エイジアやジャーニー、クイーンを手掛けたマイク・ストーンとポール・スタンレーのプロデュースで1979年にデビューしたニュー・イングランドは、3枚のアルバムをリリースしたものの1982年に解散という短命なバンドであった。しかし、彼らのアルバムはアメリカン・メロディアス・ハードの名盤として音楽雑誌でも度々採り上げられ、後にバンドを知った音楽ファンの間でも伝説のバンドになって行くこととなった。

◆ニュー・イングランド画像

メンバーのゲイリー・シェア(B)とジミー・ウォルドー(Key)の二人はその後にグラハム・ボネットとイングヴェイ・マルムスティーンのアルカトラスとして活躍を見せつつも、2000年代に入るとニュー・イングランドが再び動き出すこととなる。そして2016年、ついに初来日公演が実現することとなった。

メンバーはオリジナルのままである。近年勢力的に活動していただけあってライブパフォーマンスは安定しておりメンバーそれぞれのマルチな面も披露された。ジョン・ファノン(G、Vo)の哀愁のある温かい歌声とコーラスエフェクト掛かった重厚なギターサウンド、ハーシュ・ガードナー(Dr)のハイトーン・パートの歌も素晴らしかったが、プレイは名門バークリー出身というお墨付きだ。

初日の公演ではなかったアルカトラス「Island In The Sun」のキーボードイントロ部分を披露するサプライズもオーディエンスを沸かせたが、キーボードが奏でるクラシカルでプログレ・ハードな美旋律が彼らのサウンドの主導権を握っている。

「Conversation」のアコースティック・バージョンではゲイリー・シェア(B)とジミー・ウォルドー(Key)もアコースティック・ギターで加わり3人のギタープレイを聞かせ、分厚いコーラスハーモニー、ジョン・ファノン(G、Vo)のキーボード場面も多く、ツインキーボードでの「Explorer Suite」は、実に迫力があった。メンバーがステージ下の客席フロアへ度々降りてのプレイもあり、そして終始会場全体が美しい楽曲とコーラスワークに包まれ、歌声に抱かれたような感覚。二度のアンコールが終わり、客電が点こうとも誰も去らずに三度目まで行われ、抽選だったサイン会も全員当選に切り替えられるなど、メンバーの温かいはからいとファンの情熱が、素晴らしい来日公演を作り上げていた。

下記は、記念すべき初来日公演の間を縫って敢行した、貴重なインタビューである。


──ニュー・イングランドとしては初来日となりますが、今のお気持ちを。

ゲイリー・シェア:素晴らしいよ。

ジョン・ファノン:35年間、日本に来る事を夢見ていたよ。

ジミー・ウォルドー:本当に素晴らしくて、キングレコードが良くやってくれた。これこそレコード会社のあるべき姿だよ、プロモーションも、こうして音楽の事を語れるインタビューの場を設けてくれて。

ハーシュ・ガードナー:昨夜のステージもお客さんがみんな笑顔でハッピーな顔を見れて嬉しかった。

ゲイリー・シェア:お客さんもクラブチッタのスタッフも素晴らしいよ。

──ポール・スタンレーやトッド・ラングレンがアルバムをプロデュースしていましたが、彼らとはもともと親交があったのですか?

ジョン・ファノン:親交があったわけではないんだ。1stアルバムのポール・スタンレーは、もともとニュー・イングランドがキッスのマネジメントと契約していたからその流れでね。マイク・ストーンは、クイーンを手掛けていたプロデューサーなんだけど、本当はクイーンのブライアン・メイにお願いしたかったのだけど、ブライアンには断られた。でもブライアンがマイク・ストーンを紹介してくれたんだ。トッド・ラングレンは、僕らがみんな彼のファンだったから是非とお願いしたんだ。

──アメリカのバンドらしくないサウンドだったと思うのですが、バンドではどう感じていましたか?

ゲイリー・シェア:バンドメンバー全員がヨーロッパのバンドが好きなんだ。ブリティッシュのバンドに影響を受けて、イエス、ELP、ジェネシス、ソフト・マシーンとか。そしてザ・ビートルズやキンクスだからね。

ジミー・ウォルドー:子供の頃から好きだった音楽を色々と考えてもアメリカのバンドは凄く少なくて、圧倒的にイギリスのバンドが多いんだ。クラシックもよく聴いていたけど、クラシックのほとんどはヨーロッパだしね。


ゲイリー・シェア:だからニュー・イングランドというバンド名にしたのも、もちろん僕らの出身地の事もあるけど、他にも意味があって、アメリカ人だけどイングランドの新種という意味も込めてなんだよ。

──2ndアルバム『Explorer Suite』はボストンに近いようにも感じますが、実験的な要素がありましたか?

ジョン・ファノン:うん、実験的な要素は確かにあった。でも実はボストンには影響は受けていないんだ。もしボストンに近いものを感じたなら、ボストンもニュー・イングランドも同じバンドから影響を受けたんじゃないかな?

──メロディアス・ハードの名盤を作りながらもバンドは短命に終わってしまった、当時どんな心境でしたか?

ジョン・ファノン:とても残念だったよ。レコード会社からのサポートを受けられなかったからね。

ジミー・ウォルドー:最初は凄くサポートしてもらった。順調な頃はメジャーならではのサポートがね。でも何百万枚も売れないとメジャーの興味は引けないわけで、売れたけどそこまでの大成功ではなかったから、ビジネス絡みのサポートは受けられなくなってしまったよね。

ハーシュ・ガードナー:タイミングもあったんだ。あの頃、音楽業界も変わりつつあって、ラジオで流れる音楽スタイルも変わった。エルビス・コステロやクラッシュが流行ってきて、僕らのような音楽はあまり受けなくなった。ただ、その2~3年後にはLAのバンドがたくさん出て来たからその波に乗れれば良かったんだけどね。本来ならそれで終わりのはずだったんだけど、今に至っているよ。

ジミー・ウォルドー:メンバー間の仲は良かったけど、毎日一緒に居るような友達ではなかった。逆にそこが良かったんだよね、離れても嫌な感情は湧かなかったしね。

──ゲイリーとジミーが参加されたアルカトラスの1stアルバムからは、ニュー・イングランドに通じるポップ感、を感じていたのですが、二人の影響でしたか?


ゲイリー・シェア:1stアルバムの『Island In The Sun』は、実はニュー・イングランド用に書いたニュー・イングランドの未発表曲なんだ。それをグラハム・ボネットがモータウンみたいだと気に入って彼が歌詞を書いた。だからニュー・イングランドを感じるのは当然なんだ。

ジミー・ウォルドー:もともとグラハムは、ポップなもの…ザ・ビートルズやビーチ・ボーイズが大好きだし、アルカトラスはヘヴィなバンドなんだけど、グラハムはポップな歌詞やメロディを大事にする人だったしね。だから、レインボーやマイケル・シェンカーで長続きしなかったのだと思う。でも皮肉な事に、どのバンドでもグラハムのポップな曲がバンドのヒット曲になったよね(笑)。実はアルカトラスは、僕らが加入したわけではなくて、もともとゲイリーがグラハムのマネージメントに連絡して一緒に作ったバンドなんだよ。だから最初からポップな要素があったんだ。

──イングヴェイ・マルムスティーン、スティーヴ・ヴァイという著名ギタリストとのバンド経験はいかがでしたか?

ジミー・ウォルドー:イングヴェイもスティーヴ・ヴァイもギタリストとしては素晴らしいよ。でもソングライターとしてはイマイチかな。ニュー・イングランドの自分からしたらソングライティングの部分ではね。そこでやっぱり凄いのが、ニュー・イングランドのジョンだよ。ジョンも素晴らしいギタリストなんだけど、第一に曲の事を考える。あくまでも曲の為のギタープレイだよ。イングヴェイやヴァイは、ギターの為の曲だよね。人としてもミュージシャンとしてもギタリストとしても素晴らしいけど、やってて楽しいのはニュー・イングランドだね。

ゲイリー・シェア:お互いに学ぶ事もあったし、お互いに影響を受けあってできたものがあのサウンドだったし、それは楽しかったよ。色々あって続かなかったけど、その時は楽しかった。

──グラハム・ボネットとの最近の活動はいかがですか?

ジミー・ウォルドー:僕の住んでいる所とグラハムや彼のバンドメンバーが15分以内くらいの近所なんだよね。そんな事もあって、グラハムのマネージャーからアルバムに参加してもらえないかと誘いがあって、最近のグラハムはどうなのかな?と久しぶりに再会してみたらやっぱり楽しかったし、これならできるかなと参加する事にした。これも自然な流れかなとも思う。

──来年のグラハム・ボネット・バンドでもゲイリーとジミーはツアーメンバーとして参加しますよね?






ジミー・ウォルドー:2部構成でね、僕はグラハム・ボネット・バンドの曲も書いているからそちらにも出るし、アルカトラスのときはゲイリーも出る事になった。

──そちらも楽しみですね。今後のニュー・イングランドのニューアルバムの予定は?

ジョン・ファノン:いつリリースできるかはまだ未定だけど、アルバムを作り始める事は間違いないよ。今回、35年も待ってくれていたファンがいた事もわかったし、自分らの音楽を評価してくれているファンがいる事が更にやる気に繋がったよ。これから新しい曲も書きたいし、ツアーも続けたい、モチベーションをファンの人たちがもたらしてくれたんだ。

──日本のファンへメッセージを。

ゲイリー・シェア:昨日のライブも素晴らしかったし、長年たくさんのファンが来てくれて、楽しそうにしてくれたのが嬉しかったよ。

ジミー・ウォルドー:よくファンだってみんな言うけど、あれこそがファンだよね。ずっと待っててくれた。

ゲイリー・シェア:友達であり、ファミリーであると感じたよ。

ジョン・ファノン:曲を弾き始めると、みんなこの曲知ってるなと表情でわかるものなんだけど、全曲をみんなが知ってくれていた事が凄いよ。

ハーシュ・ガードナー:日本のファンは本当に音楽が好きだよ。ひとつひとつの細かいパートやアクセントまでもさ。

ジミー・ウォルドー:そこもちゃんと合ってるんだよね(笑)

ジョン・ファノン:サイン会も100名も来てくれて、また明日のライブも来てくれるって言うんだ。その情熱が凄く伝わったよ。

ハーシュ・ガードナー:サイン会の時に男性ファンから手紙も貰ってね。日本語で便箋4枚も書かれていて、クラブ・チッタの通訳の方に訳してもらったら37年前に初めてテレビでニュー・イングランドを知って以来、虜になってアルバムも全部買って聴いて、いつかバンドに会う事が夢だったんだけどそれが今日叶いましたと書いてあったんだ。泣きそうになったよ、感動的だった。

──明日のライブも楽しみにしています。

全員:ありがとう!プレイするのが楽しみだよ。


取材・文:Sweeet Rock / Aki
ステージ写真:Yuki Kuroyanagi

<New England Greatest Hits Japan Tour 2016>

2016.11.20@ Club Citta' Kawasaki
1.Seal It With A Kiss
2.L5
3.Alone Tonight
4.Shoot
5.The Last Show
6.Get It Up
7.Honey Money
8.Livin' In The Eighties
~ALCATRAZZ Keyboard Intro~
9.Shall I Run Away
10.Conversation
11.Turn Out The Light
12.Saved All The Pieces(John Fannon Solo)
~Drum Solo~
13.Holdin' Out On Me
14.Explorer Suite
15.Hope
16.Nothing To Fear
17.Don't Ever Wanna Lose Ya
~Encore 1~
18.P.U.N.K.
19.Hello,Hello,Hello
~Encore 2~
20.You'll Be Born Again
21.Elevator
~Encore 3~
22.I Know There's Something Here