Pay money To my Pain、「俺は、辞めたつもりはないから。だから、みんなも辞めなくていい」

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Pay money To my Pain (以下P.T.P) のヴォーカリスト、Kが天に召されたのは2012年12月30日のこと。それからちょうど1年後の同じ日に、バンドはかねてから目標地点のひとつに掲げていたZEPP TOKYOのステージに初めて立ち、最初で最後になるはずの“3人だけでのライヴ”を披露している。その場でPABLO (G) が、ひとつひとつの言葉の意味を自ら噛みしめるようにしながら「今日は、すべてを終わらせるためにここにやって来ました」と語ったことを記憶しているファンも少なくないはずだ。

◆COMPLETE BOX『Pay money To my Pain』動画

その瞬間からさらに3年を経ようとしている現在、CDが売れなくなりつつあるといわれるこのご時世にありながら、日本全国のCDショップで驚くほどのスピードで売れているボックスセットがある。タイトルは『Pay money To my Pain』。5枚のCDと2枚のBlu-ray、12インチのアナログ盤1枚、さらにはTシャツとポスター、分厚いブックレットまでが収められたこの商品の価格は、税抜きで2万円。彼らのライヴを4回くらいは観られるはずの金額である。それを高いと感じるか安いと思うかは人それぞれだろうが、それ以前にとにかく“濃くて重い”ものであることは間違いないし、P.T.PがP.T.Pとして何かを世に出してくれることを心待ちにしていた人たちの数が尋常ではないということは、このアイテムがオリコンのデイリーアルバムチャートで首位に輝いた事実にも裏付けられている。当然ながら彼らがヒットチャートの頂点に立ったことなど、過去には一度もなかった。いわば“無冠の帝王”的存在でもあったこのバンドが、活動を停止させてから3年を経て初めて“記録”を手にしたというわけである。


この作品は、彼らがこれまでに発表してきた全音源を軸とするもので、文字通りのコンプリートボックスといえる。12月6日という発売日は、まさに彼らのデビュー作にあたるEP、『Drop of INK』(2006年) が発売されたのと同じ日。それから満10年を経て、この決定的なアイテムが登場することになったというわけだ。つまりこの作品は、事務的に言えば“デビュー10周年を記念しての総括的ボックスセット”であり、バンド側にとっては大きな節目であると同時に、ひとつの“けじめ”のような意味合いを伴っている。実際、PABLO、T$UYO$HI (B)、ZAX (Dr)の3人もそれを認めている。が、いつかボックスセットを出すことが夢のひとつだったというPABLOは、次のようにも語っている。

「実はもうひとつ動機があって。それはやっぱり、P.T.Pが活動を停止した後にファンになってくれてる若い子たちが多いこと。ライヴを観たことのない子とかね。そういう人たちにとってはある種、これによって初めてリアルタイムにP.T.Pのリリースを迎えることができるわけで。好きなバンドのリリースってある意味、祭りじゃないですか。なんかそういう機会を作ってあげられるんじゃないか、という思いも結構あって」

この発言は、このボックスに収められているブックレットからの抜粋である。そこには彼ら自身による全楽曲解説や貴重な写真の数々の他、各1万2,000字を超えるメンバー個々のパーソナルインタビュー、担当ディレクターの語る秘話なども掲載されており、筆者がその全取材を担当させていただいている。手前味噌ながら、このインタビューをお読みいただければ、彼らがずっと抱えてきた心情をご理解いただけるのではないかと自負している。そのインタビューのなかで、T$UYO$HIは次のように語っている。

「特別な10年でしたね、圧倒的に。正直、俺にとってP.T.Pっていうのは、曲であり音源ではあるはずなんだけど、そうじゃないんですよね。やっぱりその時代を生きてた自分にとってのすべてというか。だから曲を聴くと、それをレコーディングしてたときの雰囲気を映像的に思い出すし、なんかそういうのが全部、セットになってる感じなんです。だから“音楽性の変遷”とかじゃなく“この10年の出来事”がP.T.Pだったという感じかな」


この濃密なボックスに収められているのは、このバンドの“10年間の歩み”であると同時に、まさに彼ら自身の“生きざま”なのである。もちろん今後、この唯一無二のバンドが、かつてと同じ形でステージに立ったり作品を発表したりすることはあり得ないし、それが起こり得る場があるとすれば、我々のイマジネーションのなかだけ、ということになる。しかし同じブックレットのなかで、ZAXはこんなふうに発言している。

「確かにP.T.Pが今後何かをリリースするということはもうないだろうし、ライヴもやらない。ただ、俺は今もP.T.Pのメンバーです。一生そうなんです。バンドが動いてるかどうかとか、そういうことじゃないんです。俺は、辞めたつもりはないから。だから、みんなも辞めなくていい。P.T.Pを好きでいてくれることを」

自ら終止符を打ったはずではあるが、終わってはいない。誰も辞めていないし、誰の心もそこから離れていない。この作品を手に取った誰もが、それを実感していることだろう。そして彼ら3人だけでなく我々すべてが、もうすぐまた“Kのいない、新しい年”を迎えることになる。新たな一歩を踏み出すためにも、一人でも多くの同志たちに、ありのままの自分としてこの作品と向き合ってほしい。最後に、生前のKの言葉をひとつ、改めて紹介しておきたい。彼に刻まれていた“STAY REAL”という刺青を憶えている読者も多いはずだが、これはその言葉の意味についての発言である。

「“STAY REAL”というのは、本物であれという意味ではありません。そのままで、ありのままでいてくださいという意味なんです」

P.T.Pは、生まれた瞬間から現在に至るまで、ずっとリアルな存在であり続けている。そしてもちろん、デビューから10年という節目を超えたこれから先も。

取材・文◎増田勇一




■10周年記念COMPLETE BOX『Pay money To my Pain』

2016年12月6日(火)発売
【TシャツSサイズ】VPCC.80685 ¥20,000+税
【TシャツMサイズ】VPCC.80686 ¥20,000+税
【TシャツLサイズ】VPCC.80687 ¥20,000+税
CD5枚 / Blu-ray2枚 / Tシャツ / ポスター / ブックレット / アナログレコード
<Disc1 1st Album『Another day comes』>
1. Another day comes
2. Paralyzed ocean
3. Unforgettable past
4. Lose your own
5. The sun,love and myself
6. In the moment
7. Train
8. Reflection
9. Home
<Disc2 2nd Album『after you wake up』>
1. Here I’m singing
2. Position
3. Lost the voice
4. Price to pay
5. Ligarse
6. The answer is not in the TV
7. Terms of surrender
8. Same as you are
9. Bury
<Disc3 3rd Album『Remember the name』>
1. This life
2. Weight of my pride
3. Drive
4. Relive
5. Deprogrammer
6. 13 monster
7. Atheist
8. Wallow in self pity
9. Greed
10. Hourglass
11. In the blink of an eye
12. Gift
13. Pictures
14. dilemma
<Disc4 4th Album『gene』>
1. gene (Instrumental)
2. Sweetest vengeance (Album mix)
3. Last wine
4. Truth fragile
5. Respect for the dead man [featuring Ken&Teru from Crossfaith]
6. God drive [P.T.P×KYONO from WAGDUG FUTURISTIC UNITY/T.C.L]
7. Invisible night ~murderer~
8. Resurrection [P.T.P×Masato from coldrain & 葉月 from lynch.]
9. Innocent in a silent room
10. Illumination [P.T.P×JESSE from RIZE/The BONEZ]
11. Voice [P.T.P×Taka from ONE OK ROCK]
12. Rain
<Disc5 1st EP『Drop of INK』>
1. Black sheep
2. Against the pill
3. From here to somewhere
<Disc5 2nd EP『Writing in the diary>
4. Out of my hands5. Close the door
6. Anxiety
<Disc5 and B-sides>
7. All because of you
8. Butterfly soars
9. Out of my hands ~Revival~
10. Bury ~Redempition~
11. First Live at高崎 club FLEEZ ※2013年12月5日の初ライブ音源
<Disc6 TOUR 2011 "Joy ride" 2/MAY/2011 SHIBUYA-AX 完全収録>
<Disc7 All music videos>
1. Black sheep
2. From here to somewhere
3. Paralyzed ocean
4. Another day comes
5. Out of my hands
6. All because of you
7. The answer is not in the TV
8. Same as you are
9. Pictures
10. Greed
11. Deprogrammer
12. Weight of my pride
13. Sweetest Vengeance
14. Rain
<Disc7 10 Stage Performances>
1. 2006.02.20 "NAKED-PTP JAPAN TOUR" 心斎橋 Club DOROP
2. 2007.01.29 "Drop of INK レコ発ツアー Fakie or Nollie" 新宿 LOFT
3. 2008.01.27 "NO MATTER LIVE" Zepp SAPPORO
4. 2008.04.06 "PUNK SPRING" 幕張メッセ
5. 2010.11.07 "激ロック FES vol.5" 渋谷 club asia
6. 2010.12.15 "House of chaos 2 ~The Bleeding high~" 代官山 UNIT
7. 2011.09.18 "AIR JAM 2011" 横浜スタジアム
8. 2011.09.23 "P.T.P男祭り 2011 ~SHELTER 20th Anniversary~" 下北沢 SHELTER
9. 2012.09.06 "HOUSE OF CHAOS ~high definition~" 恵比寿 RIQUID ROOM
10. 2012.09.23 "BUCK-TICK FEST 2012 ON PARADE" 千葉ポートパーク
<アナログレコード 1st Album『Another day comes』>
1. Another day comes
2. Paralyzed ocean
3. Unforgettable past
4. Lose your own
5. The sun,love and myself
6. In the moment
7. Train
8. Reflection
9. Home
[店頭購入特典]スタンド付フォトカードセット
※特典は先着となりますので、なくなり次第終了となります。あらかじめご了承下さい。
※一部取り扱いのない店舗及びオンラインショップがございます。
※特典の有無については、各店、各オンラインショップにお問い合わせください。



◆BARKS内COMPLETE BOX『Pay money To my Pain』特集ページ
◆Pay money To my Pain オフィシャルサイト
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