ディープ・パープル・ファン必携、またも新たな“宝物”

近年、ディープ・パープル／レインボーファンにとって“お宝”と言うべき商品を次々に発売しているワードレコーズから、何の前触れもなく凄い商品が発売されることが決まって狂喜している。あの『CALIFORNIA JAM '74』が生まれ変わった“新商品”として12月2日に届けられることになったのである。

◆『カリフォルニア・ジャム 1974』画像

リッチー・ブラックモア（G）、ジョン・ロード（Key）、イアン・ペイス（Dr）、デイヴィッド・カヴァデール（Vo）、グレン・ヒューズ（B、Vo）というラインナップの第3期ディープ・パープルは1974年4月6日、米国カリフォルニア州オンタリオ・スピードウェイで開催された野外フェスティヴァル『CALIFORNIA JAM』に出演でELPと共にダブル・ヘッドライナーを務めた。他にもBLACK SABBATHやEAGLES、BLACK OAK ARKANSAS等が出演したこのフェスは約20万人を動員している。

ディープ・パープルの“黄金時代”はイアン・ギラン（Vo）在籍時の第2期だというのが通説だが、皮肉なことにギラン在籍末期にライヴ盤『MADE IN JAPAN』が大ヒットしたことにより、業界的な位置づけで言えば第3期ディープ・パープルは第2期よりもずっとビッグなバンドとなっていた。だからこそ『CALIFORNIA JAM』で彼らはヘッドライナーだったのである。（出演順で言えばトリを務めたのはELPだが、それは「最後に出ると深夜になるため」で、ディープ・パープルは日没に近い午後7時半の出演を自ら選択したのだった）。

この時のディープ・パープルのステージは、リッチー・ブラックモアがギターをTVカメラに叩きつけて壊したうえに機材に火を付け、大爆発が起こった後も破壊された機材などをどんどん観客席に投げ込むなどして大暴れしたことで有名だが、それを抜きにしても“歴史的な名演”と言える。2人の素晴らしいヴォーカリストを迎えた第3期ディープ・パープルがいかに凄いバンドだったかが凝縮されたパフォーマンスだ。彼ら自身にとってもキャリアのハイライトのひとつであり、特にグレン・ヒューズは今でもよく話題にしている。

この『CALIFORNIA JAM』は米国『ABC』TVネットワークがプロモーションを担当し、総てのショウをフィルムに収めた（ディープ・パープルは出演料の4万5,000ポンドの他に『ABC』から放映権料として9万ポンドを得ている）。その米国で『ABC』が放映したライヴ映像をベースに過去ディープ・パープルの『CALIFORNIA JAM』におけるパフォーマンスは何回かVHS／LD／DVD等で商品化されている。最も新しいのはバップが2006年にDVD化したもので、これは従来のビデオでカットされていた「Lay Down Stay Down」を加え“完全版”と謳っていた。それは確かに僕達にとっては嬉しい商品だったが、当時としては充分な画像ではあったものの、現在のデジタルテレビで観ると正直言ってかなり粗く見えてしまう。

実はこのショウの模様を収録した映像は『ABC』版の他に英国『BBC』版も存在している。今回、ワードレコーズから発売されるものは、『ABC』版をベースにしながら、『BBC』版の別アングルの映像やバップのDVDのボーナス映像だったもの、さらに未発表のアングルの映像も加えて新たに編集されたもの。カット違いを楽しむために画面が2分割されているシーンも多々あり、それはファンにとって実に興味深いものとなっている。さらに制作チームは現在のデジタルテレビでも充分鮮明に見えるように総ての素材を2年掛けてレストア（修復）しているし、音声も勿論リマスターされて高品質なものとなった。結果的に3年越しの長期プロジェクトになった今回の『CALIFORNIA JAM』のDVD/Blu-ray発売が、単なる復刻でもリマスターでもなく、れっきとした新製品たる所以だ。

画像・音質が格段にクリアになっただけでなく、先述したように画面を2分割するなどの手法を用いた編集はファン心理をよくわかっていて嬉しい。特にリッチー・ブラックモアのファンにとっては「ここで別アングルからのリッチーも観られるとは！」という楽しみに満ちた商品となっている。まさか突然こういう商品が出てくるとは思わなかった。

文：広瀬和生（BURRN！編集長）


◆ワードレコーズ・ダイレクト『カリフォルニア・ジャム 1974』2016年リマスター&レストア版サイト