【連載】CIVILIAN コヤマヒデカズの“深夜の読書感想文” 第一回/辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ』

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こんにちはこんばんわ初めましていつもありがとうございます。コヤマです。
CIVILIANというバンドで歌を歌ったりギターを弾いたり曲を作ったりしています。
もともと本を読むのが好きだったので、こういったことをさせて貰うことになりました。
独断と偏見による深夜の読書感想文、取り上げる本を読んだ人もそうでない人も、ほうほう、なるほど、などと思いながら読んで頂けたら幸せです。
(最初に断っておきますが、物語のネタバレを含みます。肝心な部分への具体的な言及は避けますが、ご了承の上読んで頂ければ幸いです)

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【第一回 辻村深月 『オーダーメイド殺人クラブ』】

■誰もが「(殺しの)やる気スイッチ」を持って暮らしている

最初はこの方です。コヤマにきっと合うと思う、と多くの人におすすめして頂きましたが、恥ずかしながら辻村さんの本は読んだことが無く、でも今となっては第一回にこの人を選んで良かったと思っています。

なんでしょうねこの感じ。全くもって他人事とは思えないこの感じ。びっくりしました。僕は中学生の頃、長生きなんて絶対にしてやるものかと心から思っていて、無為にだらだらと人生を消費していくくらいなら二十歳くらいまでに死んでしまいたいと思って確かに暮らしておりました。なので読んでいくうちに、傷を容赦なく抉られるような感覚と、同時にある種の懐かしさも感じて、そして、振り切ったように見えても今もその気持ちの延長線上を自分は生きているのだなぁと改めて気付かされた本でした。

実はもう一冊、「ぼくのメジャースプーン」も同時に読みまして(内容に関しては今回は触れませんがこちらもとても良い本でした)、辻村さんという方は「こちら側」と「あちら側」の境界に立つ人間を表現する人なのだなぁと思いました。良い本でした。
「オーダーメイド殺人クラブ」も「ぼくのメジャースプーン」も両方とも学校が舞台の話ですが、スクールカーストやクラス内のヒエラルキーの描き方もとてもリアリティがあって、自分が中学・高校の時はどうだったっけな、と思い出しながら読んでいました。ちなみに僕は昔から派閥やグループなんていうものに全く疎いほうで、当時は自分がクラス内のあるグループに「属している」なんて感覚は皆無だったのですが、思い返してみると僕は、「オーダーメイド~」の中の言葉を借りて言うと「昆虫系」でした。きっと「何考えてるのかよく分からないオタクっぽいやつ」だったと思います。どんなに属していないと思っていても、気付くと気付かざるに関わらず人は必ず何かに所属しているものですね。「居場所が無い」という居場所に属していたり。

さて、この『オーダーメイド殺人クラブ』。
「死にたい」「消えたい」と本気で考えたことがある人間がこの世に一体どれだけいるのかは僕には分かりませんが、僕を始めとしてそういった人間は確かに存在していて、世の中は時としてそれらに”中二病”やら”かまってちゃん”やら、様々な言葉をかけてくるものです。「死にたい」は恐らく比較的多くの人が(程度の差はあれど)一度は思った事があり、そして大抵の人間にとってそれは一過性のものでしかなく、通り過ぎてしまえば「何故あんなことを毎日考えていたのだろう」ということさえも分からなくなってしまうような、そんな気持ちなのだと思います。いつまで経ってもその気持ちが無くならない僕や皆のような人間もいますが。生まれてから「死にたい、消えたい、いなくなりたい」と思った事が本当にただの一度も無い人がいるのなら会ってみたいです。

主人公の女の子アンは、クラスで隣の席に座っている、しかしほぼ話したことのない徳川のとある素顔を知って、その徳川に「自分を殺してくれ」とお願いします。それも、今までに誰もやったことのないようなセンセーショナルな方法で、末代まで語り継がれるような衝撃的な事件として殺してくれ、と。死んだ後に評論家ぶった大人から、やれ心の闇がどうのこうのなんて安っぽく語られてすぐに消費されてしまうのではなく、世の中や大人達や同級生たちに鉄槌を下すような、あるいは自分達の後に続くであろう「少年A」予備軍たちへの希望となるような、それはそれはとんでもないやり方で死のうと画策し、その計画を徳川と二人で練り始めます。成功の暁には望み通りの死が訪れる、オーダーメイドの殺人です。

音楽にも「死ぬこと」を歌った歌は数多くあります。死ぬという状態は人間を含めた生物が最後に行き着く終着点であり、(死後の世界の概念などは別として)もうその先などなにも無い「本当の終わり」の状態です。それは、生きている限り誰も避けることができません。僕らは毎日毎日生きながら、同時に少しずつ少しずつ死んでいます。
逆に言えば、死は誰の元にも平等に訪れる福音のようなものなんじゃないかと考える時があります。富める者も貧しい者も、優しい人間も下種野郎も、みんな最後には等しく死にます。そう考えれば、いま自分が感じている苦痛も不自由も不条理も理不尽も、いつか必ずちゃんと終わってくれるのだ、と思えて、胸の奥が不思議と落ち着いてくる時があります。人が死を迎える間際、脳が死を感知すると大量の快楽物質が分泌され壮絶な気持ち良さの中で息を引き取るのだという話もありますね。

アンは、「センスのない」同級生達や、母親や、中途半端な事件を起こす少年A少女Aたちや、この世の中に対して、自分と徳川こそが新世代の少年少女Aであると示すため、奇麗なままの自分で終わらせるため、徳川へオーダーメイド殺人の相談を持ちかけます。しかし、その後に起こる様々なことをきっかけとして、アンは次第に「自分がもうじき殺される」ということそれ自体に救いを見いだしていきます。もうすぐ死ぬのだ、そうすれば全て終わるのだ、だから辛くとも耐えられる、あと少しの辛抱なのだから、と。アンと徳川、クラスメイト達、母親、教師達、様々な思いが繋がったり離れたりしながら、ついに決行の日が近づいて…というお話。
最後にどうなってしまうのかは言及しませんが、読み終わった後に真っ先に思ったのは「アン、良かったね、本当に良かった」で、次に思ったのは「でも本当に本音を言うと××××××××××××××(伏せ字)」でした。これをはっきり書いてしまうと間違いなく結末が想像ついてしまうので書きませんが、あああ書きたい。僕は×××××××でもある意味ハッピーエンドだったと思うよ。あと徳川ね。徳川もある意味非常にシンパシーを感じるキャラクターでした。いやこれ結末の予想を付けられないように感想書くのかなり難しいな。

通り魔や猟奇殺人やテロやその他沢山の事。いつも思っていたのは、「あと少し何かが違っていたらこの事件を起こしていたのはたぶん自分だった」ということでした。今までの人生で気に喰わない人間、自分を傷付けてきた人間を想像の中で何度も殺したり、顔が変形するまでぶん殴って相手のぐしゃぐしゃに潰れた顔を想像して溜飲を下げたり、自分が相手を口汚い言葉で罵倒する姿を想像して「よし、これでもう許そう」ということが多々あったんですが、多分誰でもそうなんじゃないでしょうか。澄ました顔してるけどみんな一人や二人いるでしょ、頭の中で殺した奴。僕も誰かに殺されてるかも知れませんね。でもある意味そのお陰で実際の行動に移さずに済んでいるなーという思いもあって、誰にでも何かのきっかけでオンになる「殺しのやる気スイッチ」のようなものが頭の中に仕込まれているのだと思います。そして人はそれを一生悪戦苦闘しながら飼い慣らして、大多数の人はスイッチをオンすることなく一生を生きていくのです。
頭の中だけで済んでいることが良いことなのか悪いことなのか自分には分からないのですが、そして多分これからも色んな人を頭の中で殺しまくると思うのですが、それこそが「こちら」と「あちら」の境界だと思っています。やってしまう人間か、踏み止まれる人間か。でもどうでしょうね。例えばもし自分の家族や大事な人が惨殺されたら、やった奴を同じ目に遭わせてやりたいですよね。
「オーダーメイド殺人クラブ」の中でアンと徳川は、「あちら側」へ行こうとしたのです、物凄く真面目に真剣に。あちら側へは行けたのかな。僕が言えるのは結局やっぱりこれだけです。本当に良かったね、アン。


以上、辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ』の読書感想文でした。
「おいおいそりゃちげーよ、そんなんじゃねーよこの作品は」というご意見もありましょうが、独断と偏見でと断っておきましたので、そこはご愛嬌ということで。
それではまた。

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