この2016年から2017年に向けた年越しのタイミングを、幕張でおこなわれたフェス<COUNTDOWN JAPAN 16/17>の現場で謳歌した読者はどのくらいいるのだろうか。日本で音楽フェスが各地で盛んに実施されているのは周知の事実であり、その数の多さは“飽和状態”“過渡期”などと謳われて久しい。外国アーティストを積極的にブッキングするもの、邦楽に特化したもの、オーガニックな雰囲気やチルアウトを誘うもの、子供連れで参加したくなるインフラが充実したもの etc……フェス乱立の時代だからこそ、理念、空間作りのレベル、そしてライブの質が厳しく問われてくるのは当然だ。実際に、2016年夏にBARKSで展開した<フジロック>特集の〆としておこなった主宰者・SMASH日高正博氏へのインタビューでは、「フェスティバルは、お客さんが選ぶもの」「やる側にビジョンと夢がなければ、自然と淘汰される」という、フェス文化に対する氏からの発言があった。フェスが一大文化になったと言える現在、それぞれのフェスは一体どのようなテーマを掲げアイデンティティを確立しているのだろうか。

そのフジロックにとって2016年度は、20回目の開催に至った記念碑的な年となった。深夜も私たちを眠らせない「オールナイト・フジ」が復活したことを始め、レッチリやベック等をヘッドライナーに据えたラインナップも、世界基準の音楽に3日日間ずっと囲まれるという夢の具現化であり、日本を代表する音楽フェスとしての風格を感じさせた。さらに、保護者の同伴で入場料が無料になる対象が「小学生以下」から「中学生以下」に変更されたこともトピックとなった。こうした大胆な変化もいとわない姿勢は20年間貫かれ、常に期待と信頼を集めるのがフジロックである。

山の中という大自然に敢えて身を置き“不便益”も楽しむフジロックの好対照と言えるのが、同じく出演者に洋楽を交えながらも都市型フェスの代名詞である<サマーソニック>だ。2016年度は大トリのレディオヘッドが大きな話題を呼び、期待されていた「Creep」の演奏に沸き立ったことも記憶に新しい。当日フェスへの参加を決める友人も毎年筆者の周りには少なくないほど利便性のいいフェスである。

一方、邦楽の音楽フェスを代表するひとつが、<ロック・イン・ジャパン・フェスティバル>である。2016年度は4日間で計約27万0000人が訪れたというのだから、凄まじい。ロッキング・オン社が主催するというだけあり、邦楽ロック界隈を網羅できるラインナップに定評がある。そして、前述の3つのフェスと合わせて「4大フェス」とされているのが<RISING SUN ROCK FESTIVAL>。ライジングは、97年に初開催されたフジロックに続き99年にスタートしており、もはや老舗と言っていいフェスだ。北海道の広大な平野というとてつもない開放感に魅了され、リピーターが多いことも特徴だろう。

同じ北海道で2010年に産声を上げたのが<JOIN ALIVE>である。ロックもポップもアイドルも渾然一体となった出演者のバラエティ、そして遊園地を楽しむこともできるという特色が挙がるが、2016年度に話題を呼んだのが、サカナクション主催の野外オールナイト・レイブイベント<SAKANATRIBE(サカナトライブ)>が共同開催されたことだ。<JOIN ALIVE>の大トリを務めたサカナクションは、2日目の終演後に同フェス会場内にあるスキー場グリーンランド・ホワイトパーク山頂に移動し、このパーティーをおこなった。

と、これまで挙げたフェスのうち<ロック・イン・ジャパン・フェスティバル>以外は、イベンターが主催しているフェスだ。興行のプロが運営しているわけだが、近年の注目を浴びるフェスに、アーティスト主催のフェスがある。初年度に台風の打撃、という洗礼をフジロック同様に受けたとも言えるのが10-FEETによる夏フェス<京都大作戦>だ。(幻となったものの)結成10周年の2007年にスタートしており、彼らの地元・京都に集うのは彼らと共に邦楽シーンを率いるパンク〜ロック〜レゲエ〜ヒップホップのアーティスト。そしてこの2017年は、結成20周年にして<京都大作戦>も10周年という節目を迎え、まもなく1月14日&15日には宮城県で<東日本大作戦番外編>を開催する。

同じく京都でありながら、宇治でおこなわれる<京都大作戦>に対して、京都駅から徒歩でも向かえる梅小路公園で開催されるのがくるりによる<京都音楽博覧会>だ。まさに博覧会のように海外から招いたアーティストのステージも見ものであり、これまでに石川さゆりや八代亜紀といった演歌歌手も登場している。2016年度はMr.Childrenというビッグアクトもあった。何が言いたいのかというと、<京都大作戦>と<京都音楽博覧会>は京都開催の野外フェスの両雄でありながらも、こうも色は異なるのだから面白い。音楽で独自の世界を打ち出すことが生業であるミュージシャンがフェスを開催するということは、すなわち独自の理想郷・祝祭空間が描き出されるということだ。主宰者アーティストの音楽趣味やミュージシャン同士の交流がはっきりと可視化されるフェスという現場は、ファンにとっては興味のつきないところだろう。そして、ミュージシャンの地元愛が結実する舞台であることは言うまでもない。

その意味で、日本の年内最後の“夏フェス”と謳われているMONGOL800主催<What a Wonderful World!!>は外せない。沖縄で2009年から2年に一回開催されており、2016年度は11月初旬に真夏のような気候のもとで宴は開かれ、県外からも多くのファンがかけつけた。美しい青い海と空が無限のように広がりながら、時折頭上をジェット機が通過していくというシチュエーションのなか、豪華アクトによる演奏は時に人生賛歌のごとく時に時代の叫びのごとく、どれもがとてもエモーショナルに響いていた。音楽フェスを形成する要素には様々なメッセージが込められており、それは実際に足を運び身を置かなければ実感することは難しいという事実も、フェスの魅力のひとつ。そして勿論、紋切り型に理屈を説かれても身に沁みないことも音楽には伝達できるというのも明白な事実だ。佐藤タイジ(THEATRE BROOK)がオーガナイザーを務める野外ロックフェス<中津川 THE SOLAR BUDOKAN>は、“太陽光発電だけでロックフェスを行なう”をテーマに掲げられ、多くのアーティストから賛同を得ている。

一方で、エンターテイメント性に長けたアーティストが手がけるフェスの盛り上がりも近年非常にめざましい。氣志團による<氣志團万博>は2012年からは千葉県袖ケ浦市で毎年9月に開催されており、2016年度はMAN WITH A MISSION、UVERworld、VAMPS、GACKT presents 神威♂楽園、ゴールデンボンバー、AAA、ももいろクローバーZ、そして矢沢永吉という通常“ありえない”出演者の顔ぶれを誇った。また、T.M.Revolution 西川貴教が地元・滋賀県で開催している<イナズマロック フェス>は、ジャンルレスなミュージシャン勢に加え、2016年度はハリウッドザコシショウ、とにかく明るい安村、なかやまきんに君らお笑い芸人が幕間に登場し、娯楽性豊かな空間を創り上げた。また、2015年から9月6日が“松崎しげるの日”に認定されたことを受け、松崎しげるが主催する<黒フェス>も、“黒”にこだわった出演者やフードコーナーが話題を呼んだ。

アーティスト主催によるフェスにおいて、<HAWAIIAN6 & FUCK YOU HEROES presents 1997>に度肝を抜かれた音楽ファンは少なくないだろう。2006年に新木場STUDIO COASTで第1回目が開催されたこのフェスは、2010年までに計4回開催されている。メジャー/インディー問わず多くのロックバンドが出演したが、なんと全バンドがノーギャラ。参加者には「マナーを守る」以外のルールは課せられない。そしてチケット代は大型イベントとしては安価なものと、バンドのアティチュードそのもののような運営方針は伝説化しているといっても過言ではない。そして、同シーンの先駆者的な存在と言えるのが1997年に始動した<AIR JAM>である。Hi-STANDARDが新たな潮流を生み出したパンク〜ラウドシーンにおける国内最大級のこのフェスは、2016年に福岡で4年ぶりにおこなわれた。

また、2016年のフェスシーンのトピックとなったのが、幕張メッセで3daysにわたりおこなわれたV系フェス<VISUAL JAPAN SUMMIT>だった。“ヴィジュアル系”というカルチャーの誕生から約30年。YOSHIKIが発起人となり、日本中のヴィジュアル系ロックバンドが50組以上集結し、3日間で合計10万人以上という動員数もこのカルチャーの力強さを証明していた。

こうしていくつかピックアップすると、アーティストの新たな表現の場としてフェスを楽しむことは、フェスシーンが活性化されている現在の醍醐味だと思えてくる。SiM主催の<DEAD POP FESTiVAL>や、04 Limited Sazabys主催の<YON FES>など、若手ロックバンドが手がけるフェスの台頭にも注目をして欲しい。また、2017年にデビュー20年を迎えるスガシカオが<SUGAFES スガフェス!>をこれから初開催する。5月6日にさいたまスーパーアリーナで開催される同フェスは、5月3・4・5日におこなわれるロックフェス<VIVA LA ROCK>とコラボレーションをした室内型フェスだ。

これだけ“飽和状態”と評価されると、日本のフェスシーンに対して、思わずシーン全体を十把一からげに捉えそうになるかもしれない。だが、フェスが放つ個々の主張をキャッチし、自分にジャストなフェスを見つけ出すことは、年に一度の代えがたい楽しみに繋がるはずだ。2010年台の後半に突入したいま、各フェスは何を掲げ、何を見せ、何を鳴らすのか。BARKSは、つぶさにその動向を追い、音楽ファンにその魅力を提示していきたいと思う。

text by BARKS編集部(さ)

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