【インタビュー】LIV MOON「自分が今まで演じていたキャラクターがフッと憑依してきてイメージが広がる瞬間があった」

■私自身、色んな国で生活して色んな国の人と出会ってきたんです
■そういうものが自分の歌詞なんかに反映できたらいいなと思っています

――「EYES OF MARIONETTE」は、舞台出身だからこそ表現できる世界観だったんじゃないですか？

AKANE LIV：これは、今までとちょっと違うアプローチで歌いました。バンドの中で高音を目立たせたい時はあえて声にビブラートをすごくかけるんです。それはLIV MOONで活動をはじめてからやるようになった一つの歌唱法でもあるんです。「EYES OF MARIONETTE」では、人形が歌っているような怖さを出すために、あえてビブラートをかけない方が面白いかもしれないということを西脇さんと相談して、マイクの近くで囁くように歌って、壊れている女性の雰囲気を出すということを試してみました。

――叫んだりもしていますね。

AKANE LIV：はい(笑）。最初はやりすぎかなということで、一回録って終わったんですけど、西脇さんが「入れてみたら芝居が入ってて面白いんだよ」というので。実はこれは一回しか録っていない叫びなんです。

――「CRIMSON ROSE」から「GLORIA GLORY」の流れはライヴでの情景が見えてきますね。

AKANE LIV：「GLORIA GLORY」はイントロにクワイアーも入って来ますしね。「CRIMSON ROSE」はカルメンとかジプシーのような自由奔放な女性をイメージして歌詞も書いたんです。シプシーの人たちって「ライララ」とか「ララ」とか、いろんな歌詞で歌を唄うんです。だから、「ライララ」だらけで歌いたいイメージだったんですけど(笑）、私は気持ちいいけどお客さんには伝わらないだろうなと思って、もうちょっと言葉を増やしました。


――いつもながらAKANE LIVさんの表現にはいろんな場所に連れていってもらいますが、この曲もそういう曲ですね。AKANE LIVさんならではの歌詞だと思います。

AKANE LIV：私自身、色んな国で生活させていただいているので。父が文化人類学者なので、本当に色んな国の人と出会ってきたんですよ。そういうものが自分の歌詞や、いろんなものに反映できたらいいなと思っているので。

――「GLORIA GLORY」は王道な感じですね。

AKANE LIV：うん。これが一番シンフォニックメタルのイメージに近いですよね。クワイヤもたくさん入ってるし。私の根本としてシンフォニックメタルが大好きだから、最後に華やかに締めたいなと。

――歌詞もこの中では一番ポジティヴ。

AKANE LIV：ファンの方には、結婚式をするのにLIV MOONの曲を使いたいという方もいらっしゃって、「もうちょっと明るい楽曲を使いたいんだけど、なかなかない」と言われるんです(笑）。LIV MOONの場合、だいたい激しいですから。この曲は、今年、オリンピックがありましたよね。KAZSINさんがオリンピックを見ながら、イメージしてこれを作られたんですよ。私もアスリートの皆さんを思いながら書いた歌詞なんです。簡単に明るく前向きにっていうことではなく、そこにはいろんなドラマがあるし、一位になっている人もすごいけど、二位、三位の人も国を背負っているわけで。今回は国を持たない人たちが難民選手団という一つの共同体として参加しましたね。そういう姿からも感じることがあったので。

――それで「栄光はつかの間の夢？」という歌詞が出てくるんですね。今回は金メダルだけど、次にまた金メダルをとれるかどうかはわからないですもんね。

AKANE LIV：そうなんです。ずっと玉座に座っていることはできないですから。印象的だったのは、陸上の長距離で、女性が転んで、それを別の国の選手が助けたというのがありましたよね。あれも救いの手をさし出すのかどうかというのがある。でも彼女たちのあの姿というのはすごく胸に響いて。そういうことを感じていた時期に楽曲を作っていたので、いい期間に制作期間がぶつかったなぁと思います。

――あの時期は毎日心が動かされましたもんね。

AKANE LIV：そう。毎日泣きましたよね。

――本当に。

AKANE LIV：自分で舞台をやっているときに、「なんで私、ここでこんなに緊張しちゃうんだろう」って落ち込むことがいっぱいあるんですけど、彼らは4年かけてやってきて、失格で終わっちゃう人もいるわけです。その4年間に比べて、自分はまだまだ足りないなって。こんなことで転んでガッカリしてる場合じゃないって彼らの姿を見て思いました。

――「R.E.D」というタイトルはResolution（決意）、Radiant（光を放つ）、Evolution（進化）、Dynamic、Dramaticというキーワードからつけられたそうですね。

AKANE LIV：自分の中で、どういうアルバムにしたいかって考えた時に、久しぶりだし、もっと進化して、自分から光を放つようなことをしたいという思いもあったので、キーワードを並べていったら、「R.E.D」に繋がったんです。Revolutionだと革命を起こすほど、前とは違うことをやっているの!?って、ちょっとToo Muchな印象なので、自分にとってはEvolutionがシックリくるんです。これだなと思った言葉と、今回、思い描いていた「赤い月」というイメージが重なって。

――「GLORIA GLORY」で終わっているからこそ、このタイトルがキーワードになっていることに納得するんです。1曲1曲、光は放っていますけど、最終的に、すごく強い光を放って終わる……というか。

AKANE LIV：そうですね。ベストアルバムを出した時に新曲が2曲入っていたんですけど、まだそこまで自分の中で、「これがLIV MOONの新しい方向性です」っていうほどのものは提示できていなかったんです。だから、次のアルバムの時に、自分の中でどうしていきたいかということが考えどころだなと思っていました。その中で初心に戻れたというか。シンフォニックメタルはもちろんベースにあるんだけど、それにこだわりすぎちゃうと面白みがなくなっちゃうじゃないですか。でも、そういう楽曲も歌っていきたいし。私には舞台とLIV MOONの2つの柱があるんですけど、この2つはずっとやっていきたいことなんです。だから、シアトリカルな部分はLIV MOONにももっと入れていってもいいんじゃないかなと思っているんです。歌詞や歌唱法に関してももっと取り入れて、皆さんに楽しんでもらいたいと思っています。

――AKANE LIV名義でソロ作品を作ったことも今作には影響していますか？

AKANE LIV：はい。ソロ活動でJ-POPの世界で活動されているJeff Miyaharaさんと組んだことは大きかったですね。LIV MOONの時はヴォーカル録りは必ずレコーディングスタジオで録っていたんですけど、Jeffさんの場合は自宅スタジオだったんです。レコーディングスタジオだと扉を挟んでキャッチボールをしていましたが、自宅スタジオで、Jeffさんがすぐ横にいて、アイデアを出し合える環境ってすごく新鮮だった。今回、西脇さんと録る時も、西脇さんの部屋にあるレコーディングスタジオで録ったので、隣に西脇さんがいたんですよ。「もっとこういう歌い方しよう」とか気軽にキャッチボールができてすごく楽しかったし、録るのも速かったんです。この方が自分は面白いし、向いてるなと思って。そういうやり方もソロをやって学んだことですね。

――なるほど。

AKANE LIV：あとはLIV MOONの場合は、メンバーの演奏でさんざん盛り上げてくいれたあとに歌が入りますけど、J-POPの場合はもっと演奏がシンプルなので、Aメロから歌を伝えなきゃとか、ビブラートもいらないって、ジェフさんに教えていただいて。それが「EYES OF MARIONETTE」の歌い方になったり、クワイヤのコーラスにも生きました。コーラスを重ねなければいけない時に、ビブラートをかけると重なっているのがわかりにくくなるんです。ビブラートをかけないとコーラスってハッキリ重ねられるんです。

――この4年の間に蓄えたことが今作には活かされているんですね。

AKANE LIV：デビューしてから1年経たずにアルバムを出したので、そのあとからは、バンバンバンという勢いで作ってきたんです。でも今作では4年の中で蓄積したことを生かして、色々考えながらできました。だから、4年ぶりにLIV MOONで作品を作れたことがすごく幸せだなと思っていて。今作は歌詞を書いていても、自分が今まで演じていたキャラクターがフッと憑依してきてイメージが広がる瞬間があったんです。舞台だと自分とは違う一人の人物を3時間演じているんですけど、いろんな人物を演じているから、楽曲1曲の中でその人物をもっと凝縮して表現ができるんです。そういう役を演じてきたというのもLIV MOONには生きている。シンフォニックメタルにはシアトリカルな要素が強いと思っているので、今後もそれは出していきたいと思っています。演じたぶんだけ、自分が描く歌詞の世界観も広がっていくんです。今作のレコーディングの最後は「EYES OF MARIONETTE」だったんですけど、曲を録り終えたあと、「6曲じゃ、物足りないね」って、すぐに次の作品を作りたくなっちゃったくらい、やりたいことがいろいろ増えました。

――試したいことがまだまだあるなら、次の作品を作るのも楽しみですね。

AKANE LIV：そうなんですよ。これからちょっと舞台が続くんですけど、それによってLIV MOONに産み落とせるものも出てくると思うので、そのスタンスはまた大事にしたいと思います。

――12月にはライヴもありますし。

AKANE LIV：はい。今回はライヴハウスなので、ギュッと濃縮された空間の中で、KENTAROさん（G）とMASAKIさん(B)との2トップが、より舞台映えすると思うし、音圧やメンバーのいい雰囲気が伝わるんじゃないかと。私自身、LIV MOONのライブが年々楽しくなってるんです。楽曲も増えてきて、どういう曲の方がお客さんは盛り上がるかというのもわかってきたので、攻めのライブをやりたいなと思っています。

取材・文●大橋美貴子




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