【インタビュー】大石昌良とは一体何者なのか? 4つの名義が織りなす音楽半生

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■この3人でプレイすることの喜び
■ソロの大石昌良のアカウントがあったからこそ気づけた価値観


──そのオーイシマサヨシが誕生する前、2011年には1度解散したSound Scheduleが再結成しました。復活したきっかけは?

大石:きっかけはドラムの川原くんから、Sound Scheduleを続けてたらメジャーデビュー10周年という年に直電がありまして。『10周年やし、1シーズン限りの復活ライブをやってみぃひんか?』と。『10年という節目は大きいと思うねん。このアニバーサリーに復活しなかったら、たぶん僕らはこの先一生、一緒に音出せへんと思うねんな』と言われて。僕はその言葉にすごく心動かされたんですよ。正直、サウスケ解散前の僕は川原くんと一番仲が良くなかったんです(苦笑)。でも、その川原くんがこういうことを僕に話してくること自体、すごく大人になったなと思えたし。何よりも川原くんが注ぐSound Scheduleへの愛にも改めて気づかされて。僕自身もソロでいろんな方々とのセッションを重ねてきたからこそ、2人とまた一緒に音を出すことに対して気持ちの余裕があったんですよね。それで1シーズンだけならと思ってやってみたら、めちゃめちゃこれが楽しくて(笑)。そのツアーの最後の方のステージ上のMCで『来年もサウスケやりまーす!』と言ってしまって。そこからずっとやってる感じです。

──じゃあ最初の計画では1シーズンだけで終わる予定だったんですか?

大石:ええ。でも、思いのほか楽しくて。となりを見ると沖くんも、後ろを見ると川原くんも、まんざらではない顔をしてて(笑)。今年のサウスケのツアーのMCでも言ったんですけど。純粋に音楽を楽しめて、大学の軽音学部時代に自分たちの心が戻った気がして。純粋に音楽を楽しめていることが、続いている1つの理由なのかなと思ったりしますね。

──1度解散したのに(笑)、不思議ですね。

大石:現役の頃は、技術的なスキル、アイデア、発想力をメンバーに求めてたところがあったんですけど、今はそれを求めてないですからね。そんなことよりも、この3人でステージに立つ意味、価値に視点が定まってて。ある程度できれば、あとは3人でプレイすることの喜びを噛み締めていれば、お客さんに対してはそれがエンタテインメントになる。僕らがサウスケのドラマを続けることがお客さんの心の栄養になるんだと。そういう価値観に気づけたからこそ、続けられているんだと思います。それに気づけたのは、解散後のソロの大石昌良のアカウントがあったからこそなんですよ。そこでいろんな現場や経験をしたからこそ、そういう価値観に気づけたんです。

──なるほど。

大石:再結成した1年目は、そこまでの気づきはなかったんですよ。初年度はね、これから僕、恥ずかしいこと言っちゃいますけど(笑)、他のメンバー2人と違って、僕はずっと現役で音楽やってきてましたから。サウスケが復活するにあたって、“音楽は俺がちゃんとけん引しなきゃダメだ”って。僕は肩に力が入ってたんですよね。今思えば。恥ずかしい限りなんですけど。あと、これもお恥ずかしい話なんでが、2人と5年間離れてる間にソロで積み上げた僕のことを彼らに認めて欲しかったんです(笑)。だって、自分から“もうバンドはできない”って家を飛び出しておいて。そこからまた家に戻ってきたときにね、何も差し出すお土産がなかったら恥ずかしいじゃないですか。だから、自分は5年間こういう経験をしてきたんだよというものを、確固たる技術や引き出しの多さで示したい。それをメンバー2人に知ってほしいというのは正直ありましたね。


■いろんな現場を見てきたからこそ“ING”、現在進行形でいたい

──川原さん、沖さんに5年間で成長した自分を認めてもらいたかった。

大石:そうです。“コイツじゃなきゃダメだ”というのを音の中で思って欲しかった。今もそれはあるんですけど、初年度は特にそれが強かったです。でね、若気の至りっていうところでもっと恥ずかしい話をすると(笑)、僕はバンドやってる頃から『Sound Scheduleが解散してもソロで食ってけるし』って、確か沖くんとかに言ってた気がするんですよ。それぐらい自分の音楽にすごい自信があったから、自分が好きな音楽ができればいいやというのがあって。だから、それが解散の原因の1つにもなってたと思うんです。一番認めてもらいたい人をないがしろにしたりだとか、そもそも一番認めて欲しい人たちという事実すら自分が認められなかったり。あまりにも近い存在になりすぎてて。それがね、今のバランス感でいくとお互いが各々の役割を担えていて。例えば、川原くんは仕事でディレクターをやったりしたことが生きていて。昨日も僕、川原くんと一緒だったんですけど。夜中にね、倉庫にガツガツ機材を入れ込んでたんですけど。今の川原くんは自ら全部やるんです。僕の指とかに気を使って。見えない優しさを昔から持ってた人ですけど、それを僕の目の前でも見せてくれるようになった。だから“ありがとう”と、感謝には感謝の言葉を伝えなきゃなと思ったのは、自分も大人になったなと思ったし。川原くんも大人になった。沖くんは相当楽しんでるし(笑)。バンドは仲良いに越したことないですから。ただ、年がら年中サウスケをやれって言われたらできないですけど(笑)。

──1年に1回だからいいんでしょうか。

大石:そうですね。あと、次のリリースとかのプランもふわっとした感じなので、それもいいなと。みんなが同じ方向を向いたときに作ろうぜって。それこそ、大学時代にデモテープを作ってた感じですからね。そういうのがすごくいいなと思いますね。

──Sound Scheduleは今後も続けていきたいですか?

大石:そうですね。MCでも『解散しない』と伝えてるし。自分たちのこういうペースを守りながら、やり続けられたらいいなと。1つのライフワークとして。ただ、1つバンド活動に関して思っていることがあって。これは僕の立場だから余計に思うのかもしれないですけど。いろんな現場を見てきたからこそ“ING”、現在進行形でいたいなと思ってるんですよ。同窓会みたいな思い出バンドとして年に1回集まるバンドにはしたくない。ちゃんと時代に合った新しい音を奏でられる現役のバンドでいたいなと思ってますね。初めてサウスケを観た方にも“めっちゃいいバンド”“カッコいい”と思われるようなバンドでいたいなと思ってます。

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