【インタビュー】anderlustの2人に、個別面談で“女心”も“男心”も訊いてみた。

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■越野アンナ&西塚真吾 二人にインタビュー編

──新しいシングルを作るにあたって、テーマやコンセプトなどはありましたか?

越野:今までは歌詞の世界観が結構壮大な曲が多かったと思うんですけど、今回はもっと具体的な曲を並べたいというのがありまして。カップリングに入っている「ヒカリ」は除きますが、4曲中3曲で女の子の恋心を歌っています。それに、全部淋しい気持ちを歌っているんですけど、それぞれ違う淋しさです。表題の「Scrap & Build」は、自分にとっては良くない恋だけど、どうしても好きだという気持ちを歌っていて。そういう恋をしている人は多いと思うし、自分自身もそういう経験があるんですよ。冒頭に言ったように具体的な歌というところで、「Scrap & Build」は自分のパーソナルな部分を持ってきた歌詞になっています。

──ということは、楽曲よりも歌詞の内容を先に決めたのでしょうか?

越野:今回は、そうでしたね。恋を歌いたいという想いがあって、それに合う曲ということで「Scrap & Build」と「Stay With Me ep.2」を選んで。その後、冬っぽい曲が一つ欲しいねというところで「友達のふり」を作って。もう1曲の「ヒカリ」は、ソニーさんのCM(※ソニー「ハイレゾ級ワイヤレス」CM)ということが先に決まっていたんです。それに、4曲揃った後、「Scrap & Build」と「友達のふり」のどっちを表題にするかということを、本当にギリギリまで悩んだんです。そういう意味では、今作は「Scrap & Build」が表題曲になっていますけど、自分達の中では全部表題という感覚です。



──実際、今作も密度の濃い一作に仕上がっています。では、1曲1曲見ていきましょう。表題曲の「Scrap & Build」は、躍動感とせつなさを併せ持ったメロディアスなミディアム・チューンです。

西塚:この曲はanderlustを結成した当初からレパートリーとしてあって、前に一度レコーディングもしたんです。それを、今回シングルにするにあたって、ギターがロックな感じにリアレンジしました。

越野:「Scrap & Build」は、1stシングルの「帰り道」と同じタイミングで出来た曲です。なので、昔からあって、私がソロ活動をしていた頃から、ずっとライブでやっていました。今回はアレンジにROCK’A’TRENCHでギターを弾いている豊田ヒロユキさんに入って頂いていて、彼には私がソロ活動を始めた頃にお世話になったんです。それで、1stシングルの時も「風船 ep.1」という曲をアレンジしてもらったんですね。それからしばらく一緒に仕事をしていなかったけど、今回「Scrap & Build」をリアレンジするということで、ロックな曲調にしたいという案が自分の中にあって。それで、これは絶対に豊田さんにお願いしたいですとワガママを言って、ゴネていたら、快くOKしてくださって。週末の忙しい中、わざわざ東京まで来てくださって、みんなで一緒にアレンジを考えました。

西塚:アンナちゃんの意向を汲んで、豊田さんはすごく良い形に仕上げてくれましたね。ロックな曲調になったので、ベースも“ブリン!”とした質感で存在感のある音でいくことにして、フレーズ的にもグイグイいく感じ……ベースキッズが弾きたくなるんじゃないかなというものを多く入れました。オクターブ押しと、そうではないフレーズを混ぜて疾走感を出していたり、2番の歌中はハイポジを使ったフレーズを弾いて印象を変えたりという風に、フックを効かせたベースになっています。

越野:歌に関しては、「Scrap & Build」はポップで元気な曲ですけど、その中にも淋しさや、叫びたくなるような感情とかが入っていて。ちょっと狼が“ワォーン!”と鳴いているようなイメージで歌いました(笑)。特に、最後の“Ah Yeah”というところとかは、完全にそういうイメージです(笑)。

──淋しさやツラさを堪えていながら、最後に想いが溢れて叫んでしまうという雰囲気になっていて、グッと来ました。

越野:歌っていて、本当にそういう気持ちになったんです。いろんな想いがこみ上げてきて、正直なところ終盤になればなるほど泣きそうになりながら歌っていました。

──いわゆる“入り込んだ”状態ですね。これまでの取材では、歌う時は感情うんぬんよりも伝えることを重視すると言っていましたが、今回は違ったと?

越野:違いましたね。今回は、ガッツリ入っちゃいました。「ヒカリ」は今までと同じような感覚で歌ったけど、「Scrap & Build」は空想のストーリーとか、フワッとしたものではなくて、自分にとってリアルな感情を歌っているので。だから、無意識に入ってしまったんだと思います。今までは、そういうのは避けようと思っていたんですけど、入っちゃいました。ただ、「Scrap & Build」は、それで良いテイクが録れたけど、どの曲もそうとは限らない気がしているので。これからは歌詞や曲調とかを踏まえつつ、上手く使い分けていこうかなと思っています。

──また、新しい武器を手に入れましたね。「Scrap & Build」は、間奏後のサビ・パートでちょっとカオスな雰囲気になるアレンジも秀逸です。

西塚:そこは、僕も気に入っています。

越野:私も。頭が混乱してきているところを、うまく表現出来たと思いますね。

──同感です。続く「ヒカリ」は、翳りと煌びやかさを併せ持ったanderlustらしいナンバーです。

越野:「ヒカリ」は2ndシングルだった「いつかの自分」と同じタイミングに出来た、姉妹にあたる曲です。なので、半年前から持っていた曲ですね。この曲の歌詞は、深海から海の表面を見上げて、光がサァーッと差し込んでくるようなイメージで書きました。“明日を、どういう風に生き抜いていったら良いんだろう?”と迷っている時に、何かに出会ったり、人に出会ったりして、希望を見つけて、どんどん前に前進して行くというようなことがテーマになっています。それに、目線的には完全に中性です。性別はなくて、一人の人間として歌っています。

──「ヒカリ」の歌詞は面白くて、主人公が10代の男子だとすると、自分が好きな女の子を少し神格化して、光り輝く女神のように感じてしまうという思春期ならではの恋心とも解釈できます。

越野:本当ですか? 男の子って、そうなの?

西塚:個人差はあるだろうけど、わりとそうなんじゃないかな。

越野:そうなんだ。それは、考えたことがなかったです。でも、ラブソングだと捉えた人には、ぜひそのままにしておいて欲しいです。

西塚:いろんな風に解釈できる歌詞というのは、良いよね。「ヒカリ」は、今回の楽曲の中では今までのanderlustっぽさが一番ある曲という印象を受けたので、「Scrap & Build」に比べるとベースの音色とかも“ザ・J-POP”という方向性で自分らしさがある音を目指しました。フレーズ的にも楽曲を支えつつバックに徹する感じにはしたくないというのがあって。シンプルではあるけど、ドライブ感が出るようなポジショニングだったり、アプローチだったりを意識しましたね。

──楽曲に溶け込んでいながら存在感があるという、良質なベースになっています。あと、この曲は西塚さんも歌っていませんか?

西塚:いや、歌っていないです。

越野:メロディーがオクターブになっているところですよね? そこは、低い声も私が歌っています。

──そうなんですか? 中性的な歌詞に合わせて、2人で歌っているのかと思いました。

越野:オクターブ下を入れたのは、まさにそういう意図です。歌詞が中性なので、男性と女性が一緒に歌っているのが良いなと思って。真吾さんに歌ってもらうという案も出ていたけど……いつの間にかなくなっていたね。

西塚:うん。

越野:この曲では実現しなかったけど、真吾さんとハモッたり、ちょっとしたパートを真吾さんに歌ってもらったりもしたいんですよ。いつか実現させたいと思っています。

──それは、すごく楽しみです。それにしても、越野さんはすごく低い声も出るんですね。

越野:がんばって出しました(笑)。「ヒカリ」の全体的な歌は、さっきも話したように「Scrap & Build」とは違っていて。感情を込めるのではなく、歌詞に描いた情景や心情といったものを伝えることを重視した歌になっています。

──たしかに歌の表情は違っていますが、今作の4曲の歌はダイナミクスの幅が一層広がって、より胸に響く歌になっていることが印象的です。3曲目は、モータウンに通じるテイストをフィーチュアした「友達のふり」。

越野:この曲を、最初にプロデューサーの小林(武史)さんに聴かせてもらった時は、モータウンというよりは松田聖子さんとか、大瀧詠一さんみたいな印象を受けました。もちろん、そういったジャンルはモータウンがルーツですけど、どちらとも取れるようなサウンドでいくという意図のもとに作られたデモだったので。曲調的に今までの自分達にはなかったものですし、anderlust初のウインター・ソングです。

西塚:「友達のふり」は、ブラス・セクションが鳴っているのも良いよね?

越野:うん。ブラスはシンセとかではなくて、生のブラス奏者の方に吹いて頂いたんです。それも急に決まったんですけど、本当にスタッフの皆さんが全面協力してくださって出来上がった1曲ですね。

──温かみのある曲調と、自分が好きな男性に友達としか見てもらえない女性のせつなさを描いた歌詞のマッチングが光っています。

越野:ありがとうございます。本当にその通りで、結構ポップな曲だけど、歌詞は真逆で淋しいものにしたかったんです。女の子の心が崩れる瞬間を描きたいというのがあって、それをこういう曲で歌うと、より強く伝わるなと思って。それは、グリーン・デイの影響もありますね。彼らはロックでポップなのに、打ちひしがれている状態だったり、“俺の人生は終わっているんだよ”というようなことを歌っていることが多いんですよ。それがすごく好きで、自分なりに採り入れてみました。

──「友達のふり」の歌詞も実体験に基づいていたりするのでしょうか?

越野:いえ、これは違います。私は自分の実体験とかをもとにした歌詞だけではなくて妄想で書くこともあって、「友達のふり」は完全に妄想です。“私ベンチで夜空を見ながら泣いたことなんてないし”みたいな(笑)。“そんなロマンチックじゃないわ、自分”とか思いながらも書くという(笑)。私が「友達のふり」と同じ状況になって、相手の男に「彼女できた」と言われたら、その瞬間に思い切り張り手すると思います(笑)。でも、自分のそういうところではなくて、弱い部分を思い切り出したのが「友達のふり」です。この曲は、いしわたり淳治さんにも作詞に参加して頂いて、2人でキャッチーボールをするように相談しながら書き上げていきました。

西塚:「友達のふり」はサウンド的にちょっと昔っぽい感じなので、ビンテージのベースを使って、チューブ(真空管)のD.Iを使って、アンプもビンテージという組み合わせでいきました。フレーズも曲調を踏まえて、余計なことはしないというか。楽曲にフィットしていて、心地好くグルーブするベースということを意識しました。

越野:「友達のふり」はかなり淋しい気持ちで歌っていて、そういう意味では「Scrap & Build」に近いですね。「Scrap & Build」と違って妄想の世界だけど、主人公の女の子になりきるというか。それも私の中では新しい試みで、歌うのが楽しかったです。「Scrap & Build」と「友達のふり」は感情を込めていて、「ヒカリ」はフラット、もう1曲の「Stay With Me ep.2」は、その中間という感じですね。

──今回の歌は、全体的に今までよりも大人っぽい雰囲気になっている気もします。

越野:それは、無意識でした。大人っぽく聴こえるとしたら、今回は20歳の境界を越えて、初めて20代として歌っている作品でもあるので。そういうところが自然と出ているんじゃないかなと思います。それに、よりいろんな音域、いろんな力加減で気持ち良く歌えるようになってきているというのはあって。私は小さい頃から歌うことが好きで、もう声を出すだけで心地好いんですね。それは、普段家では、あまり喋らないというのもあるんですけど(笑)。

──えっ? 家では、あまり喋らないんですか?

越野:喋る相手がいないので。誰かいたら私は絶対に止まらないんですけど、喋る相手がいないんです(笑)。そういうところでも歌うとなるとすごく気持ちが上がって、いろんな歌い方を楽しめるんじゃないかなというのもあります。

──やりますね。今話が出た「Stay With Me ep.2」は、ウォームな味わいのシャッフル・チューンです。

越野:この曲は完全な自作曲ですけど、いつ頃作ったか覚えていないんです。いろんな曲がストックしてあって、もうゴッチャゴチャになっているから、いつ作ったか分からない曲が結構あって。でも、そんなに古い曲ではなくて、去年か今年だったと思います。

西塚:この曲はアレンジもanderlustでしたんですけど、最初にアンナちゃんが、こういう感じにしたいというデモを持ってきて。シャッフル・ビートはモータウンを代表するビートの一つだけど、モータウンの場合は軽やかでポップなイメージを受けるので、それよりはちょっと力強くて、グイグイした疾走感を出したいなと思って。なので、ベースはAメロとかはビートに合わせて軽快にしつつも、サビ・パートはウォーキング系のフレーズを弾いて疾走感を出しました。そこが、ポイントかなと思います。

越野:「Stay With Me ep.2」は1stシングルに入っていた「風船 ep.1」以来の“エピソード括り”の曲で、どういう意味なのとよく聞かれるんですね。でも、特に意味はありません(笑)。強いて言うのであれば、どこにでもある、他愛のない、オチのないような曲をエピソード括りで提示していくことに決めているんです。なので、「Stay With Me ep.2」の歌詞を書いた時に、「風船 ep.1」と同じようにオチがないまま終わる曲になったなと思ったので、タイトルに“ep.2”という言葉を付けました。

──なるほど。「Stay With Me」という曲があって、その続きを描いたということではないんですね。

越野:違います。それに、「風船 ep.1」の歌詞とも全く関係なくて、エピソード括りの2曲目ということです。

──越野さんの発想は、本当に面白いです。さて、2016年のanderlustはメジャー・デビューを果たし、良質なシングルを3枚出すという良い年を過ごすことができました。2017年は、どんな一年にしたいと思っていますか?

越野:今年は3月30日からここまでテンポ良くリリースをさせて頂いたんですけど、来年はもっとピッチを上げたいですね。走ってきた速度を落とさずに、むしろ上げるくらいの勢いで、より多くの人にanderlustの音源をどんどん届けていきたいし、ライブももっと沢山やりたい。ワンマンもやりたいねという話を、いつもしているんだよね?

西塚:そう。ツアーもやりたいし。



越野:ツアーやりたい! そういう風に活動の密度をさらに濃くして、2017年はanderlustが大きく成長する一年にしたいです。

西塚:アンナちゃんが言った通り、来年はもっと精力的に動きたいというのはありますね。と同時に、そういう中でanderlustのカラーというものを、どんどん強めていきたいと思っています。フェスとかにも出れると良いなと思いますし。

越野:フェス出たい! (スタッフに向かって)出たいなぁー、出たいなぁー(笑)。こうしてみると、私達は経験していないことが、まだまだ沢山あって。来年はより厳しい姿勢で活動に取り組んで、またいろんな初めてのことを経験できるようにがんばります。

取材・文◎村上孝之


ニューシングル「Scrap & Build」

2016年12月14日発売

【初回生産限定盤】(CD+DVD)SRCL-9234 ~9235  \1,500+税
[CD]
M1: 「Scrap & Build」
作詞:越野アンナ / 小林武史 / いしわたり淳治 作曲:小林武史 編曲:小林武史 / 豊田ヒロユキ 
M2:「ヒカリ」 【ソニー「ハイレゾ級ワイヤレス」CMソング】 
作詞:小林武史 / 越野アンナ 作曲:小林武史 編曲:小林武史
M3:「友達のふり」  
作詞:越野アンナ / いしわたり淳治 作曲:小林武史 編曲:小林武史

[DVD]
Tr1 「ヒカリ Music Video」
~anderlust プレミアム LINE LIVE(2016/8/21@Sony Music Sturios Tokyo)より~
Tr2 「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」
Tr3「若者のすべて」
Tr4「Scrap & Build」

●【通常盤】(CD Only)SRCL-9236  \1,296+税
M1:「Scrap & Build」
作詞:越野アンナ / 小林武史 / いしわたり淳治 作曲:小林武史 編曲:小林武史 / 豊田ヒロユキ
M2:「ヒカリ」 【ソニー「ハイレゾ級ワイヤレス」CMソング】 
作詞:小林武史 / 越野アンナ 作曲:小林武史 編曲:小林武史
M3:「友達のふり」
作詞:越野アンナ / いしわたり淳治 作曲:小林武史 編曲:小林武史
M4:「Stay With Me ep. 2」  
作詞:越野アンナ / いしわたり淳治 作曲:越野アンナ 編曲:anderlust / 彦坂 亮
M5:「Scrap & Build ~Instrumental~」
M6:「ヒカリ ~Instrumental~」

■配信情報
ソニー「ハイレゾ級ワイヤレス」
anderlust 3rd シングルカップリング曲「ヒカリ」配信スタート
【iTunes】https://itunes.apple.com/jp/album/id1169445987?at=10lpgB&ct=4547366284157_al&app=itunes
【レコチョク】http://recochoku.com/s0/anderlust/
【morahttp://mora.jp/artist/678626/

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