【インタビュー】SUGIZO、LUNA SEAとソロを語る「最も重要な要素は“音”そのもの」
■『音』を生んだ直後に作ったのが
■LUNA SEAの「HOLY KNIGHT」
──そんな作品だからこそ、逆に「やっぱりぜひ聴いてほしい」と思うなあ。
SUGIZO:自分の思いを吐き出すという排泄行為なんだけど、出来上がった作品を見ると「あーら、こんなにかわいい」みたいな(笑)。
──わかってくれる人、意外とたくさんいると思います。
SUGIZO:僕が気持ちいいと思うのは、しょせんマイノリティなんです。でもバンドを始めたころは、メジャー/マジョリティを目指して頑張るでしょ? 僕らも例外なくそうだった。それは、「気持ちいい」とか「楽しい」という音楽の根本的な衝動や観念よりも、競争や勝ちたいっていう勝負心から生まれているので、むしろスポーツ的でしたよね。それを乗り越えた今は、表現や芸術という意味ではとても純粋な気がします。
──このタイミングで出るべくして出てきた作品なんでしょうか。
SUGIZO:わかんない(笑)。
──また10年後に、同じようなことをやっているのかな。
SUGIZO:10年後? できればこんなに怒っている自分じゃないことを祈りますよ。やっぱり負のエネルギーはパワーを使いますからね。何か大きな革命があったらその先頭に立ってるかもしれないけど、ほんとは世の中のすべてのしがらみを無視して、世捨て人になりたいんですけどね。
──現代社会の様々な問題は、SUGIZOに大きな影響を与えてしまっているんですね。
SUGIZO:ものすごく。震災の影響もとてもあると思う。もちろん原発の影響もとてもある。テロの影響も、人種差別の影響も、移民、難民の影響もすごくある。やっぱりそこに自分はノータッチでいられない性分なんですね……。
──被災地には幾度となくボランティアに出向いていますし。
SUGIZO:難民キャンプで演奏したりすると、やっぱり難民の人たちと意識を共有してしまうしね。
──被災地に行くと、今でも震災の影響で人々が苦しんでいる現実に動揺します。
SUGIZO:少なくとも日本で起きてることは他人事じゃないし、僕の感覚だと世界中で起きてることがもう他人事じゃない。多くの人が災害や紛争に苦しんでる反対側では、戦争が起きれば起きるほど、武器を使えば使うほど儲かる人がいる。世の1%の超富豪たちはどんどん溜め込んでいてね、その巨大な格差に対して最も憤りを覚えます。紛争の被害者/難民の人たちは、その1パーセントの超富豪たちの収益の被害者ですよね。この不均一な世界っていうのはなかなかリセットできないし、それが資本主義そのものだし、もっと言うと、その1パーセントの人たちによって資本主義が作られてきたところもある。戦争がなくならない理由もまさにそこだし。そういうことを知り活動すればするほど、やるせなさと怒りしか生まれてこなくて、音楽家なのに何もできなくて、こういう作品が生まれてしまう。
──幸せをつかむ難しさもあるのかな。
SUGIZO:せめて、ほんの小さな最低レベルの幸せのひとつとして、自分がちゃんと安心できる場所とか帰る場所があるべきだと思う。
──そうですね。
SUGIZO:震災の被害者の方々に本当に感情移入してしまう。東北では未だに応急仮設住宅の人がいるわけですよ。世界では5千万人を超える人たちは家がないんです、故郷を追われ……。その人たち全員が富豪になるべきだとは言わないけど、ちゃんと安心して帰れる場所があってほしいと思っちゃうんです。その不均一さは辛く感じてしまう。だからといってどうもできないからこそ、自分の立場ゆえに何ができるかを常に自問自答し、自分ができること/自分がやるべきこと/自分がやることによって少しでも人々にいい影響があれば本望だなと思い、ただ全力で生きるしかないんです。……すみません。重たい話になってきましたね。
──でもこれを作品に吐き出したことで、次へ進めるわけでしょう?
SUGIZO:吐き出したものは汚物ですけど、すごく愛おしい汚物ができた(笑)。実はね、アルバム『音』を生んだ直後に作ったのがLUNA SEAの「HOLY KNIGHT」だったので、もう既に「HOLY KNIGHT」が綺麗な曲なんですよね。
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