(C) Photo by Sukita

デヴィッド・ボウイが地球上での使命を終え、宇宙へと帰還したのは2016年1月10日のこと。あれから早くも1年が過ぎようとしているが、ボウイに対する賞賛の声は止むことなく、残された作品のすべてに各方面から再評価の光が当てられている。それは単なるロック・クラシックスではなく、今もなおロックの未来を照らし続ける灯台。肉体はこの世を去ったが、その作品はついに永遠の命を得たと言えるだろう。

◆デヴィッド・ボウイ映像、画像

そんな中、ボウイの70歳の誕生日に、WOWOWで〈生誕70年記念 デヴィッド・ボウイよ永遠に〉と題した特集がオンエアされることが決まった。内容は三つのプログラムで構成され、ミュージック・ビデオやインタビューで構成する『洋楽主義#118 デヴィッド・ボウイ~追悼~』、伝説的なライブ映像『デヴィッド・ボウイ ジギー・スターダスト1973』、そして特に注目されるのが、本邦初公開となるWOWOW独自取材企画によるオリジナルドキュメンタリー『ノンフィクションW デヴィッド・ボウイの愛した京都』だ。"デヴィッド・ボウイと日本文化"という興味深いテーマを軸に、多くの関係者の証言を織り交ぜ、イギリス、ドイツ、日本、アメリカを巡るロケーションを敢行した壮大な映像と音楽。音楽家デヴィッド・ボウイの精神的内面に肉薄する、ファン必見のプログラムだ。

ボウイと親交があったというイギリス在住のチベット高僧による、生きることに悩んだ16歳のボウイが"仏教の僧侶になるつもりだった"という証言を皮切りに、次々と明かされる若き日の興味深いエピソード。ジギー・スターダスト全盛期の活躍に深く関わった、スタイリスト・高橋靖子、フォトグラファー・鋤田正義、ファッションデザイナー・山本寛斎らによる、当時の熱狂と興奮を蘇らせる生々しい証言がいい。1973年の初来日の頃から京都を訪れ、市井の人々と交わり談笑するボウイの姿をとらえた、鋤田正義撮影による写真がいい。写真に写る商店街の人々が当時を振り返り、口を揃えて"優しい方でした"と回顧する言葉に、ロック・スターの隠された素顔が覗くのもほほえましい。

プログラムの核心は、1970年代を通してプライベートで頻繁に訪れた京都での日々だ。アメリカのマーケットに挑戦し続けた1970年代前半、巨大なプレッシャーとドラッグの誘惑にさいなまれる日々の中、安息を求めて仏教美術や禅の思想に深入りしていくボウイの姿を、親交のあった大徳寺の僧侶やグッゲンハイム美術館学芸員の証言を通して浮かび上がらせていくシーンは、実にスリリング。中でも最重要人物として登場する、作家・教育者・東洋美術収集家のディヴィッド・キッドにまつわるエピソードは、ボウイとの関わりだけではなく、東洋の美と思想を考える上で、アートに興味を持つすべての人間を引き込まれずにはいられないだろう。




そしてもうひとつの核心は、1977年の傑作『ヒーローズ』に収められ、ボウイの日本文化へのリスペクトの象徴となった楽曲「モス・ガーデン」にまつわるエピソードだ。ベルリンのハンザ・スタジオの現在の様子をとらえた映像には、"ここであの『ベルリン三部作』が制作されたのか"と感激するファンは多いはずで、エンジニアをつとめたエデュアルド・マイヤーの証言にも、なるほどと膝を打つことは間違いない。ベルリンで知り合った服飾デザイナーとの交流や、「モス・ガーデン」のレコーディングで使われた琴がどうやってボウイの手に渡ったのか、など、細かなエピソードもいちいち楽しめる。

トータル・タイム67分間を通して、実際にボウイに接した関係者の証言を中心とし、ナレーションを入れずに言葉と音楽、美しい映像でつないでいく演出が秀逸だ。音楽評論家などは一切登場せず、代わりに日本文化研究家、学芸員、デザイナー、CMディレクター、僧侶など、思想・文化・芸術に関わる人々の発言を得ることで、ボウイの知られざる内面が鮮やかに目の前に浮かび上がる。これはデヴィッド・ボウイの精神的伝記であると同時に、西洋と東洋の文化の間でまったく新しいアートを生み出そうとした偉大な芸術家の物語でもある。ボウイのファンのみならず、ぜひ見てほしい素晴らしいドキュメンタリーの登場だ。

特集:生誕70年記念 デヴィッド・ボウイよ永遠に

●洋楽主義「#118 デヴィッド・ボウイ ~追悼~」
1月8日(日)夜6:00~ [WOWOWプライム]
アーティストやジャンルをフィーチャーし、旬の洋楽シーンをワンテーマ特集で放送してきたWOWOWの洋楽オリジナル・レギュラー番組。ミュージックビデオやライブ映像、インタビューなどで切り込んでいく。MCはあらゆるミュージックシーンに精通した田口トモロヲ。2017年最初の特集となる#118の放送では、デヴィッド・ボウイを追悼特集!10分拡大でお届けする。
田口トモロヲ:1957年生まれ。俳優、ナレーター、映画監督、ミュージシャンとマルチな活動を繰り広げている。俳優活動の傍ら、2009年よりパンクバンド「LASTORDERZ」に加入、定期的にライブも行っている。


photo Jimmy King

●デヴィッド・ボウイ ジギー・スターダスト 1973
1月8日(日)夜7:00~ [WOWOWプライム]
収録日:1973年7月3日 収録場所:ロンドン、ハマースミス・オデオン
ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、クイーンと並び英国を代表するデヴィッド・ボウイのロック史に輝く名盤『ジギー・スターダスト』発表後のツアーのロンドンでの公演をオンエア。


●ノンフィクションW デヴィッド・ボウイの愛した京都
1月8日(日)夜8:45~ [WOWOWプライム]
“デヴィッド・ボウイ逝去”の衝撃報道から1年。世界が知らないボウイの創造の源泉が京都に?!いま時空を超えてロンドン、ベルリンと京都が繋がる…渾身の独自取材企画。ボウイの生まれ故郷と、苦悩の時代から抜け出すべく制作に没頭したベルリンの録音スタジオを取材。時空を超え、ロンドン、ベルリンと京都が、一つの線でつながる―。新しい視点で、ボウイの創作の原点を探るドキュメンタリー。
出演:鋤田正義、山本寛斎、高橋靖子 ほか





「国際共同制作プロジェクト 1984~不朽のSF小説から生まれる過去・現在・未来~」

デヴィッド・ボウイが心酔し、舞台化を試みるも未完に終わったディストピア小説の金字塔「1984年」の世界を深堀りするオリジナルドキュメンタリー。WOWOWメンバーズオンデマンドで配信中
※「WOWOWメンバーズオンデマンド」のご利用について⇒http://www.wowow.co.jp/mod/

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