セパルトゥラの14枚目となるスタジオ・アルバム『マシーン・メサイア』が2017年1月13日にリリースとなる。1980年代からバンドを支えるギタリスト、アンドレアス・キッサ―に話を聞いてみた。

◆セパルトゥラ画像



──ニュー・アルバム『マシーン・メサイア』は、以前のアルバムと比べてどのような仕上がりになっていますか。

アンドレアス・キッサ―:『マシーン・メサイア』というタイトルからもわかるように、今回の作品は社会のロボット化についてのアルバムだ。俺たちの中に残っている人間的な部分を失わないように気を付けなくてはいけないという話さ。エロイ・カサグランデがドラムになってから2枚目のアルバムだけど、彼がバンドに加入してほぼ6年経ち、曲作りなどにも参加したり、お互いとても慣れてきた。多くの場所でたくさんライブもやったし、色々バンドとして新しい可能性が出てきた。Nuclear Blastに所属しているというのも大きいね。彼らは色々とサポートしてくれるので、とても安定した活動ができるんだ。さらにスウェーデンに行って、イェンス・ボグレンと仕事をしたのもとても良い刺激になったよ。彼は若いけれども、非常に多くの色々なスタイルのバンドとの仕事を経験しているから、様々なノウハウを持っている。バンドにもいろいろなアイデア、モチベーションをもたらしてくれたよ。スウェーデンに行って、音楽や歌詞など、レコーディングに関係あることのみに100%集中できたし。

──イェンス・ボグレンをプロデューサーに選んだ理由は何ですか。彼の仕事で特に気に入った作品があったのでしょうか。

アンドレアス・キッサ―:イェンスを使おうというのは、デリック・グリーンの提案だったんだ。いつもとは違うプロデューサーとやりたいというのもあったし、今回のアルバムはヨーロッパ風味が欲しかったんだ。俺たちが最後にヨーロッパでレコーディングしたのは『Chaos A.D.』の時だった。プロデューサーはアメリカ人だったけど、Rockfield Studiosというブラック・サバスやレッド・ツェッペリンが使ったスタジオで録音したんだ。あの時はイギリスらしいヴァイヴを求めていてね。ニュー・モデル・アーミーのカヴァーもやったし。イェンスはオーペスやパラダイス・ロスト、ムーンスペル、アングラの最新作、クリーターなどと仕事をしていたから、色々な例を参照することができた。彼との仕事は素晴らしかったよ。さっきも言ったように、確かに若いのだけどアイデアにあふれている。テクノロジーにも明るいし、音楽的にも細部に気を配ることができるんだ。ミキサーとしての腕も確かだし、彼がすべてをやってくれた。パーフェクトな選択だったと思う。音の仕上がりにもとても満足している。過去の俺たちの作品とはまったく違うだろう。それがニュー・アルバムに求めていたものだからね。俺たちは同じことを繰り返したくはないんだ。ここ数年『The Mediator Between Head and Hands Must Be the Heart』のツアーや30周年記念ツアーで世界中あちこちに行って、その中で色々と新しいアイデアが溜まってきていたので、ニュー・アルバムを作るのにパーフェクトなタイミングだったと思う。

──アルバム冒頭からいきなり遅い曲で驚きました。


アンドレアス・キッサ―:セパルトゥラのアルバムにはいつも新しい要素があるからね。そうやって俺たちは新しいファンを獲得したり、古いファンを失ったりしてきた。『Roots』が出た時などは、あれを気に入らないファンがたくさんいたよ。音楽性が変わって、パーカッションなど新しい要素がミックスされて。でも俺たちは新しいチャレンジをすることを恐れたりはしない。結成から32年経った今でも、俺たちは新しい要素を取り入れ続けているのさ。いつでも新しいセパルトゥラを作り続けているんだ。メンバーが変わってもね。マックスやイゴールがいたときもそうだった。『Schizophrenia』と『Roots』なんて、まるで別のバンドの作品のようだろう。『Chaos A.D.』『Arise』『Beneath』…みんな違うアルバムさ。今回のアルバムも例外じゃない。タイトル曲は、長いイントロみたいなものなんだ。オペラの序曲のようなね。アルバム本編を予感させるようなものだ。濃密でスローでヘヴィで、スクリームからメロディックなものまで、デリックの様々な声が入っている。「Revolusongs」のEPでマッシヴ・アタックの「Angel」をカヴァーしたときも、似たようなことをやった。この曲はとても評判が良くて、映画のサントラなどにも使われたんだ。「マシーン・メサイア」は、この何年も前にやったマッシヴ・アタックのカヴァーからも影響を受けているんだ。とても長くてビッグなイントロさ。

──「ファントム・セルフ」はヴァイオリンが入っていますが、これはアラブ音楽の影響でしょうか。

アンドレアス・キッサ―:そうだよ、イェンスのアイデアなんだ。俺たちはブラジルで曲を書き、もちろんプリプロダクションもやって、なるべく完成型に近づけるのだけど、同時にレコーディング・スタジオで新しいことを試したり、インプロをやったりする余地も残すようにしている。色々と足したり引いたりできるようにね。最終的にレコーディングをするまでに、プロデューサーにもいろいろと決めてもらうんだ。ヴォーカルやギター・ソロ、パーカッションなどを足す余地を残しておいてね。それでイェンスが、チュニジアのヴァイオリン・アンサンブルを使おうというアイデアを出したんだ。スタジオのあるエレブルーは大学の街だから、世界中から学生が来ているんだよ。それで彼はチュニジアのヴァイオリン・アンサンブルの指揮やアレンジをしている人と知り合いだったんだ。(訳註:<ラウドパーク2016>で来日したミラスのプロデューサーKevin Codfertがストリングス・パートの作曲、編曲をし、キーボーディストのElyes Bouchouchaがオケの指揮をしたと思われる)で、彼は実際にチュニジアまで行って、ヴァイオリン・パートを録音してきたのだけど、「スウォーン・オース」などでもヴァイオリンが曲にぴったり合っているだろう。「ファントム・セルフ」は、ヴァイオリンとの会話のような、新しいギター・ソロの可能性を開いたと思う。イェンスのアイデアで曲のクオリティが上がったよ。このアラブ風のヴァイオリンにしても、俺たちにとってまったく新しいものだったから。もちろんチェロやヴァイオリンを使ったことはあったけど、こういう使い方は無かったからね。

──「アイスバーグ・ダンセズ」ではハモンド・オルガンも大々的にフィーチュアされていますね。

アンドレアス・キッサ―:この曲はインストで、もちろんセパルトゥラは以前も「Inquisition Symphony」とかインストをやったことがあるけれど、どれもメタル的なものやブラジル風のものだった。前作の「The Vatican」のイントロを書いた知り合いが、キーボード・プレイヤー/アレンジャーなのだけど、彼にハモンドをちょっと入れてくれないかと頼んだんだ。非常に良い結果になったと思うよ。「アイスバーグ・ダンセズ」はチャレンジだったし、ぜひライブでもやってみたいね。ライブでどうなるか楽しみだよ。俺たちはいつでもインプロの余地を残しているし、それによって曲はさらに良くなっていく。この曲の仕上がりには非常に満足している。激しいしブラジル的でもあるし。

──『マシーン・メサイア』はコンセプト・アルバムなのでしょうか。

アンドレアス・キッサ―:いや、そういうわけではないよ。色々なトピックを扱っているからね。『マシーン・メサイア』というのは世の中のロボット化についてだけれども、例えば「ファントム・セルフ」はアイデンティティの喪失についてさ。ある男性が車の事故にあったあと、世界の認識の仕方やフィーリングなど、すべてが変わってしまったという興味深い事象があるんだ。手足を失ったときに、ファントム・リム(幻肢)という現象があるだろう。これを概念的に、世の中や自分自身の認識の仕方にあてはめて、「ファントム・セルフ」としたんだ。「アイスバーグ・ダンセズ」はインストで歌詞も無いけれど、言いたかったのは、この世にはまだ氷山が存在しているということさ(笑)。氷山というのは動き回って、同じところに決してじっとしていない。だからダンスと表現したんだ。この曲はムードが大きく変わっていくんだ。「レジスタント・パラサイト」はGMO、つまり遺伝子組換え生物についてだ。遺伝子組換え食品とかね。これもロボット化のひとつだ。『マシーン・メサイア』の主なテーマは、社会のロボット化だけれども、決して未来のことではない。現在起こっている話さ。スマートフォンにGPS、今こうやって使っているSkype(笑)。こういうものは完全に俺たちの生活の一部になっている。俺たちが持っている人間性というものとのバランスを保持していく必要があるということだよ。今では社会とのつながるにはスマートフォンが一番の手段だろう。インターネットもどこにでもある。

──あなたはとても資本主義を嫌っているようですが。

アンドレアス・キッサ―:(笑)、いや、別に嫌っているというわけではないよ。ただ、人々がテクノロジーが作り出す屑のようなもののために、自分を見失ってしまうのは悲しいことだと思うんだ。結局そういうものってただのゴミでしかないのに。例えばiPhoneも今では7だろう?6がついこの間出たばかりなのに。型落ちしたものはもはや博物館的価値もなく、ただのガラクタになってしまっている。人間は必要もないものを作りすぎているのさ。そういう必要もないものに金やエネルギーを使ってしまっている。幻想のために自分を喪失してしまうのさ。

──日本盤には「ウルトラセブンのうた」がボーナス・トラックとして収録されていますが、なぜこの曲を取り上げたのでしょう。

アンドレアス・キッサ―:ウルトラセブンは1970年代にブラジルでも非常に人気があったんだ。俺もウルトラセブンやウルトラマン・シリーズを見て育った。ウルトラセブンはハートを持ったロボットだろう(訳註:…と彼は思っている)。ロボットだけれども、正義のために戦っているのだから、アルバムのコンセプトにもぴったりだったのさ。デリックは日本語で歌わなくてはいけなかったから、大変だったと思うけど。

──日本語の発音は非常に綺麗でした。

アンドレアス・キッサ―:コーチを雇ったんだよ。(レコーディング・スタジオのある)エルブローに住んでる日本人さ。イェンスが連れてきたんだ。それで一語一語すべてチェックしてもらったんだ。もし何を歌っているのか聞き取れとれるのなら良かったよ。

──ほぼパーフェクトな発音ですよ。

アンドレアス・キッサ―:それなら俺たちにとってもパーフェクトだ!

──ヘヴィメタルとの出会いはどのようなものでしたか。


アンドレアス・キッサ―:初めて激しい音楽に興味を持ったきっかけはKISSだった。1981年にクイーンが初めてブラジルに来て、大きなスタジアムでプレイをしたのだけど、その時は母親が行かせてくれなかったんだ。幼すぎるからってね。だけど1983年にKISSがサンパウロに来て同じスタジアムでプレイをしたときは、行かせてくれたんだ。『Creatures of the Night(暗黒の神話)』のツアーで、メイクをやめる直前だった。パイロなどをたくさん使ったKISSのライブを見て、すべてを変えられてしまった。本当に大きな衝撃だったよ。それでバンドをやり、ミュージシャンになりたいと思うようになったんだ。もちろんAC/DCやアイアン・メイデン、ブラック・サバス、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープルのようなヘヴィなものも聴いていたし、これらのバンドは今でも大好きだ。それからメタリカやスレイヤー、ヴェノム、メガデス、アンスラックスのようなよりヘヴィなものを聴くようになっていった。これらの美しいバンドは、セパルトゥラにも大きな影響を与えている。何と言ってもKISSが俺にとっては原点だね。

──セパルトゥラに加入したときに、ここまでビッグになることを想像できましたか。

アンドレアス・キッサ―:もちろん夢は持っていたよ。だけど夢にしてもここまでのことを思い描けなかったな(笑)。夢見ていたよりも、ずっと大きなことを成し遂げたからね。何しろ当時の夢は、ブラジル国外をツアーすることだったんだよ。大きなフェスティヴァルに出たり、ニューヨークやロンドンに行ったりね。それがゴールだったんだ。このゴールは『Beneath the Remains』の時に達成した。ロンドンのマーキー・クラブに出たり、NYのリッツでKing Diamondとプレイしたり。本当に素晴らしかった。これでバンドを続けていくパワーを得たんだ。『Arise』のときにはさらに先へと進んで、初めてブラジル国外でのレコーディングもできた。Scott Burnsとね。Roadrunnerからフルのサポートを得てね。『Arise』では初めて日本にも行くことができたし、素晴らしい経験だったよ。オーストラリアにも行ったし、Rock in Rioにも出られた。オジー・オズボーンともプレイできたしね。『Arise』はセパルトゥラを世界的なバンドにしてくれたし、『Chaos A.D.』を作る足がかりにもなった。俺たちのキャリアの中ではすべてのアルバムがステップアップになっていると思う。そしてさっきも言ったように、世界中を旅することで、より良い音楽、アルバムへの新たな可能性へと心を開くことができた。

──来日の予定はいかがでしょう。

アンドレアス・キッサ―:早く日本に行けるよう願っているよ。しばらく行っていないからね。前回行ったのは2001年だから。あれ以降色々と変わったよ、レーベルもドラマーも。今はパーフェクトな状況さ。ニュー・アルバムも出るし、できれば2017年か2018年には行きたいね。ツアーのスケジュール次第ではあるのだけど。ニュー・アルバムの日本盤には「ウルトラセブンのうた」も入っているんだし、絶対日本には行かなくては。カラオケみたいにさ、俺たちの演奏に合わせて皆に大合唱してもらわないと(笑)。待ちきれないよ。とても楽しみにしている。そして15年も日本に行けていないことを申し訳なく思うよ。また日本のファンとの関係を再構築したいね。

──パラリンピックの閉会式で演奏するというのはどのような気分でしたか。

アンドレアス・キッサ―:とても素晴らしかったよ。これも夢よりも素晴らしいという状況のひとつさ。こんなことは夢見ることすらなかったからね。世界中の色々なアーティストが出て、おそらく何百万人という人が見ている中で、セパルトゥラが、俺がブラジルのシーンの大きなパートを占めるメタルという音楽の代表として演奏したんだからね。マラカナン・スタジアムで、しかもパラリンピックの閉会式でプレイできるなんて最高だったよ。それにブラジルもとてもよくやったと思う。政治的な経済的な問題が色々あった中で、とても良いオリンピックになった。その一部を担ったという事を、とても誇りに思うよ。

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世界的行事の閉会式に登場するなんて、セパルトゥラは正にブラジリアン・ドリームの体現者だ。それにしてもエクストリーム・メタル・バンドのメンバーが、パラリンピックの閉会式で演奏をするなんて、ここ日本では想像もできない事件である。

14thアルバムということからもわかるとおり、『マシーン・メサイア』は大ベテランによる作品である。アルバムも14枚目ともなれば、やることもパターン化し、保守的になっても何ら不思議はない。商業的に成功していればなおさらのこと。しかし「新しいチャレンジをすることを恐れない」と言い切るセパルトゥラは、守りに入ろうなどとは夢にも思っていない。さらに新たな要素を取り入れても、必ずセパルトゥラの作品になるところも凄い。日本盤限定DVDには14年、フランスのヘルフェストにおけるステージが収録されているが、これを見ればわかるとおり、新旧の作品を織り交ぜた彼らのステージに一切の違和感はない。どんなスタイルの楽曲を演奏しても、そこには必ずセパルトゥラの刻印が押されているのだ。

前回の来日から既に15年。「ウルトラセブンのうた」も収録されている『マシーン・メサイア』のリリースを機に、ぜひとも久々の来日を果たしてもらいたいところである。

取材・文:川嶋未来(SIGH)


2017年1月13日 世界同時発売

セパルトゥラ『マシーン・メサイア』
【50セット通販限定 メンバー直筆サイン入りカード付きCD+ボーナスDVD+Tシャツ】¥7,000+税
【初回限定盤CD+ボーナスDVD】¥3,500+税
【通常盤CD】¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き/日本語字幕付き
1.マシーン・メサイア
2.アイ・アム・ジ・エネミー
3.ファントム・セルフ
4.アリシア
5.アイスバーグ・ダンセズ
6.スウォーン・オース
7.レジスタント・パラサイツ
8.サイレント・ヴァイオレンス
9.ヴァンダルズ・ネスト
10.サイバー・ゴッド
《ボーナストラック》
11.チョーズン・スキン
12.ウルトラセブンの歌
【ボーナスDVD】日本盤限定フルライブ映像《2014年6月20日 ヘルフェスト》
1.ザ・バチカン
2.カイロス
3.プロパガンダ
4.インペンディング・ドゥーム
5.マニピュレイション・オブ・トラジティ
6.コンヴィクテッド・イン・ライフ
7.ダステッド
8.リフューズ/レジスト
9.アライズ
10.ラタマハタ
11.ポリシア
12.ルーツ・ブラッディ・ルーツ
日本盤限定ボーナス映像
1.ウルトラセブンの歌(カラオケ ver.)
2.「アイ・アム・ジ・エネミー」ミュージック・ビデオ
『ビルディング・ア・メサイア』アルバム・メイキング映像

【メンバー】
アンドレアス・キッサー(ギター)
デリック・グリーン(ヴォーカル)
エロイ・カサグランデ(ドラムス)
パウロ Jr.(ベース)

◆セパルトゥラ『マシーン・メサイア』オフィシャルページ