【インタビュー】LIV MOON「自分が今まで演じていたキャラクターがフッと憑依してきてイメージが広がる瞬間があった」

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LIV MOON名義としては4年ぶりとなるオリジナル作品『R.E.D』が11月9日にリリースされる。アルバム・タイトルが意味するキーワードはResolution(決意)、Radiant(光を放つ)、Evolution(進化)、Dynamic、Dramatic。ヴォーカルのAKANE LIVは、この4年の間に数々の舞台に出演し、ソロ名義の作品『LIV』もリリース。蓄積してきた経験値をすべて今作に注ぎ込み、まさにキーワードの通り、進化を遂げた姿を今作で披露している。

◆LIV MOON~画像~

■赤い殺伐とした森のようなところに人間なのかよくわからない女性がいて
■表情があるようなないようミステリアスな感じで立っているというイメージがあった


――LIV MOONのオリジナルとしては4年振りの作品となりますね。前作『THE END OF THE BEGINING』は北欧神話をコンセプトにしていましたが、今作『R.E.D』には旧約聖書(「LOST PARADISE」)やギリシャ神話(「ICARUS」「PANDORA」)のモチーフが出てくるんですね。パラレルワールドとして繋がっているような感じですが。

AKANE LIV:最近二作品くらいはあらかじめコンセプトを決めてから制作に入っていました。でも、今回はコンセプトに縛られずに作りたいと思ったんです。最初の1~2枚目のLIV MOONのアルバムは、何かコンセプトを持っていたわけではなく、面白い楽曲をピックアップしてアルバムに入れていたんです。その時と同じように、どういうものが作曲家の方々から出てくるのかが楽しみだったから。今回は、収録曲が6曲って決まっていたので、あまりコンセプトに縛られてしまうよりも、キャッチーな曲と、ハチャメチャで好き嫌いが別れても、「LIV MOONならでは」っていうものを作ってほしいと思ったんです。だから、西脇(辰弥)さんにも「はっちゃけてください」とお願いして。「LOST PARADISE」も魑魅魍魎のイメージで、好き放題やってもらって。

――はい、魑魅魍魎の感じがしますね。

AKANE LIV:今作は全部自分で歌詞を書こうと思っていたんです。いつもは曲を聴いてから歌詞を書くんですけど、「LOST PARADISE」だけは、曲をいただく3日前くらいにスケッチ的なものだけでも書いておこうと思って、「LOST PARADISE」をテーマに書いていたんです。曲が上がって来たら、ルシファーが「お前はもう天界から追放だ」という告知を受けて、天使たちが周りにワァ~っと騒いでいるようなイメージとリンクしたんですよ。「ICARUS」は2曲目に出来上がったんですけど、曲を聴いていたら、羽根を背負った人が羽ばたいていくイメージが浮かんで。「PANDORA」にしても、旧約聖書やギリシャ神話のモチーフが出て来たのはたまたまなんです。何か導かれたんでしょうね(笑)。

――なるほど。1曲目から6曲目までの流れの中で天上界から地上に降りてくるイメージですよね。

AKANE LIV:そうなんです。ずっと天上界が続いていたので(笑)。サウンド的には、コンスタントにやっているアコースティックライブの中で得たものも今作には生きています。アコースティックライブでは、チェロとピアノ、ピアノとヴァイオリンでLIV MOONの曲をやっているんですが、西脇さんがクロマチックハーモニカを演奏しているんです。実は、西脇さんって、日本の中でも指折りのクロマチックハーモニカ奏者として、いろんな方のレコーディングに呼ばれて吹くくらいの腕前。これはLIV MOONの曲でも使いたいと。シンフォニックメタルって、海外では、ヴァイオリンとか笛とかでノスタルジックなテイストを入れているバンドもあるから、私たちも「クロマチックハーモニカを入れてみようっていう話になったんです。


――それは「EYES OF MARIONETTE」?

AKANE LIV:はい。この曲だけは、西脇さんから「廃墟に壊れた人形がいる」というキーワードをもらって、「面白い!」と思って1日で歌詞を書いたんです。その歌詞の間にあるクロマチックハーモニカの音色が怖さと不思議な世界観になっていて。そんな感じで今作は、何かにとらわれることなく、いろいろ試した作品です。「LOST PARADISE」なんて、スキャットが入るまでに1分半弱もあるんです。ヴォーカルがここまで出てこないものが1曲目なんてNOと言われると思うんです。それで西脇さんが「今ならこういう面白いこともできるんじゃない?」って。単にインストではなくて。ルシファーが告知を受けるところももう少しセリフを入れてみようかとか、いろんなアイデアが出ていたんです。

――楽曲の世界観もさまざまですしね。

AKANE LIV:今回は私が全部歌詞を書くということで、自分がこの4年間、舞台でやってきた世界観にも反映したいと思っていたので、「PANDORA」とか「EYES OF MARIONETTE」なんかはかなりシアトリカル。だから、「LOST PARADISE」にあまりセリフを入れすぎると、やりすぎかなと。それよりも他のメンバーの楽器の音がかなり物語っていて面白いので、セリフを削ったんです。歌詞も日本語と英語で2パターン書いたんですけど、結局、英語の方がいいねっていうことで。

――へぇ~。曲に呼ばれている言語も試したんですね。

AKANE LIV:はい。あまり説明しすぎちゃうと、音が多いのに、意味がすぐにわかってしまう日本語だとつまらなかったんですよ。低音のエフェクトをかけたのも同じ理由です。「ルシファー」という言葉がなんとなく耳に入ってくれば、あとは考えるより音楽の中で「何これ!わけがわかんない!」ってなってほしいなと思って。聴いていても何が出てくるかわからない、闇鍋的な曲なんですよね。

――「LOST PARADISE」ではいろんな声が出てきますが、もちろん、この声はすべてAKANE LIVさんですよね?

AKANE LIV:もちろん。2オクターブの違いで歌い分けるということをやっているんですけど、意外と普通に歌えてしまうんですよね(笑)。そうすると転移した悪魔との違いがあまり出なくて。かと言って3オクターブまで広げてしまうとわけが分からなくなってしまう。今までは自分の声を加工するっていうことはあまりなかったんですけど、これは舵を切って、思い切った方向に行った方がいいと思って、これも色々試したんです。西脇さんには申し訳ないくらい、ミックスも何度も試しました。

――「ICARUS」の歌詞の中には、タイトルの「R.E.D」とも通じるような「紅蓮」という言葉も出て来ますね。

AKANE LIV:ライヴでみんながノレる曲を増やしたいなと思って、一緒にノレるっていうことで作ってもらったのが「ICARUS」なんですが、最初に聴いた時にすぐ出て来た言葉が「紅蓮」なんです。曲を聴いた瞬間からこの歌詞のイメージが目に浮かびすぎて、まずサビのメロディーが出て来てしまって、Aメロ、Bメロを書くのに困ったんですよ(笑)。

――タイトルもそうですが、赤のイメージはどの曲にも入ってきますよね。

AKANE LIV:今回、コンセプトは決めなかったんですけど、どういうアルバムにしようかなと思った時に、赤い殺伐とした森のようなところに人間なのかよくわからない女性がいて、表情があるようなないようミステリアスな感じで立っているというイメージがあったんです。ジャケットでもちょっとつかみどころのない表情のものを選んでいるんです。パッと見た時に誰かわからないって言われたんですけど、それくらいいつもと違うのものにできたら面白いかなと思って。そういうイメージの中から楽曲も作っていただいたんですが、その女性が歌っていると言っても成立するような楽曲がほしいと。それで歌詞の中にも紅蓮とか赤いイメージが出てくるんですよ。

――なるほど!「PANDORA」にも、そういういう雰囲気があります。

AKANE LIV:そうなんですよ。正体がわからないから、よく見ようと思って近づいていったら、ガーッと食べられちゃったみたいな。そういう摩訶不思議な感じで。

――「EYES OF MARIONETTE」もそうですし、どの曲にもミステリアスな女性が登場してきます。コンセプトを決めていないのに、そういうイメージが同じだから続き物のストーリーを見ているような気がします。

AKANE LIV:そうですよね。そういうものが一つ芯にあれば作品としてまとまるんですよね。私が全曲歌詞を書くからブレないんじゃないかなと思って。

――歌詞に赤に関連するワードがあるだけではなく、熱演という印象からも「赤」はイメージされますね。

AKANE LIV:赤ってドラマティックで情熱的な色だし、みなさんの中で一番色んなイメージがあると思うんですよ。私の場合は舞台出身なので、緞帳の色、2年続けて演じさせていただいた「マダム・レッド」、名前も「茜」だったり、色んなところで「赤」に縁があると思っていて。

――赤のイメージって、プラスもあればマイナスもありますよね。複雑な色。

AKANE LIV:そう。表裏一体。「PANDORA」の女性もそうだけど、そういうものが描けたらいいなと思って。

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