【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.19「ボーカルチェンジ」

年賀状の季節になりました。大人になってからあまり真面目に出さなくなってしまいましたが、子供の頃は丁寧に気持ちを込めて書いていましたよね。小学生の頃、鈴木家では「プリントごっこ」という画期的な年賀状マシンを導入しました。電熱球を爆発させて原画を焼き付け、そこに専用インクを載せて版画のように刷るやつです。ある年、干支をデザインするのはありきたりでつまらないと考えた自分は、IRON MAIDENのエディーをハガキいっぱいに印刷して新年の挨拶としました。2ndアルバム「Killers」のジャケットに描かれている、鉈を掲げてニヤッとしているあのエディーです。「新年早々縁起が悪い」「気持ちが悪い」と大不評でした。それまでも骸骨やお墓の年賀状を出したりしていましたが、この年ほど悪印象ではありませんでした。自分でも何でこんな絵を描きたくなってしまうのか不思議でしたが、叔父によると血筋だそうです。何と父親は戦地で戦う兵隊さんに骸骨の絵を描いた慰問袋を贈っていたというのです。返事には「骸骨さん、ありがとう」とあったそうです。無事に帰還していてほしいです。

IRON MAIDENはPaul Di'annoがボーカルをとっていた1st「Iron Maiden」と2nd「Killers」が好きです。上下にうろうろするメロディーを、ヴィブラートを少なく、身体から振り絞るように出すシャウトがかっこいいです。ハードロックではあまりない歌い方が新鮮でした。


3rdアルバムからボーカルがBruce Dickinsonに替わるのですが、「随分変わったな」という印象でした。DEEP PURPLEもRod Evans、Ian Gillan、David Coverdaleと替わる度に作風が変わっています。バンドにとってボーカルを変えるということは相当な危険を伴います。顔が変わる位の大変革です。どんなに歌が上手くても旧い曲は前のほうがいいと言われてしまいます。人間椅子もかつては「ボーカルを入れろ」とレコード会社に言われたことがあります。しかし和嶋くんと自分は頑に拒みました。二人とも弾きながら歌いたかったからです。今はそうしなくて良かったとつくづく思います。仮にそうなっていたらアルバム2枚位でメンバーチェンジが行われ、その度にインタビューで「今度のメンバーは最高だぜ。心から信頼できる友と出会ったんだ」などと語っていたことでしょう。ついでに、「バンド名を変えろ」と言われたこともあります。「人間椅子」を「NINGEN-ISU」にしろとも言われました。もちろん即答で断りました。

2017年も人間椅子は相変わらずこのままで進みます。28年間変わらない音楽、これが人間椅子の持ち味のひとつです。それでは皆さん、よいお年を。




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