【インタビュー】大村憲司「ギターの一音だけで心をぐっとつかまれちゃうことが最大の特徴」

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■ポンタ×憲司の関係でその日の演奏が決まっちゃう
■それほどあの二人にしかできない演奏がおそらくあった


――「ベスト・ライヴ・トラックス」シリーズについて話してください。

野口:このシリーズ全タイトルには、憲司さんのすべてが詰まっているので、これを聴いてもらいたいですね。聴いてくれればわかります。


▲『レインボウ・イン・ユア・アイズ~ベスト・ライヴ・トラックス VII』

――その、「ベスト・ライヴ・トラックス」シリーズの第七弾『レインボウ・イン・ユア・アイズ~ベスト・ライヴ・トラックスⅦ』ですが。こうやって、亡くなったあとにアーカイヴ音源が出続けるというのは、日本人のプレイヤーでは非常に珍しいことではないかと。

野口:そうですよね。本当に、よくぞこういう音源が残っていたなということに感謝です。とにかく音がいいんですよ。憲司さんのギターがよく聴こえる。そしてポンタさん、高水健司さん、青木智仁さんたちとの演奏の一体感、そのメンバーでしかなしえないスリリングな反応が聴けるのが素晴らしいなと思います。このシリーズは、テーマ別に1から7まであって、それぞれにテイクが違うので、“今日の憲司さんはこんな感じなの”ということが、すごくわかる。

――最新作に収録された「Rainbow in Your Eyes」も、1978年の六本木ピットイン、2日連続公演の2バージョンが入っていますが、二つはかなり違います。

野口:そうなんです。憲司さんは、同じ演奏を絶対にしない。そして、そのどれもがいい。たぶんポンタさんの調子とかでも変わっちゃうんだと思うんですけど。ポンタさんも毎回違うし、ポンタ×憲司の関係で、その日の演奏が決まっちゃう。それほど二人はツーカーで、あの二人にしかできない演奏が、おそらくあったんだと思います。それを聴くのがすごく面白いですね。


▲村上ポンタ

――今回は、珍しいアコースティック・ギターのデュオが入っていたりして。

野口:伊藤銀次さんとのデュオですね。今までのCDには入っていなくて、とても良いですよ。銀次さんもこのセッションは、すごく印象に残っていたみたいですね。

――あらためて、今回のCDの聴きどころというと。

野口:タイトル曲の「Rainbow in Your Eyes」はレオン・ラッセルの曲なんですよ。原曲は泥臭いスワンプなんですが、それがこうなるか!というのにビックリですね。すごく心地よい軽快なフュージョンで、憲司さんらしい演奏だと思います。この頃は“ギター・ワークショップ”というシリーズをやっていて、その一環として録音されたものなんですが、緊張感がありつつ、楽しんでいる感じがすごくあって。70年代の憲司さんを知るにはすごくいい音源だと思います。あとは先ほど紹介した、伊藤銀次さんとのデュオでボーカルものをやっている、これもいいですよね。それと、オリジナル曲で「Tokyo Rose」と「Charlotte」という、実はこれ、憲司さんの中ではちょっとレア曲なんです。それが聴けるのもいいかなと思いますし、B.B.キングのカバーの「Rock Me Baby」みたいな、お得意のブルースも入っているし、聴きどころがすごくあるアルバムだと思います。ガーシュウィンの「Summertime」もよくやっていましたが、原曲とは全然違っていて、憲司節で弾いていて、いいなあという感じですね。

――このシリーズは7枚出ているので。みなさん、ぜひさかのぼって聴いていただければ。

野口:そうですね。とにかく全部違うので、それぞれの良さがすごくあると思います。

――今日はありがとうございました。それにしても、大村憲司という人が、いなくなったあともこれほど広く深く、様々な人に影響を与え続けていることに驚かされます。

野口:意外な人が、大村憲司を好きだと言っているんですよ。the pillowsの真鍋さんとか、売れっ子セッション・ギタリストの田中義人さんとかも、すごく好きみたいです。わかる人はわかるんだな、と思いますね。パッとつかまれた人は、忘れないんでしょうね。そういう感じがします。

取材・文●宮本英夫

リリース情報

『レインボウ・イン・ユア・アイズ~ベスト・ライヴ・トラックス VII』
品番/価格:STPR007/¥2,400プラス税

〈収録曲〉M1:Rainbow in Your Eyes レインボウ・イン・ユア・アイズ
1978.10.21 六本木ピットイン
(Words&Music:Leon Russell)
ミュージシャン:大村憲司(G)/村上”PONTA”秀一(Ds)/小原 礼(B&Vo)/坂本龍一(Key)/ペッカー(Per)


M2:Tokyo Rose トーキョー・ローズ
1997.4.12 チキンジョージ
(Music:大村憲司)
ミュージシャン:大村憲司(G)/村上”PONTA”秀一(Ds)/青木智仁(B)/小林信吾(Key)

M3:I Want to Talk to You アイ・ウォント・トゥ・トーク・トゥ・ユー
1994.3.31 六本木ピットイン
( Music: David Tyrone Walker)
ミュージシャン:大村憲司(G)/村上”PONTA”秀一(Ds)/青木智仁(B)/小林信吾(Key)

M4:Rock Me Baby ロック・ミー・ベイビー
1994.3.31 六本木ピットイン
(Words& Music: Joe Josea/B.B.King)
ミュージシャン:大村憲司(G)/村上”PONTA”秀一(Ds)/青木智仁(B)/小林信吾(Key)

M5:While My Guitar Gently Weeps ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス
1994.4.14 日清パワーステーション
(Words&Music: George Harrison )
ミュージシャン:大村憲司(G&Cho)/伊藤銀次(G&Vo)

M6:Summertime サマータイム
1997.4.26 六本木ピットイン
(Music:George Gershwin)
大村憲司(G)/村上”PONTA”秀一(Ds)/青木智仁(B)/小林信吾(Key)

M7:Charlotte シャーロット
1989.5.20 神戸メリケンパーク
(Music: 大村憲司)
大村憲司(G)/村上”PONTA”秀一(Ds)/高水健司(B)/続木 徹(Key)/重実 徹(Key)

M8:Rainbow in Your Eyes レインボウ・イン・ユア・アイズ
1978.10.20 六本木ピットイン
(Words&Music:Leon Russell)
ミュージシャン:大村憲司(G)/村上”PONTA”秀一(Ds)/小原 礼(B&Vo)/坂本龍一(Key)/ペッカー(Per)

書籍情報

『大村憲司のギターが聴こえる』
発売:2017年2月1日
定価:(本体2,800円+税)
仕様:A4変型版/152ページ/付録:CD
ISBN 9784845629916
[Amazon.co.jp]https://www.amazon.co.jp/gp/product/4845629917/
●ギター・マガジンの全インタビュー再録
●バイオグラフィー
●ギター・コレクション、機材、所有レコード
●プライベート・グッズ・コレクション
●写真アーカイブ
●本人執筆による文章、スコアの再録
●オリジナル作品解説
●参加作品解説
●参加作品リスト
●アーティストが語る大村憲司
●ギター・スコア
「Left-Handed Woman」、「Georgia On My Mind」、「Maps」
●大村憲司をめぐる論考
etc.
【CD収録曲】
「Georgia On My Mind」PONTA BOX(1997年11月30日@横浜BAY HALL)より
「Latin Stuff」アルファ・フュージョン・フェスティバル(1978年12月@新宿紀伊国屋ホール)より
「I Ain’t Got Nothing But The Blues」ケンポン・バンド(1998年3月2日@六本木ピットイン)より

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