【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.59 「パティがボブ・ディランを詠む」

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今月10日に行われるノーベル賞授賞式で、パティ・スミスが文学賞受賞のボブ・ディランの楽曲をパフォーマンスするというニュース。一体、どんな経緯でそうなったのか気になった人も多いのではないでしょうか。私もその中の一人、すぐにパティのオフィシャルFacebookに記された彼女からのメッセージをチェックしました。

そこには、今年9月のストックホルムでの自身の写真展開幕の日、ノーベル賞関係者から授賞式で歌ってくれないかとオファーを受けたこと、その時はまだ文学賞が誰かは明かされていない時期で、自身の楽曲をオーケストラと共にパフォーマンスしようと考えたそう。その後、ボブ・ディランの受賞が公表され、彼も受賞を受諾したと知り、これは自分の曲ではなく、彼の曲を演奏するのが相応しいように思えたとのこと。

彼女が選んだ楽曲は「A Hard Rain」というのは多くの報道から知っていましたが、「彼の楽曲の中の最も美しい歌のひとつだから」というチャーミングな理由に加えて、(フランス人詩人のジャン・ニコラ・アルチュール・)ランボー派としての精通した面とディランの苦しみや人間の持つ究極の強靱さの原因への深い理解力とが結びついた作品であるためと綴られています。

また、10代の頃から追いかけてきてキッカリ半世紀も経ったという告白に添えて、彼女も含めた多くの人々が彼の影響に受けて多大な恩を抱いていること、予想もしなかったノーベル賞受賞式でボブ・ディランの曲を歌うことをとても誇りに思っているという文言がパティらしくて素敵です。パティがボブ・ディランを詠む日まで、あと1日。とても楽しみです。


以前もこのコラムで書きましたが、パティ・スミスを初めて見たのはフジロックのグリーン・ステージ。彼女の女性としての美しさとシンガーとして、人としての強さに一発で魅了されました。その後、留学先のイギリスで観た彼女のステージでは、学びの甲斐あって、外タレが何を話しているのかを初めて理解することができ、それが敬愛するパティだったことで嬉し泣きをしたのもよい思い出です。

好きなアーティストが50年も追いかけてきたミュージシャンから生まれた音楽やその人のルーツと捉えると、これまでの見方ががらりと変わることってありますよね。憧れの人が好きなもの、影響を受けたものは知りたいし、触れてみたい。恋愛にも似たこの感覚をフル活用して、世代の違いなどが起因してかこれまで触れることがなかった良質な音楽をどんどん開拓したいものですね。この機会にディランの世界に今一度、しっかりと触れてみようと思います。

写真出典:Patti Smith Facebook

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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