【ライヴレポート】SUGIZO、東京〜石巻公演「これからも皆とより深く強く繋がっていきたい」

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5年ぶりのオリジナル・アルバム『音』のプレミアム・エディション・リリースと同時に(※レギュラーエディション発売は12月23日)、名古屋を皮切りにスタートしたツアー<SUGIZO TOUR 2016“The Voyage Home”>が宮城県・石巻BLUE RESISTANCEにてファイナルを迎えた。石巻は、東日本大震災発生直後からSUGIZOがボランティア活動などで足繫く通い続けていた特別な地。BULE RESISTANCEのステージに立つのは2015年11月28日のX JAPAN公演以来約1年ぶりで、今回は自身のソロ公演という形で念願の帰還を果たした。先ほど公開したZepp Tokyo詳細レポートに続いて、東京〜石巻公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆SUGIZO 画像


石巻公演に先立ち、Zepp Tokyoにて東京公演が行われたのは、12月4日。アルバム『音』の冒頭を飾る曲であり、ラテン語で“怒り”を意味する「IRA」の緊迫感漲る強靭なエレクトロニック・ビートで幕開けて以降、新曲群と既存曲とを織り交ぜたセットメニューをほぼノンストップで畳み掛けていく。序盤のMCで「闇、憤怒、嘆き、すべてのネガティヴが音となって暴走しています」と自身が評したように、アルバム『音』は、誰にも憚る(はばかる)ことなく真っ直ぐに心の暗部をぶちまけた美しくも過激な電子音楽作品だ。SUGIZOは「その汚いものを是非、皆と一緒にかわいがっていけたらうれしいです」とも言葉を繋ぎ、この作品が、個人的ではあるが“開かれたもの”であることを示した。時には、赤い光を放つリボンコントローラーを流麗に振り回したり指を這わせたりして、魔術師のようにモジュール・シンセの音を操るSUGIZO。マニピュレーション&シンセサイザーを担うMaZDA、ドラムのkomaki、パーカッションのよしうらけんじをメインメンバーに、東京公演では3人のゲストが登場。背後の巨大スクリーンにはVJ ZAKROCKが手掛ける映像が映し出され、イメージを増幅させていく。


「NEO COSMOSCAPE」の中盤ではSUGIZOがパーカッションを担い、よしうらは入れ替わりにジャンベを叩き、スペイシーであると同時に土の匂いを感じさせるような野性味溢れるパフォーマンスで沸かせた。「Raummusik」ではミニマルなリズムに乗せて、羽が頬を触るような極めて柔らかいタッチでコードを奏で、一弾きするたび右手を柔らかく跳ね上げる。海面に顔を出すイルカの群れの映像とともに繊細なアルペジオを奏でた「ARC MOON」、深海とベリーダンサーとがオーバーラップする映像と情感迸るヴァイオリンがシンクロした「FATIMA」、そして圧巻だったのは腐敗した女神の大写しからスタートした「Lux Aeterna」。増え続ける難民、無くならない戦争、原発問題など世界・社会的な問題に対するSUGIZOの激しい怒りが焼き付けられたこの曲に、石巻で開催された<ap bank fes 2016>で意気投合したダンサーATSUSHI(Dragon Ash)がゲスト参加。髪を振り乱し鬼気迫る舞踏で、言葉にならない怒りを具現化した。


憤怒は「ENOLA GAY RELOADED」へと引き継がれ、スクリーンには黒いヒジャブ姿の女性が祈る映像が映し出される。鮮血のような赤いライトの中スモークが噴き出し、ドラム、パーカッションがこの日最強のアタック感で鳴り響く。SUGIZOはギターを奏でつつ“NO MORE NUKES PLAY THE GUITAR”と記された巨大なフラッグ振り回し、上半身裸となったATSUSHIはますます大きく体を使い、会場の熱の高まりを後押しする。「Decaying」では、もう一人のゲスト、ジャズ界で活躍するSUGIZOの盟友TOKUが登場。その狂騒的なエレクトリック・トランペットとSUGIZOの掻き鳴らす凶暴なギターフレーズとが絡み合い、トリップ感に包まれた。よしうらは後方で、なんと火花を散らしながら金属音を鳴らしており、これぞリアル・インダストリアルミュージック!と驚嘆。理性のタガを外し恍惚へと導く圧巻のSUGIZOミュージックに、会場は大きな拍手と歓声を送った。刃物のように鋭利なギターリフ、ピタリと音が止まる際の“間”に息を飲んだ「禊」に続き、「DO-FUNK DANCE?」にて再びTOKUのトランペットと共演、ダンサブルなリズムと緩急の変化に富んだゴージャスな展開に観客を巻き込み、快楽的なムードの内に本編を終えた。


アンコールでは、「今年、とても大切な、僕が大ファンだったアーティストが次々と“あちら”へ行ってしまい、虚無の中にいたんだ……」とSUIZOは語り始めると、X JAPANにも参加しているピアニストMAIKOをゲストとして招き入れた。「追悼の念、祈りを込めた曲」とSUGIZOが紹介したのは、デヴィッド・ボウイの「LIFE ON MARS?」である。MAIKOのピアノはどこまでも優しく、SUGIZOのヴァイオリンは慈しみ深く歌うようで、想いが痛いほどに伝わって来る。スクリーンに映し出された星々の姿はやがて銀河へと変わり、SUGIZOは白いボディの通称“プリンス・ギター”に持ち替えて「JUPITER」を奏で、鎮魂の音色を送り届けた。デヴィッド・ボウイ、プリンス、そして『音』がアナログ・シンセサイザー・メインの作品となった最大の理由ある冨田勲の相次ぐ逝去、SUGIZOの音楽に欠かせないディーヴァであり、2015年に早逝したOriga(『音』には彼女の歌声が織り込まれ、今なおSUGIZOをインスパイアし続けている)……祈りを捧げるように両手を合わせたSUGIZOの姿を見て、何人もの名前が胸に去来した。最後は、そういった魂と繋がり、受け取った念のすべてをエネルギーに変えるかのような迫力で「TELL ME WHY?」を放った。SUGIZOはこの日初めてヴォーカルを執り、力強くシャウト。ゲストも含む全出演者と一列になって並び、「本当にどうもありがとう。最高に愛しています!」と挨拶、余韻が冷めやらぬ中、ステージを去った。

   ◆   ◆   ◆

12月10日の石巻公演は、アンコールの「LIFE ON MARS?」がなかったことを除けば、東京公演と同様のセットメニュー。システム上の制約で映像演出はなく、ライティングも限定的でシンプルではあったが、200人というキャパシティならではの観客との一体感、熱の伝わる速さは抜群で、最終公演にふさわしい盛り上がりとなった。実はSUGIZOはこの数日前から体調を崩しており、高熱を押しての公演だったのだが、表向きにはそのような素振りは皆無。綿密なサウンドチェック、リハーサルにより開場が約20分押した際も、「お客さんが寒いから早く入れてあげて」とファンを気遣う言葉だけを繰り返していた。


訪れた人が名前を書き込んだ木札が壁や梁に所狭しと飾られているBLUE RESISTANCEならではの光景の中、観客に温かく迎え入れられたSUGIZO。手を伸ばせば届くほどステージの天井が低く、フロアとの垣根もない密室空間は、観客とバンドとを密接に結びつける効果も高く、1曲目の「IRA」から、中東の笛ナーイの怪しげな調べに心が異空間へと誘われていく。

「とっても思い入れのある、この地・石巻で、こうやって皆と最後のとっても重要な瞬間を体験できることが、泣きたいほどうれしいです、どうもありがとう」「とっても思い入れがあるこのBLUE RESISTANCEに、去年のX JAPANに引き続き、還って来られて本当にうれしいです。ここでも遠慮せずに、フルでセットメニュー、最後までノンストップで行くから、皆気合入れて付いてきて!」

とSUGIZOは煽ると、その言葉通り、手加減なしの攻めのステージを展開。「FINAL OF THE MESSIAH」では、よしうらに代わりkomakiがジャンベ演奏にトライ! 後方のパーカッション・セットに回っていたSUGIZOはスティックを叩いてkomakiを称え、よしうらのドラムと3者で小気味よい打楽器セッションを繰り広げた。「Raummusik」の静的な前半はじっと立ち尽くして聴き入っていた観客が、後半、リズムが4つ打ちに変化すると身体を揺らし始め、場の空気が変わるのが手に取るように分かる。映像は用いることができないものの、「ARC MOON」ではブルーと白を基調にしたライティングが美しく曲を彩り、ハープのように零れ落ちるSUGIZOのギターの和音に耳をそばだてた。「FATIMA」では仰け反るようにしてヴァイオリンを奏でる姿、「Lux Aeterna」では頭を左右に振り髪を乱しながら音の中を泳ぐようにギターを鳴らす姿をライヴハウスならではの間近な距離感で見て、その生々しさに息を飲む。

「ENOLA GAY RELOADED」で巨大フラッグを通常通り振ると天井に当たってしまうため、やむを得ずフロア側に侵入させるような形で横向きにはためかせていたのだが、頭上でなびく旗に観客は大興奮。どこまでも艶やかに伸びてく音色、大きく両腕を広げた後に祈るように両手を合わせ後、大きく開けた口から出てきた叫びそのもののような鋭利なフレーズ。言葉はなくとも、SUGIZOのギターからは多彩な感情が伝わって来た。「Decaying」ではよしうらが重たげなチェーンを持ち上げたり叩き下ろしたりして金属音を放ち、SUGIZOは狂乱のギターで吠え続ける。赤い扇情的なライトに照らされて雪崩れ込んだ「禊」は、フロアに背を向けた体勢でギターを弾きながら大きく仰け反ってみせたり、ジャンベを叩くよしうらと向き合って激しくヘッドバンギングしながらプレイしたり、と全身で音を表現。本編ラストの「DO-FUNK DANCE」では会場がダンスホールと化し、前へ前へと詰め寄せる観客に、SUGIZOもステージから身を乗り出すようにしてプレイし、密接な心身のコミュニケーションを繰り広げていた。

アンコールで再登場すると、「この石巻で2016年のツアーを終えることができて本当にうれしいです。来年は、ソロデビュー20周年、LUNA SEAもデビュー25周年だから、いろいろと動く可能性がある。お互い、一生懸命働きましょうね(笑)」とSUGIZO。本ツアーでは終演後、各会場でアルバム購入者を対象にサイン会を行っていることに言及し、「ライヴが終わった後はやはりヘロヘロに疲れてるんだけど、皆と直接対話ができるのがすごく幸せで」と語り、今後も続ける意向とのこと。「みんなと繋がっていられることが、とっても自分のエネルギー源で。こうやって直接細胞とDNAと皆のエネルギーと俺のエネルギーが“メイクラヴ”して。これがないとやっぱり生きていけないな、と思いますので」と、その意義深さを改めて言葉にした。石巻ライヴの翌日にはLUNA SEAの12月23日・24日さいたまスーパーアリーナ2DAYSに向けたリハーサルが開始すること、その後はX JAPANの活動が控えていることを明かしながら、「それはそれで、これはこれで。常に、SUGIZOという人間のパーソナリティーはここにいるので、これからも皆とより深く、強く繋がっていたら、うれしいです。本当にどうもありがとう!」と、ソロ活動を支えるファン、メンバー一人一人に感謝を述べ、「TELL ME WHY?」でライヴを締めくくり、「石巻の皆、最高です! また来年絶対還って来ます」と去り際に誓いの言葉を残した。


緻密に構築し尽くした音と、その土地への想い、ファンと対峙して初めて生まれる熱、予測不能な感情を写し込んだ音。それらすべて混ざり合い、美しくも不揃いで歪(いびつ)で、激しくも温かいSUGIZOの世界を味わった約2時間。長蛇の列をつくり待つファン一人一人とサイン会で丁寧に対話していた姿も瞼に焼き付いている。「来年もガンガン行こうと思います」と意欲を示したSUGIZOのソロ20周年の年2017年、一体何が起こるのか? 見守り続けていきたい。

取材・文◎大前多恵
撮影◎Keiko TANABE

◆Zepp Tokyo詳細レポートへ

◼<SUGIZO TOUR 2016 The Voyage Home>
2016年12月4日@Zepp Tokyoセットリスト

1.IRA
2.TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?
3.FINAL OF THE MESSIAH
4.NEO COSMOSCAPE
5.Raummusik
6.ARC MOON
7.FATIMA
8.Lux Aeterna
9.ENOLA GAY RELOADED
10.Decaying
11.禊
12.DO-FUNK DANCE
encore
13.LIFE ON MARS?
14.Jupiter
15.TELL ME WHY?

◼<SUGIZO TOUR 2016 The Voyage Home>
2016年12月10日@石巻BLUE RESISTANCEセットリスト

1.IRA
2.TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?
3.FINAL OF THE MESSIAH
4.NEO COSMOSCAPE
5.Raummusik
6.ARC MOON
7.FATIMA
8.Lux Aeterna
9.ENOLA GAY RELOADED
10.Decaying
11.禊
12.DO-FUNK DANCE
encore
13.TELL ME WHY?


■New Album 『音』

【Premium Edition:2CD(ALBUM「音」/ BONUS DISC)】
2016.11.29[Tue.] RELEASE
¥10,800(税込)
※豪華BOX仕様
※HMV、SGZオンラインで購入可能
▼特典1:Art Photobook B5サイズ
・撮り下ろし写真集
・レコーディングドキュメント写真集
・ライナーノーツ
・ロングインタビュー
・レコーディング使用全機材リスト
▼特典2:BONUS DISC
・「LIFE ON MARS?」

【Regular Edition:1CD(ALBUM「音」)】
2016.12.23[Fri.] RELEASE
¥3,240(税込)
※24Pブックレット
※12/23 iTuens配信


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