【特別対談】中村あゆみ×プロレスラー・鈴木みのる「ベスト盤に収録される曲は、彼のほうが詳しいんじゃない?」

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ロック・シンガー中村あゆみが、生誕50年の記念にキャリアの集大成として、初の本格的新録音ベスト・アルバム『A BEST~Rolling 50』を完成させた。名曲「翼の折れたエンジェル」をはじめ、当時のオリジナル・サウンドに「2016年の中村あゆみ」の歌をミックスしたバージョン、「ONE HEART」「ともだち」など新アレンジで生まれ変わったバージョン、さらに「君が光になるとき」「オリーブの花」といった最新曲も収録した、最強のラインナップだ。BARKSではリリースを記念して、中村あゆみと親交の深いプロレスラー・鈴木みのるを招いて対談を敢行。鈴木みのる入場曲「風になれ」がつなぐふたりの強い絆について、ベスト盤収録曲について、そして未来への展開について、熱く語りあってもらった。

◆中村あゆみ×鈴木みのる 画像

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■ プロレスラーになって中村あゆみに曲を作ってもらうという、決定事項があった

中村あゆみ:たぶんベスト盤に収録される曲は、彼のほうが詳しいんじゃない?っていうぐらい、みのる君はすごいの。私が知らないことまで知ってたりするから。

鈴木みのる:基本、ファンですからね。2年前に<“風になれ”フェスティバル>(鈴木みのる×中村あゆみコラボイベント/2014年11月9日@ベイサイドヨコハマ)というものを企画した時にも、僕が「金曜日のバレリーナ」が好きなんで、歌ってもらいました。バレリーナを呼んできて踊らせるから、歌ってくださいって。

中村:<“風になれ”フェスティバル>は、みのる君のプロデュースですから。だって私より私を知ってるから、間違いないでしょ。(中村あゆみの)ファンがすごく喜んで、“みのる君と俺たちは一緒だ”みたいな感じだったよね。

鈴木:この間も俺のラジオに来てもらって、すごくディープな話をするわけですよ、あゆみさんの。オープン・スタジオだったんだけど、外で聞いてたあゆみさんのファンが、みんな一斉にうなずいてましたね。

中村:俺たちが思ってることを言ってくれてる、ってなるんだろうね。

鈴木:こいつわかってんな、という目で見られてるのは知ってます(笑)。今回、全部歌い直したんですか?

中村:「同じ空の下で」だけはそんなに(オリジナルのリリースから)遠くないからそのままだけど、ほかは全部歌い直してる。「翼の折れたエンジェル」「金曜日のバレリーナ」「ちょっとやそっとじゃCan’t Get Love」とかは、当時の音源。キーを変えられないんだから、大変よ(笑)。

鈴木:前半は、アイドル声の時のやつですね。

中村:新しい「ちょっとやそっとじゃCan’t Get Love」、かっこいいよ。ストーンズっぽく歌ってるの。アイドル的な部分を残しながらね。

▲ベストAL『A BEST~Rolling 50』初回限定盤

鈴木:ちなみにこれ、(2016年)12月7日発売ですよね。僕はもうiTunesで予約してあるんで。それを予約すると、「翼の折れたエンジェル」だけ先行でダウンロードできたんで、それがほしくて。たぶんもらえるだろうとは思うけど、とりあえず買う。

中村:すごーい。

鈴木:言ってるじゃないですか。ファンなんで。正しいファンなんで、買います。

── 中村あゆみと鈴木みのるといえば、もちろん「風になれ」。あゆみさんが作った入場曲を、みのるさんは20数年間ずっと使い続けています。伝説によると、ほぼ面識もない状態で“曲を書いてほしい”とお願いしたとか。

鈴木:まだ10代のガキでしたからね。

中村:俺の中では決まってたんでしょ?

── あゆみさんに曲を頼もうと?

鈴木:頼む、じゃない。プロレスラーになって中村あゆみに曲を作ってもらうんだという、決定事項があったんで。

中村:リングを歩いてるイメージができてたんじゃないかな。曲はなくても。


鈴木:なんでそんなに中村あゆみが好きなのか?というと、やっぱり「翼の折れたエンジェル」。この中の一文が、俺を盛り上げてくれた。

中村:“もし俺がヒーローだったら”──そういう人だよね。悪役だけど。

鈴木:もし俺がヒーローだったら、悲しみを近づけやしないのに、なんですよ。俺、ヒーローじゃないんですよ。女の子にはフラれるわ、親には怒られるわ、おめぇなんて帰ってくんなって、親父に言われるわ。という状態の子供だったんで、その歌詞がかぶったというか。ヒーローになったら、誰も俺のことを怒らないだろうなとか、モテるのになとか、本当に素直に思ったから。

中村:ヒーローになりたいんですね、男の子は。そこで、ヒーローじゃないせつなさとか、ヒーローだったらこうなれるのにな、とかっていう憧れを持つ。ヒーローの像はみんなそれぞれ違うと思うけど、もし俺がヒーローだったらこんな目にはあわないのにとか、もっとこいつを幸せにしてやれるのにとか、みんなの中にきっとありますよね。

鈴木:中学生まで剣道をやってて、高校でレスリングをやって、県大会や全国大会まで行くのに、野球部とかサッカー部のほうがモテるわけですよ。

中村:あはは。そうなんだ。

鈴木:成績は圧倒的に俺のほうが上なのに。全国大会で決勝とかまで行ってるのに、モテない。だからそこですよね。

── 原動力は(笑)。

中村:男の子は必ず“モテる”というワードが出てくるよね。本能なんだろうね。子孫を残す根本的な本能なんですよ、たぶん。

鈴木:今もモテたいですよ。でもね、俺はいつまでもこうやって戦ってますけど、あゆみさんは一時期、戦うことをあきらめちゃったんで。戦うというか、歌うことを。でもね、“ダメだよ。こっちしか生きる道はないよ”って、引き戻した。俺たちはもう、普通の人にはなれないんだからって。そんな気がすごくする。

中村:それ、最近ほんとにそう思う。中村あゆみという看板を下ろしては、たぶん生きていけないんじゃないかな。どこへ行っても知られてるでしょ。つぶしが効かないの。今から事務やるとか言ってもねぇ。

鈴木:俺も、今から佐川急便とかやってもね。

── 目立ってしょうがない(笑)。

中村:「中村あゆみ」という職業以外は難しくなってきますね、ここまで来ると。

鈴木:人生の半分以上ですからね。僕ももうすぐ30年になるんで。

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