【インタビュー】minus(-)、1stフルアルバム完成「2人でつくりあげてきた作品の最終盤」

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■サンプリングされたその弦を弾いた人の生死は
■電子音楽にはまったく関係ないところ

──森岡さん亡き後、minus(-)を続けていく、という決断はどの段階でなさったんでしょうか?

藤井:それは、どういう形態を選ぶかを決めた時期にもよるんですけど。minus(-)自体は別に、辞めるつもりもなかったし、曖昧模糊としたまま継続させてもいいかな、とも思ったし……その一方で、“ちゃんとやんなきゃいけないかな”とも思ったし。意外と、“決断する”というところまでは考えてなくて。

──キャンセルとなってしまったツアーのうち、8月13日の赤坂BLITZでのワンマンは決行され、最後に「AFTER IMAGES」を遠藤遼一さんの新録ヴォーカルで披露するなど、特別な場だったと思います。あのライヴを経て藤井さんの中で何か見えたものがあったり、“こういうふうにminus(-)をやっていこう”と気持ちが定まったり、逆に迷いが深まったりする部分はありましたか?

藤井:うーんと……まず、8月13日のライヴは、別に“特別”じゃないんですよ。森岡云々とはまったく無関係に、もともと8月13日にあのライヴをやるつもりで、ずっとプランニングして来たものだったので。

──たしかに、セットも大分前から決まっていた、とおっしゃっていましたね。

藤井:はい。たまたまそれがお盆の時期だったりして、合致はしてるんですけど、まったく特別でもなんでもなく。予め決められていたスケジュールのライヴであった、ということはまず一つあって。だから、それによって僕の考え方がどうこうなったわけでもなく。ただ、“すごくいいライヴができたな”というのは終わった後に思って。本当にあれは周りの人のいろんな協力があってできた、チーム戦の勝利みたいな、すごく充実感があるライヴだったし。それをまず、終えられて。だから……「決断した日っていつ?」って言われると、困るんです。

──森岡さんの存在というのはもちろん、曲の中には永遠に在り続けていくわけなんですが、森岡さんのヴォーカル音源をどういう形でライヴの中で扱っていくのか?というのは、悩ましいテーマではないかと思うのですが、どうお考えでしょうか?

藤井:結局のところ僕らの音楽は基本、電子音楽なので、例えば、弦のフレーズをつくった時に、サンプリングされたその弦を弾いた人の生死というのは、その音楽にはまったく関係ないところなんですよ。そういう意味ではヴォーカルも、電子的なデータとして存在している以上、サンプリングしたヴァイオリンの音を使うのと同義なので。それについては別に、“だって使えるんだもん、しょうがないじゃん”的な考えも当然、一つあって。だから、8月13日の段階では、まあ、あれが一つの正解だっただろう、とは思ってますけどね。

──その後初めてのライヴが、先日のJさんとの対バンで、次は12月28日の新宿ReNYワンマンになるわけですよね。今後は藤井さんが基本的には歌っていく、という形になるんでしょうか?

藤井:ゲストが入る時は入るだろうし、僕が歌いたいと思えば歌うし。まあ、ケース・バイ・ケースですね。ただ、ゲストヴォーカルをフルに据えて、という形は考えていません。それだとminus(-)じゃなくなっちゃうから。

──藤井さんが今のやり方を選んだ理由、考えの根拠にしたものは何だったんですかね?

藤井:うーん……何だろう? 表現が難しいんですけど、僕の中では、森岡賢がminus(-)を脱退したのとほぼ一緒の捉え方をしてるので。だから……もちろんこれはリスナー側からの捉え方にもよるんですけど、森岡賢の居場所としてminus(-)を求めてるんだったら、“今後はその期待には沿えないよ?”というのは事実です。かといって、森岡と始めたバンドなので、“minus(‐)=僕と森岡”というのは、根本的には残りますから。

■「ご自由に」ではある
■というのは一貫した僕の考え

──それにしても、お1人でアルバムをここまでの完成形に持ってこられるのは大変だったでしょうね。

藤井:いや、仕事ですから。

──でも、そんな“淡々と”という感じではありませんでしたよね?

藤井:いや、ウルトラ淡々ですよ! 「締め切りいつですか?」「じゃあ、ここでやるんで」という感じで。

──しんどかっただろうなあ、と勝手に想像していたんですけれども。

藤井:それ、たぶん幻想ですよ。“森岡がいなくなっちゃったから頑張ろう!”みたいなのは、一切ないので。

──そういう美談を求められても困る、と。

藤井:超、困ります!

──歌の録り直しができないことが最たるものですが、曲として「これでOKかな?」とか、「こうしたほうがいいかな?」という指針を求める時に、相談相手はいらしたんですか?

藤井:いや、そもそもminus(‐)で相談したことないんですよ。だから、作業的にはいつもと変わらないですよ。ただ、やり直しをしてもらえないのが一番面倒くさいというか、大変というか。既にあるものを、なるべくいい形にしていくしかないので。ある意味、もっともクリエイティヴじゃない作業が長かった、という感じですかね。

──「The Victim」で始まるのが意外でしたが、曲順はどのように決められたのですか?

藤井:曲順は、マスタリングの前日にやっとひねり出した感じですね。最後の曲を聴いてそのままループして1曲目に繋がる、ということだけは考えていて。まあ、それは僕のつくるものに関しては毎回そうなんですけども。あとは、ライヴで既にやっている流れもあるし、かといってそのまま踏襲しても面白くないので、ちょっと意表を突いたのも入れつつ、という。偶然の産物です。

──「Maze」以降の畳み掛け感がすごいな、と。

藤井:あんまりそんな気持ちもないんですけど(笑)。“皆ちょっと疲れてきた頃だから、この辺でこれを聴いたら、細かいところに目クジラ立てないよね?”というものは、後半に配置して。

──「Maze」のヴォーカルは、森岡さんが懸命に歌ってらっしゃる感じに胸を打たれます。

藤井:そうですか? 『G』に収録されているオリジナルはゲストヴォーカルがPicorinで。森岡の歌はいつレコーディングしたのかな? ちょっと覚えてないですけど。

──「The Victim」に関してはうっすら、元々のゲストヴォーカルだったkate(u crack irigaru)さんの声が入っていますよね?

藤井:うっすらどころか普通に入ってますよ。あの曲はキーがすごく低くて、僕、歌うにはちょっと辛かったんです(笑)。

──そういう現実的な事情もあって(笑)。

藤井:はい。それで“何かもっと欲しいな”と思って、足してみたんです。“あ、じゃあデュエットにしょう”と。

──あとは、藤井さんが歌われているのは、「No_6」。

藤井:これは最初から僕ですね。

──そうですね、『D』のリリース時から。そして「B612」はゲストヴォーカルのクガツハズカム(きのこ帝国・佐藤千亜妃のソロプロジェクト)さんが歌われていたのを、藤井さんが新録。ライヴではいつも藤井さんが歌っておられましたけども。<LUNATIC FEST.>の時も大評判でしたよね。

藤井:あ、そうですか? 今回が初音源化です。

──この曲「B612」でアルバムが終わるというのが意味深長で、いいですね。

藤井:うん。それで、冒頭の「The Victim」にそのまま繋がるので。

──始まりと終わりは重いのですが、繰り返し聴くうちに踊り出したくなるような、生命力のある作品だと感じました。でも、躍らせようとは思ってらっしゃらないんですよね?

藤井:まったく!

──もちろんそういう曲ばかりではないんですけども、躍動感があって、全体を通して聴くと“生きている”という感覚が持てる、というか。生きている人間ならではの律動、みたいなものを感じたんですけれども。

藤井:どうなんですかね? 今日がアルバムインタビューの初日なので、『O』の感想を聴いたのが実は今日が初なんですよ。

──そうなんですね。通して聴いた時に“こういうものが浮かび上がるようにしたかった”というものも、藤井さんの中ではないんですか?

藤井:僕が関わったどの作品に関しても、それを意図してつくったことはないです。だってそれは受け手の勝手だから。だから、さっきみたいに「生命力を感じる」と言われて、「マジっすか?」とか言いながら、それは聴き手の感受性が受け止めたものなので、「違います」とは、やっぱり言えないですよね。

──そして同時に、「こう感じてよ」というのも一切ない、と。

藤井:はい。だって、音楽でそれを提示してしまったらその一方向しかなくなっちゃうし。だから、「すっごく暗い」と思う人がいたらそれもそれでいいし、「超ハッピーな曲ばっかりですね」と言う人がいればそれはそれでいいし。「ご自由に」ではある、というのは一貫して昔から僕の考えなので。

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