泣き歌の貴公子・林部智史、『とくダネ！』で「あいたい」を生歌披露

林部智史が本日11月3日（木）、フジテレビ系『とくダネ！』に出演し、今年2月にリリースされた「あいたい」を披露した。

◆林部智史 ワンマンライブ画像

林部智史は番組内で「聴く人の心を打つ“泣き歌の貴公子”」として紹介され、司会の小倉智昭も林部の歌を聴き「うるっときました」とコメント。それまで林部のことや「あいたい」という歌の存在を知らなかった視聴者もSNSなどで「感激した」などの感想を述べていた。

林部智史の持ち味はクリスタルボイスと圧倒的な歌唱力。だがさすがに生放送で生歌を披露するということには特別な緊張感があった模様で、歌い終わったあとはほっとした表情を見せ、「素朴な好青年」といった佇まいに。実力派シンガーとしての林部智史とのギャップも印象的な番組出演となった。

番組出演によって話題となった今、改めて林部智史についての経歴についてもおさらいしておきたい。下記に音楽ライターによる林部智史のコラムを掲載しておく。

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林部智史が“歌手デビュー”という夢を抱き、その夢を手にするまでの人生は、決して順風満帆ではなかった。高校卒業後、看護の道を目指した彼はある出来事が大きなきっかけとなり心のバランスを失い、挫折。

その後、引きこもり生活を送っていた彼は実姉の助言もあって日本一周の一人旅を始めるのだが、各地を転々とし住み込みで働く日々の中で、ある人から「その声で歌手にならないのはおかしい」と言われ、歌手を目指す決意をしたのだという。

その夢を掴むため、彼は新聞奨学金制度を利用し、EXILE・ATSUSHIらを輩出した「ESPミュージカルアカデミー」のヴォーカルコースに通うのだが、首席で卒業するほどの実力を持っているにも関わらず、どこからも声がかからないという挫折を味わい、歌手への夢を諦めるしかない状況に陥った。

しかしテレビ東京系『THE カラオケ★バトル』に出場したことで、その圧倒的な歌唱力が多くの人たちに評価されるようになるのだが、何度もこの番組に出場するも勝てない。それゆえに「無冠の帝王」「勝てない男」という不名誉な“あだ名”を付けられてしまうことになる。

そうして初出場から5年もの月日を経て、2015年10月に放送された年間チャンピオン決定戦で番組史上初となる予選・決勝共に連続100点をたたき出し、2015年年間チャンピオンを獲得。その功績が大きなきっかけとなり、彼は2016年2月にシングル「あいたい」で念願の歌手デビューをしたのだった。

現在、林部智史は28歳。高校卒業から10年の月日の中には、彼がいつどこですべてを放棄してもいいような厳しい現実と辛い出来事がいくつもあった。けれど、ある時は実姉の助言だったり、ある時は旅先で出逢った人の言葉であったりと、多くの人が彼を優しくすくい上げてくれた。

そんな経験をしてきた彼だからこそ表現できる歌があり、今、「あいたい」という歌で、彼はこの歌を受け止めてくれた人たちの切なる願いや大切な思いをすくい上げているのだ。

なぜ「あいたい」がこんなにも多くの人の感情を揺さぶってしまうのか。それは林部智史が「あいたい」の中に描かれた主人公の心情や人生を丁寧に紡ぎ、この歌を自分の手のひらで優しくそっと包みこむようにして聴き手の日々に差し出しているからだろう。

彼の歌声は会いたくても会えなくなってしまった人と共にいた大切な日々を静かに蘇らせ、その人が自分の人生の中に存在していた事実を記憶の底から優しく包みながらすくい上げてくれる。「あいたい」の詞を手がけた林部は「きっと誰にでも、ひとりひとりに、会いたい人や会えなくなった人がいる。その会いたい人や会いたくても会えなくなってしまった人を思い出せるように」という思いを込めて詞を書いたそうだ。

“会いたい“という言葉はシンプルだが、そこにどれほどの思いや傷や深い愛情が刻まれているのかは、その本人にしかわからない。けれど、林部の繊細でありながらも芯を持ったまっすぐな声で何度も繰り返される“あいたい”という言葉は、この歌を聴いた人たちのそれぞれの“会いたい”という切なる願い、心の奥底にしまいこんでいた思いにまっすぐに届き、自分たちが歩いてきた人生の中にあった様々な出会いや別れと重なり合い、思わず感情を揺さぶられてしまって、“泣けて”きてしまうんだと思う。

林部智史自身のこれまでの人生にも“あいたい”と思う人が何人もいるだろう。彼にとってもこの歌は自分の心の奥底にしまった思いを浮上させることのできた歌だ。そして、「あいたい」は歌手デビューという夢を叶えたその先を生きていく彼の日々に光を射してくれた歌になった。

文◎松浦靖恵
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◆林部智史 オフィシャルサイト