老舗であると同時に最先端の生産技術を有するカスタムIEMブランドのUltimate Ears(アルティメット・イヤーズ)から、新たなフラッグシップモデル「UE 18+ Pro」が発表された。7年間フラッグシップの座を守り続けた「18 Pro」から「18+ Pro」へバトンが渡されたわけだが、何がどのように変わったのか?本国から来日していたセールス・ディレクターのマイク・ディアスを直撃、話を訊いた。

◆UE 18+ Pro画像

──「UE Pro Reference Remastered(リファレンス・リマスター、以下UE RR)」以来、1年ぶりの新製品となりますが、フラッグシップの交代は久しぶりですね。

マイク・ディアス:我々にとって新しいフラッグシップが誕生するのは7年ぶりになります。多くのカスタムIEMブランドが毎年のようにフラッグシップを入れ替えていますが、他のブランドのようなサイクルで新製品を出すのはとても難しいですね。子供が生まれるようなもので、その時点でベストだというものを出すわけですから、そう簡単にそのベストを越えることもできないんです。開発にはとても時間がかかりますから。ただ今回の「18+ Pro」の誕生には、「UE RR」の技術が大きく関わっています。キャピトル・スタジオのエンジニアとの話の中から完成したトゥルー・トーン・ドライバーをうまく活用することで、「18 Pro」をさらなる高みにもっていける確信が得られたので、その開発に着手できたんです。


▲UE 18+ Pro。左が耳型を採ってユーザー専用に制作するカスタムIEM、右が誰でも使えるイヤーチップ付きのユニバーサル・モデル。

──新しいドライバーの存在が大きかったんですね。

マイク・ディアス:ポイントは2つあります。ひとつはトゥルー・トーン・ドライバーによって、高域の再生周波数帯域がさらに3KHzほど伸びたこと。

──あわせてネットワークの改善も?

マイク・ディアス:もちろんです。クロスオーバーも完全に新設計ですから。これまでの「18 Pro」はネットワークにPCBのサーキットボードを使っていたんですが、「18+ Pro」のハウジングの中には白い四角い箱があるでしょう?そこにインダクタが入っているんですが、これは「UEパーソナル・リファレンス・モニター(UEPRM)」で使われている技術です。これでクロスオーバーの品質がさらに向上しクリアでオープンなサウンドになりました。そしてもうひとつのポイントは内部構造の革新です。


▲左がUEPRM、右が18+ Pro。どちらにも小さな白いボックス型パーツが見える。

──個体差も吸収されているとか?

マイク・ディアス:我々は全てのモデルを3Dプリンタで制作していますが、その技術を取り込んだのは、少しでもお客さんを待たせないためのプロセス改善が目的でした。今は、その技術を内面の品質向上に向けて活用しているんです。カスタムIEMは人によってハウジングの形状が様々なので、これまではサウンドを伝える導管チューブをコントロールすることによってサウンドを均一化させてきました。特に高域はチューブの影響を大きく受けます。そこは我々が持つノウハウですが、完全に手作業なんです。そこで3D製作の技術を内部構造に活用し、形の違うハウジングにおいても音の個体差が生まれないようなサウンドエンジンを完成させました。出てくるサウンドは完全にプリセットされているので、どんなハウジングでも同じ音が出せます。「UE RR」で開発したトゥルー・トーン・ドライバーと今回のサウンドエンジンを組み合わせることで、新しい「18+ Pro」が誕生したわけです。

──ドライバーの個体差は問題ないですか?

マイク・ディアス:良い質問ですね。料理で言えば、どんなにいい素材を使っていてもちょっとした塩加減で味が変わってしまいますよね?ですから我々は、使用するドライバーもひとつひとつ全てチェックし、個体差を吸収するように組み込んでいるんです。これはフラッグシップの「18+ Pro」に限った話ではなく、「4 Pro」をはじめ全てのモデルで行っていることで、それをもってUEのサウンドシグネチュアを保証しています。業界の中でも極めて個体差の少ない製品を提供できていると思いますよ。ボックスの横に貼られている白いラベルに手書きでサインが入っているでしょう? 最終的に、品質を検証する最後の関門をクリアしたことを示す証です。


▲最終チェック管理者のイニシャルが赤ペンで入っている。

──「18+ Pro」は、これまでの「18 Pro」と比べてどのようなサウンドになりましたか?

マイク・ディアス:オープン感が増しました。以前の「18 Pro」が、薄い紙の箱をかぶせたような少し閉じこもった感じがあるとするならば、その箱を取り除いたような感じでしょうか。18KHzといった高域はほとんどの人が聞こえない領域ですが、音楽というのは“感じるもの”なので、そういったところも考慮しての設計となっています。

──なるほど。


▲左が7年間フラッグシップの座を守ってきた18 Pro、右が18+ Pro。

マイク・ディアス:感じ方には個人差があると思いますけど、私は少し低域が抑えられボーカル域の広がりが増していると思います。簡単に言うと、そもそも「18 Pro」は「11 Pro」と「7 Pro」のコンビネーションというイメージなんです。11+7=18だから「18 Pro」なんですよ。

──え?マジすか? それは初耳。

マイク・ディアス:実はそうなんです(笑)。今回はその上で「UE RR」の影響を受けていますから、そういう意味では、「18+ Pro」=「11 Pro」+「7 Pro」+「UE RR」と言えますね。

──ということは、「18+ Pro」というよりも「18 Pro Remastered」と呼ぶべきものなんですね。

マイク・ディアス:そう、まさにその通りです。実は我々も開発中は“UE 18 リマスター”と呼んでいたんですよ。そういう名前にするという案も実際ありましたが、既に「UE RR」が“リマスター”と呼ばれているので、混乱することを避け「18+ Pro」としたんですね。今まで「18 Pro」と「UE RM(リファレンス・モニター)」は対極とも言える全く違うサウンドをもっていましたが、それぞれが「18+ Pro」と「UE RR」に更新されたことで、双方のサウンドが近づいてきたと思います。実際「18+ Pro」も感度が抑えられていて、プレイヤーのボリュームを上げ目にしないといけない点も「UE RR」と同様です。使っているデバイスのフロアノイズを低減させるためでもあり、どんなデバイスで聴いてもサウンドシグネチュアができるだけ変化しないようにするための設計ですね。


▲左から11 Pro、7 Pro、そしてその両者のコンビネーションという18 Pro。


▲左から11 Pro、7 Pro、UE RR、そしてそれらの合体の18+ Pro。

──今回、同時にユニバーサルモデルの販売も正式アナウンスされましたが、これは日本市場のニーズに対する回答ということですか?

マイク・ディアス:そうです。正直なところ、ユニバーサルイヤホン分野への参入は他社に比べて非常に遅れましたが、やっとユニバーサルイヤホンに対するニーズに確信を持てたため、販売することとなりました。我々はカスタムIEMブランドですし、その分野のトップを走ってきた立場ですので、常にカスタムIEMがベストであると信じて疑わないわけです。耳型を採ってその人の耳に合わせて作るのですから、フィット感においてもサウンドの点でもそれに勝るものなんてないと思っているんです。

──同感です。真実だとも思いますし。

マイク・ディアス:ですから、同じ設計/サウンドであえてユニバーサルで作るメリットが、理解できていなかったんです。「ハンマーを持つ人には、すべてが釘に見える」ということわざのとおりですね。購入して一生使い続けてくれるお客様もいますけど、(自分の耳の形をしているため)中古で売れないというリセールバリューの低さに抵抗を感じる方もたくさんいることを知りました。中古市場が活況なのは日本独特なものですが、買い取り制度が充実していることで高価な最新機種も気軽に手に取れるようになるのは、素晴らしいことだと思います。

──ユニバーサルの誕生によって、UEの素晴らしさを気軽に試すことができますね。

マイク・ディアス:そもそも「オーダーして完成まで待たされるのも嫌だ」という方もいるんです。より多くの人がユニバーサルでUEの音を楽しんでハッピーになれるのであれば、それがいいですね。カスタムIEMでは他人の耳に入らないので、それがどんなにいい音でも人に聞かせてあげることができないという問題もありますから。…個人的にはカスタムIEMが大好きですけど(笑)。

──ユニバーサルで魅力を知り、そこからカスタムIEMへ興味が湧けばいいですね。

マイク・ディアス:そうですね。ユニバーサルを発売することでカスタムIEMのオーダーが減ってしまうのではないかというビジネス上の懸念もあったのですが、テスト販売の結果、それも杞憂でした。我々にとってさらにワンステップ前に進めたのは、大きな前進だと思っています。


──そうは言っても、ユニバーサル製作の工程はカスタムIEMとほとんど変わらないように見えますが。

マイク・ディアス:実はそうなんです。耳型をデータ化して入力する30分ほどの工程がないだけで、ハウジングの製作から組み込み/整形まで作業は全く変わりません。ユニバーサルのハウジングは、我々が有している10万個の耳型データから割り出して生み出したものです。全て手作業ですよ。

──「18+ Proユニバーサル」は日本(アジア)限定ですので、海外から多くの問い合わせがありそうですね。

マイク・ディアス:そうですね。他のモデルはどうなんだ?とか、色んな話がでてくるでしょうね(笑)。

──今後も楽しみにしています。ありがとうございました。

マイク・ディアス:ありがとう。我々のスローガンのとおり「改善に終わりはない」ですから、これからも楽しみにしていてください。

text by BARKS編集長 烏丸哲也


▲左がユニバーサル、右がカスタムIEM。ユニバーサルには別途イヤーチップ・セットが同梱しているため、その分ボックスも大きくなっている。

●Ultimate Ears 18+ Pro

2016年12月17日(土)発売
199,800円(税抜)
・入力感度 100dB@ 1kHz, 100mV
・周波数特性 5Hz~22kHz
・ノイズアイソレーション -26 デシベル(周囲音)
・インピーダンス 37.5 0hms@1kHz
・内部スピーカー 6 バランスドアーマチュア、4クロスオーバー
・接続I/F 3.5mm ステレオミニプラグ
・保証 1年間
※この製品は、ワイヤレス イヤモニターシステムや携帯オーディオプレーヤーに対応しています。また過酷なライブツアーにも耐えうるよう、堅牢なアルミ製ローディーボックスが付属します。

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