【ライブレポート】NIGHTMARE「“さよなら”と“またね”は違うから」

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YOMIが“機能性発声障害”を患ったことを受けて、一時的に活動を休止することを決めたNIGHTMARE。結成から16年という長いキャリアを持つバンドだけに、アクシデントを公にすることなく、活動ペースを長期タームに切り替えたように見せかけるなどして乗り越えることも出来たと思うが、ちゃんとファンに事情を説明したことからは彼らの真摯さがうかがえる。11月に入ってからNIGHTMAREは、各地のファンにしばしの別れを告げるべく<NIGHTMARE TOUR 2016 NOT THE END>を開催。同ツアーのファイナルであると同時に活動休止前の最終公演となったライブ<NIGHTMARE FINAL「NOT THE END」>が、11月23日に東京体育館で行われた。

◆NIGHTMARE ライブ画像

ライブは、かがり火を思わせる数本の炎が揺れる中で「クロニクル」を演奏した後、ステージが一気に眩い光に包まれ、同時に抒情的な「Awakening.」が鳴り響くという流れで幕を開けた。ステージ中央に設置されたライザーの上に立ち、情熱的な歌声を聴かせるYOMI。ピエロを思わせるミステリアスなヴィジュアルと軽やかなステージングのマッチングが印象的な柩。広いステージを行き来して、エモーショナルなギターワークを展開する咲人。ステージ前面から一歩下がった位置で、うねりに溢れたグルーブを紡ぐベーシスト然とした姿がカッコ良いNi~ya。クールな表情でタイトなドラミングを決めるRUKA。ストーリー性を感じさせる幕開けと強い存在感を発するメンバーの姿、壮大なサウンドなどが一つになったステージは観応えがあって、ライブの出だしから強く惹き込まれずにいられなかった。


オープニングから3曲聴かせたところで、YOMIの最初のMCが入った。「東京! 今日は、ありったけの愛を俺達にぶつけて来いよ。俺達が全部受け止めてやるからな! ぶつけて来い! 全力で来い!」という熱い言葉に続けて、ラグジュアリーな味わいの「ネオテニー」や、切迫感に溢れた「東京傷年」、メタリックなサウンドを活かした「ジャイアニズム痛」などをプレイ。ステージ両サイドに伸びたランエリアも使ってスケールの大きなパフォーマンスを見せるメンバー達の姿からは、ほとばしるような気合いが伝わってくるし、ステージを覆う張り詰めた緊迫感にも圧倒される。タイトなサウンドも含めて、今日のライブに対する5人の想いの深さを強く感じることができた。


サードブロックに入っても、ボルテージは下がることがない。「今日は、沢山のファンの人に集まってもらっています。いつも来てくれているファン、WOWOWで見てくれているファン、仕事で来れなかった人にも俺達の気持ちが届くと良いなと思っています。突き抜けていくぞ!」というYOMIのMCも挟みつつ、「ERRORs」や「BOYS BE SUSPICIOUS」「終わる世界の始まりは奇なり」といったナンバーがパワフルに演奏された。NIGHTMAREならではの“尖り”を備えたナンバーをライブで聴くと、気持ちが駆り立てられずにいられない。アグレッシブなNIGHTMAREに牽引されて、場内を埋めたオーディエンスが膨大なエネルギーを放出して熱いリアクションを見せる情景も印象的だった。

ライブ中盤では趣を変えて、スローチューンの「ジェネラル」や翳りを帯びたミディアムテンポの「まほら」、洗練感を纏った「わすれな草」などを披露。活動休止前ラストライブのエモーショナルなセクションということでウェットな雰囲気になるような予感がしたが、そうさせなかったのはさすがの一言。悲壮感などは微塵もなく、それぞれの楽曲を最良の形で聴かせて、深みのある世界観を創りあげる姿は貫禄に満ちていた。彼らのプロフェッショナリズムが光る中盤だったといえる。


咲人のトリッキーなギターサウンドをフィーチュアした「mimic」からライブは後半へ。「ジャイアニズム死」や「極上脳震煉獄・弌式」「落羽」などが畳みかけるように演奏された。「今日のライブ、俺達は絶対忘れないと思います。淋しくなったり、ツラい時があったら、今まで俺達が作ってきた曲を聴いてください。絶対、助けてやります。最後まで全力で歌います」と語り、終盤に入ってもパワーダウンすることなく、力強い歌声を聴かせるYOMIを見ていると思わず胸が熱くなる。激しいステージングを織りなし、“鉄壁”という言葉が似つかわしい強固なアンサンブルを活かしたハイエナジーなサウンドを轟かせるNIGHTMAREと、拳を振り上げ、ヘッドバングし、何度となく合唱するオーディンス。ステージと客席の双方が発するエネルギーが渦を巻き、東京体育館の場内は怒涛の盛り上がりとなった。



その後は、「俺達は今日まで、どれだけカッコ良いバンドになれるのか、どこまで上に昇れるのか知りたくて、16年突っ走って来ました。ツラいことも沢山あったけど、ここまでやって来れたのはファンの皆がいつも支えになってくれたからだと思っています。ラスト、感謝の気持ちを込めて送ります」というYOMIの言葉に続けて、本編のラストソングとして「Morpho」をプレイ。爽やかなサウンドとウォームな歌声で心地好い余韻を残して、メンバー達はステージから去っていった。

Ni~yaの「今日はとことん行くぞ! いいかぁー!!」という声で始まったアンコールでは「KENKA DRIVE」や「dogma」「自傷(少年テロリスト)」、客席から大合唱が湧き上がった「Star[K]night」などをプレイ。咲人がこみ上げてくる涙をこらえながら「“さよなら”と“またね”は違うから……笑顔でまた会えるのを楽しみに待っています」と語るシーンを筆頭にオーディンスが涙を浮かべるシーンも何度かあったが、最後の最後に「My name is “SCUM”」と「the FOOL」を演奏して、完全燃焼といえる形でライブを締め括ったのはNIGHTMAREらしいといえる。

“活動休止=実質的な解散”というイメージもあるため、今回のNIGHTMAREの動きに大きな不安を感じている人もいるだろう。だが、このライブを観て、彼らが必ず帰ってくることを確信できた。メンバー達が生み出す絶妙なケミストリーや強固なバンド感は揺らぐことがなかったし、なにより“今回のツアーでさらに進化した最新のNIGHTMAREを見せつけたい”というメンバー達の強い想いが随所で感じられたからだ。彼らは決して“終わってしまったバンド”ではなく、現在進行形であることを実感させるステージだった。

アンコールで柩が語った、「ツアーで全国を廻ってきて、みんなの笑顔だったり、悲しそうな顔を見て、もうガンガンに涙腺を刺激されていた。だから、俺は今日はステージで死んじゃうんじゃないかと思ったけど、今は嬉しい。悲しいとかより、嬉しい、楽しいのほうが大きい。メンバーも、みんなも、スタッフも帰ってくる場所があるじゃんと思って。ここに帰ってくれば良いじゃんと思ったから。次が見えて、本当に嬉しい。ありがとう」という言葉通り、NIGHTMAREが完全復活を果たす日を楽しみに待ちたいと思う。



取材・文◎村上孝之
撮影◎宮脇 進(susumu miyawaki)

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