【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.58 「God Save the Queen」

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数日前にイギリスのメディアがこぞって報道したニュースがありました。以前、このコラムで「UK PUNK、その祝い方もPUNNK」(https://www.barks.jp/news/?id=1000125447)という記事を書きましたが、今回のニュースもまた、イギリスらしい政治と音楽の距離感が窺えるものなのでご紹介しましょう。

11月3日のイギリス下院でのEarly day motionにて、保守党議員であるAndrew Rosindell氏が、国営放送局であるBBC Oneに対し、イギリス国歌を毎日の放送終了時に放映するよう要請、さらに the Telegraph誌に対して次のように述べました。

「イギリスの放送局はもっと大々的に愛国精神を打ち出すべきであり、BBC Oneにおいて、1日に1回、イギリス国歌を放送するように要請することは大したことではない。BBC Oneは過去そうしていたし、それを戻すべき時が来た。イギリスのEU離脱に伴って‘イギリスは元に戻った’というメッセージを掲げ、女王生誕90年となる年を祝福すべきである」

これに対し、BBC Twoの「Newsnight」は同日の夜、番組放送終了間際に「私たちはBBC Oneでもありませんし、まだ一日の終わりでもありませんが、私たちは彼の要請に喜んで応えたいと思います」というニュースキャスターの締めの挨拶後、イギリス国歌と同タイトルであるセックス・ピストルズの「GOD SAVE THE QUEEN」を放送したのでした。


過去、BBCでは放送終了時にイギリス国歌を毎日放映していたことは日本の公共放送であるNHK総合テレビジョンが放送終了時に君が代を放送するのと似ていますが、1997年に打ち切られています。

政治を国営放送に盛り込むべきとした政治家の一言に対し、番組制作側の意向を適切な音楽を用いて、真っ向から異論を唱えた国営放送局番組の姿勢は、至極健全で頓知も効いていて、その関係性と音楽が根付いた環境を羨ましいとさえ感じます。

音楽が政治に使われることや、ミュージシャンが政治を語ること、音楽フェスで政治を語ることなどに批判が出るような風潮が日本には何故あるのか。一見、イギリス人もBBCもやっぱりパンクであって、ピストルズの音楽もパンクもまた最高! と思わせてくれる面白ニュースからはいろいろと考えさせられますね。


◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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