【インタビュー】フルカワユタカ、『And I’m a Rock Star』に「ドーパンがライバルじゃなくなった3年間」

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元DOPING PANDAのフルカワユタカが2017年1月11日、約3年ぶりの2ndフルアルバム『And I’m a Rock Star』をリリースする。同アルバムには2015年発表のミニアルバム『I don’t wanna dance』表題曲の再録をはじめ、FRONTIER BACKYARDやりぶに提供した楽曲のセルフカバーほか、Charisma.comのMCいつかがRAPで参加したナンバーなど、精度を高めた全10曲を収録した。

◆「サバク」ミュージックビデオ 動画

2016年のフルカワユタカは、Base Ball Bearのツアーへサポートギタリストとして参加したことをはじめ、ART-SCHOOLやthe band apartとの対バン企画、LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERSへのギタリスト参加など、自身のライブ活動やセッションに至るまで、実に精力的に駆け抜けた。そしてそれら経験は、自らの立脚点を照らし、前へ前へ歩みを進める原動力ともなったようだ。アルバムタイトルは『And I’m a Rock Star』。この言葉に込められた意志、これまでの3年間がもたらしたもの、収録全曲が示す現在のフルカワユタカのサウンド&ビジョンなど、深く濃く語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■鍵を掛けていた僕を外に出してくれたのは
■どう考えてもBase Ball Bearなんですよ

──約3年ぶりのフルアルバム『And I’m a Rock Star』が完成しました。1stフルアルバムが『emotion』というタイトルだったのに対して、今回はライブMCの自己紹介的な一節であり、ご自身の愛称を冠したもので。まずはこのタイトルを付けた理由からお訊きしたいのですが。

フルカワ:3曲目に収録した同名の楽曲「and I'm a rock star」は、先に曲があって歌詞は後から付けたものなんですね。じゃあ、“And I'm a Rock Star”という言葉をどの時点で使おうと思ったかというと、アルバムの制作が決定して、そのすぐ後だったと思います。

──当初から、アルバムタイトルとしてこの言葉を使おうと?

フルカワ:そうだったと思います。なんでそうしたかといえば、いろいろな気持ちがあって。その中からひとつ具体的な例を挙げると、ベボベのギタリストとしてツアーを廻ったじゃないですか(※2016年のツアー<Base Ball Bear LIVE BY THE C2>にサポートギタリストとして参加)。SNSとかも含めて、ベボベのファンのコが僕を呼ぶときの名前が、“フルカワさん”だったんですよ。それは小出くんとかが僕のことをそう呼んでたからだと思うんですけど、“スター”とか“ロックスター”ではなかったんです。

──ベボベのメンバーやファンからしたら、敬意を込めて“フルカワさん”だったということですよね。

フルカワ:ドーパンのボーカル&ギターの人だ、ということを認識していたとしてもね。当然のことなんだけど、さらにジェネレーションが下の人たちにとっては、僕が“ロックスター”と呼ばれていたという感覚もない。そういうことをベボベのツアーをきっかけに知って……正直、ちょっと寂しかった(笑)。

──“ロックスター”という愛称は過去のものではないという意識?

フルカワ:うん、もうちょっと“ロックスター”という言葉を使っていきたいというのはありますね。活動はそれなりにしてるんだけど、特に2015年はあまり表に出ることがなかったし、“ロックスター”という発信の仕方をしていなかったから、自分自身薄々感じてたんですけどね。“ドーパンのハヤト、タロティ、スター”のスターの部分がどんどん“フルカワユタカ”になっているという、寂しさ(笑)。

──では、このタイトルは“ロックスター”を取り戻すという意志の表れですか? それとも新たに作り上げていくという決意?

フルカワ:……ああ、それはどっちなんでしょうね。でも、今の自分の発言を振り返ってみると、どうやら前者ですよね(笑)。とはいえ、昔MCで、“And I’m a Rock Star”と言っていたのと今では、意味合いが変わってきているという自覚もあるんです。

──というと?

フルカワ:先輩から“おい、スター。コーヒー買ってこい”って言われるような“ロックスター”だっていう昔話はネタとしてあったんです。だから“ただのニックネームですよ”みたいなね。一方で、“I’m a Rock Star”と言うことで自分を鼓舞してたし、それが周りを挑発的に揶揄するトゲトゲした自分のキャラクターとか、ステージングの武装にはなっていたんです。でも今は、“ロックスター”に居心地のよさがあるし、懐かしさもある。“I’m a Rock Star”ということがウソじゃなくなっているというか、決して武装とか装飾ではないんです。

──今は“ロックスター”という言葉自体に、煌びやかさとか東京ドーム何日公演みたいなものとは違うものを感じている?

フルカワ:昔はそれこそミック・ジャガーとか、そういうものとして発言していた“ロックスター”という言葉が、今は愛称も込みで、自分の中のロックスター像みたいなものに変化して。それは、いわゆるステレオタイプのマッチョでパワフルなスターではないんですね。BARKSで、ああいう長いコラムを書くのもロックスターだし、神経質な一面を持っているのもロックスター。そういう僕の名札代わりとして、“ロックスター”と言うことに照れがなくなった自分に気づいたというか。そう呼ばれることもイヤじゃないし、愛着が沸いちゃってるというのがあって今回タイトルにしてみようかなと。そこが大きいですね。

──今だからこそ付けたいタイトルだと言うこともできます?

フルカワ:ドーパン解散後の1枚目でこのタイトルを付けたら、とてつもなく牙を剥いた感じになっちゃうし、もちろん当時そういう意識はまったくなかったですから。3年経って、自然とこのタイトルに落ち着いたという。もし、僕のことを知らない人が見たら、“すげえタイトルだな!?”と思うかもしれないけど、今の僕のこのナチュラルな感じを知っている人からすると、“なにか思うところがあって付けたタイトルだろうな”と察知してもらえるんじゃないかな。

▲2ndフルアルバム『And I’m a Rock Star』

──ナチュラルという意味では、アルバムのアートワークも着飾らないロックスターがフィーチャーされていることが印象的で、それについては後ほどうかがいたいと思います。で、今回はアルバムのプレス資料にフルカワさん自身の言葉が記されていますよね。そこでは収録曲が、“インディーズ時代のドーパンを彷彿とさせるパンクロック”、“十八番とも言えるダンスロック”、“後期ドーパンに数多く登場したファンクネス”、そして“ドーパン時代にはなかった歌の世界観”といった4つにカテゴライズされていて。つまり、過去から現在までが音楽でつながった内容にもなっているという。

フルカワ:特に『emotion』リリース以降、とても自然につながった3年間をありのまま表現するという感覚でしたね。振り返ると、『emotion』のリリースツアー(※<emotion tour 2014>)をブッキングから何からひとりでやってみて、もしかしたらドーパン解散のときよりも打ちのめされた気がするんですね。語弊があるかもしれないけど、案外ひとりだったら思う存分やれて、違う世界が広がるんじゃないか?っていう気持ちもあったんです、そういう気持ちがなきゃやれないしね。ところが、それがどん詰まったときの絶望感。“あれ?そうはならないんだ”っていう。

──それは楽曲制作とか、創作面とはまた別の話ですよね。

フルカワ:そうです。ツアーの動員とか物理的なことで。もしかしたら、もう思うように音楽ができないのかなって。そういう意味で、『emotion』を出した後のほうが心がボッキリ折れましたね。すべてをひとりでやるには限界があると思ったからこそ、SMA(※所属事務所)に戻って。そこからの前を向いていく過程みたいなものが、このアルバムにはあるのかもしれない。決して後ろ向きではないけど、バカ騒ぎしているわけではない。そこを汲み取ってほしいわけではないんですけど、それが真実ですね。

──『emotion』リリースから現在まで、ドーパン時代の<無限大ダンスタイム>の復活があったり、Base Ball Bearへのサポート参加、ART-SCHOOLやthe band apartとの久々の対バン、LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERSへの参加などありましたが、それらも制作には影響しています?

フルカワ:2016年のことはすごく関係していると思いますね。ま、アートだけは関係ないです、全然。

──相変わらずART-SCHOOLというか木下さんに対してはトゲトゲしい発言を(笑)。

フルカワ:ははは。『emotion』の頃は、“ドーパンと違うものを”とか“越えなきゃ”と思ってたんだけど、3年を経て、ドーパンが解散したことを目の敵にしなくなったんだな、というのがあるんですよ。アートとの対バンライブ(2016年5月12日@東京キネマ倶楽部<ヨカノスゴシカタ 3>)で、たまたま僕のサポートベースが元アートの宇野ちゃんで。そこにキングもいるんだったら、ステージに上げちゃえ(※第三期ART-SCHOOLが一夜限り復活した)っていうサプライズというかイタズラを仕掛けたじゃないですか。僕がまだ解散を目の敵にしているような状態だったら、それを自分からやったかな?と思うと、むしろ“僕のサポートは宇野ちゃんじゃないベースにしなきゃ”とか、そういう気の遣い方をしてたと思うんです。

──ご自身の中でドーパンに決着がついた?

フルカワ:それにはやっぱり、ドーパンの曲を解禁したことが大きくてね。もうひとつはベボベでツアーを廻って、バンドを思い知ったというか。間近でバンドを客観的に見られたのは初めてでしたから。“ああ、そうだ。そうだった”という気づきがあったし、バンドっていいなとも思った。でも、僕はソロなんだということも同時に知るわけですよ。

──それも自然の流れの中で。

フルカワ:そう。鍵を掛けまくっていた僕を、自然と外に出してくれたのはどう考えてもベボベなんですよ。……っていうと、彼らも切羽詰まった状況で必死だったし、以前BARKSのインタビューでお話したような経緯もあるところで僕に声を掛けてくれたわけだから、こういう言い方もヘンなんですけど。……ただ、導いてもらったなというところは確実にあるんです。後輩だし、世の中的には僕が助けたカタチになったわけだから、ホントにヘンなんですけどね。そこから、先祖返りじゃないですけど、バンアパと対バンしたり、市川さんのサポートギタリストとして声を掛けていただいたり。この3年間は本当にデカかった。だから、ドーパンがライバルじゃなくなった3年間なんですかね。

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