【インタビュー】ザ・ストロークスのニック、ソロ・プロジェクトCRXで「すべてがすごくいい感じ」

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2000年代初頭に大きなムーヴメントとなった、ロックンロール(あるいはガレージ・ロック)・リヴァイヴァルの火付け役としての鮮烈なデビューから、米ニューヨークが生んだカリスマ・バンドとして熱狂的な人気を誇ってきたザ・ストロークス。その音楽面での要であるギター・サウンドを担うニック・ヴァレンシが、アルバム『ニュー・スキン』で自身初のソロ・プロジェクトを始動させた。その名はCRX。ニックが現在住んでいるロサンゼルスの音楽仲間で結成された5人組バンドだ。本作でニックは自身のソングライターとして、またシンガーとしての才能をものの見事に花開かせている。


そして同時に改めて伝えているのは、ザ・ストロークスのサウンドにおいて、彼のギターがどれほど重要な役割を果たしていたのか、という事実だ。このアルバムで、ザ・ストロークスの次なる新作をどこまで占えるかはさておき、ファンはマストでチェックの1枚と言えるだろう。本人に話を聞いたのだが、実にナイスな男だった。

──ザ・ストロークスで唯一、ソロ/サイド・プロジェクトを行っていなかったあなたが、CRXを始動させたのには何か動機やきっかけがあったのですか?

ニック・ヴァレンシ:それは、僕がもっと頻繁にステージに立ちたいと思っていたからなんだ。ストロークスのショウは年に数回ぐらいで、ツアーはほとんどやっていないから、もっとパフォーマンスすることを渇望するようになっていた。また同時に、ストロークスのショウの規模と、自分自身とのバランスを取りたいと思ってもいたんだ。ストロークスの場合、たいてい大きなフェスティヴァルで何万人もの観客がいるからね。それで、より小さくてシンプルな新しいことをやるっていう考えに、ワクワクしたんだよ。


──このバンドで鳴らしたいサウンドを、どのようにイメージしていたのですか?

ニック・ヴァレンシ:このプロジェクト用に、最初に書いたのが「アンナチュラル」だった。速くて、アグレッシヴでヘヴィな曲で、ヘヴィ・メタルじゃないけど、けっこう近いところまでいっているよ(笑)。僕はそれが気に入った。ストロークスとは違うサウンドだっていうことがね。その次に書いたのも同様の曲だったから、これが僕のサウンドっていうことになるかもって思った。でも「ウェイズ・トゥ・フェイク・イット」を書いた時、違う感触を初めて感じて、しばらく放っておいたんだ。そしたらその間に、ポップな曲が数曲できた。ポップと言っても、ジャスティン・ビーバーやセレーナ・ゴメスがやっているポップじゃないよ(笑)。エルヴィス・コステロとか、カーズとか、チープ・トリックとか、パワー・ポップとニュー・ウェイヴの混合みたいな音楽。僕はそういう音楽も大好きだから、すごく気に入ったんだけど、ヘヴィな曲とフィットするかどうかわからなかった。そしたらジョシュ・オムが、「さまざまなスタイルや感情を表現することが、素晴らしいアルバムを生むんだよ」って断言してくれたんだ。彼は、僕のギターとヴォーカルがアルバムをつなぎ合わせているから大丈夫だって保証してくれた。それが僕なんだし、そこに僕の個性が一番現れていると自分でも思うんだよね。

ザ・ストロークスで作曲に参加したことがあるニックだが、CRXでは作曲はもちろんのこと、作詞も全面的に手がけ、自ら歌っている。その楽曲の完成度、そして歌唱力と確固たる個性を併せ持ったヴォーカルに、多くのロックファンが魅了されることだろう。

──完成した『ニュー・スキン』は、あなたのソングライター、そしてシンガーとしての高いポテンシャルを伝えるアルバムだと思います。

ニック・ヴァレンシ:そんなに誉めてもらえて嬉しいよ。歌うことに関しては抵抗感があったんだ。なぜなら、バンドのフロントマンになることに惹かれなかったから。子供のころ、僕はガンズ・アンド・ローゼズが大好きだったんだけど、アクセル・ローズよりもスラッシュとイジーに感情移入していた。大人になってからも、バンドを観る度に自分と重ね合わせるのはギタリストだったんだ。自分が歌えるのはわかっていたけど、フロントマンになることに興味がなかったんだよ。だから最初は、僕の曲を歌えるシンガーを探していた。でも、自分で歌えば早く目的が達成できる気がしたから、歌うことにしたんだ。

──ソングライティングも全面的に手がけているようですが、歌詞もすべてあなたが書いたんですか?


ニック・ヴァレンシ:大半はね。バンドのメンバーと一緒に書いた曲もあるよ。リッチー(Key、G)が「ウェイズ・トゥ・フェイク・イット」、ダリアン(G)は「オン・エッジ」と「スロー・ダウン」を手伝ってくれた。あともうひとり、クレジットはされていないんだけど、いろいろと意見を交換して助けになってくれた人がいた。ザ・ストロークスのドラマー、ファブ・モレッティだよ。彼は親友なんだ。

ファルセットを駆使したナンバーや、レゲエ/ダブにアプローチした曲まで、作風は自由にしてヴァラエティ豊か。その多面的な魅力を引き出したのは、プロデューサーのジョシュ・オムであり、盟友同士の「挑戦」が大きく結実した。

──今回、ジョシュ・オムを起用した理由は?

ニック・ヴァレンシ:僕は昔から、彼の音楽が大好きだったんだ。カイアスのころからね。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジも、イーグルス・オブ・デス・メタルもずっと大好きだった。彼も長年の友人でね。実は、彼に意見をもらいたかったことのひとつが「どのプロデューサーと組むべきだと思うか」っていうことだった(笑)。でも、僕の曲をすごく気に入ってくれて、話をしているうちに彼に頼むのが自然に思えてきたんだよ。彼はプロデューサーでもあって、アークティック・モンキーズとか、たくさんの作品をプロデュースしているからね。だから、すごく自然なことだったんだ。最初にジョシュから言われたのが、「クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジみたいなサウンドにしてくれとは言わないでくれよ」だった。彼もまた、自分に挑戦したかったんだよね。


──自身もフロントマンという立場になってみて、ザ・ストロークスのジュリアンを見直した、ということはありますか?

ニック・ヴァレンシ:うん、それはすごくある。シンガーをやるって大変なことだよ。簡単な役割じゃない。僕はそれを今、経験し始めている。だから、ジュリアンの立場をより理解できるようになったし、世界中のフロントマンたちを、前より深く尊敬しているよ。


──ザ・ストロークスは今、アルバムの制作中なんですか?

ニック・ヴァレンシ:うん、曲作りをしている最中だよ。

──CRXを始めたあなたへ、ザ・ストロークスのメンバーがかけてくれた言葉などがあったら教えてください。

ニック・ヴァレンシ:みんなすごく応援してくれていて、どんなに感謝しているか言葉にできないくらいだよ。ファブは僕らの音楽をすごく気に入ってくれているし、ニコライは数週間前のニューヨークでのショウを観に来てくれた。すべてがすごくいい感じだよ。僕は彼らが大好きなんだ。

文:鈴木宏和


CRXファースト・アルバム『ニュー・スキン/New Skin』

SICP-5077 国内盤CD特典:初回仕様のみジャケ・ステッカー封入
1.Ways To Fake It / ウェイズ・トゥ・フェイク・イット
2.Broken Bones / ブロークン・ボーンズ
3.Give It Up / ギヴ・イット・アップ
4.Anything / エニシング https://sonymusicjapan.lnk.to/CRXJP
5.Walls / ウォールズ https://sonymusicjapan.lnk.to/CRXJP
6.Slow Down / スロー・ダウン
7.On Edge / オン・エッジ
8.Unnatural / アンナチュラル
9.One Track Mind / ワン・トラック・マインド
10.Monkey Machine / モンキー・マシーン
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