってはライヴハウスに行ったり、気になる若手バンドのデモ音源もチェックしていたほど。だからHIDEを慕う若手ミュージシャンももの凄く多かった。いや、亡くなった今でも慕われているHIDEである。

GLAYはHIDEへの感謝をたっぷり込めて、HIDEが作詞作曲したXの「Joker」をプレイ。ソロパートではHISASHIとTAKUROが向い合ってフレーズを決め、TERUは「HIDEさーん!」と愛のある叫び声を。ファンの盛り上がりっぷりを前に、JIROはクシャクシャの笑顔だ。



若手バンドの熱演ぶりに、風格で答えたのはTOKYO YANKEES。エクスタシー魂を持つ者としては、英語じゃなくて日本語表記の東京ヤンキース、もしくは24年前の<エクスタシー・サミット>でHIDEやYOSHIKIも揃いの特攻服で決めたときに背中に刺繍されていた“東京 弥無危異寿”と書きたい。ただしHIDEは“横須賀 弥無危異寿”だったが。ともかくエクスタシー軍団の特攻隊長がこのバンドである。ヴォーカルのUMEは他界し、ベースのAMIちゃんも脱退したが、出てくる音はまごうことなきヤンキースの極悪ロックン・ロールだ。何らブレはない。その潔さもまた彼らの魅力にもなっている。ホントなら過去にツアーにも参加し、5人目のメンバーと呼ばれたPATAが飛び入りしても良さそうだったが、この日は叶わず。恐らくジャイアンツの永久名誉監督のごとく楽屋で見守っていたんだろう。

開演予定を過ぎ、ハンドクラップの音だけが広がる会場。そんなときである、前のほうに陣取っていたファンは聞き取れただろう。メンバーの気合入れの掛け声が。一気にざわつく会場。それが大歓声に変わったのはその3分後だった。そして数十秒後には大絶叫へと変わる。


まさに、24年前のあの続き、いや、あのときの再演か。黒服限定ギグなどブラックにこだわってきたLUNA SEAが、初めて全員、白い衣装に身を包み、絶大なインパクトを放った24年前の<エクスタシー・サミット>の武道館公演。それが思わずフラッシュバックしたのは、今日、彼らは真っ白な衣装で揃えていたからだ。客席から巻き起こる尋常ではない歓声、オーディエンスもまたエクスタシー魂の持ち主ばかりである。



「FATE」から始まったステージは、あのときのオープニングだった「Dejavu」を2曲目に叩きつける。エクスタシーから発表したアルバム『LUNA SEA』を軸にした選曲に愛を感じるばかり。

「<エクスタシー・サミット>が帰ってきました。<VISUAL JAPAN SUMMIT>だけど、俺達、LUNA SEAにとったら<エクスタシー・サミット>なんだよね。ヒリヒリしてて、出るときはいつも覚悟してた。今夜はハジけちゃうんだけどね。LUNA SEAが結成から今夜は1万日」とRYUICHI。記念すべき事が重なった貴重な一夜だ。それにふさわしい「PRECIOUS…」へとつながった。



またヴィジュアル系と一括りに呼ばれながら、個性的なバンドが多かったともいうRYUICHI。エクスタシー・レコード自体がその象徴たるレーベルだった。そして今回もいろいろなバンドが集っていることに触れて「集まると血がたぎるっていうの? ゾクゾクするもんがあるんだよね」と平常心じゃいられない心境も吐露。そして、その熱い気持ちを1曲1曲全てに込めるLUNA SEA。高い演奏力とバンド力、未来も見据えた意気込みの強さ、やはり絶大なインパクトを彼らはこのステージでも突きつけた。

◆レポート(2)初日後半へ
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