【レポート】新山詩織、ツアーファイナルで「この一年はなくてはならない一年だった」

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新山詩織が1月21日(土)、3rdアルバムをタイトルに冠した<全国ツアー2016-2017「ファインダーの向こう」>ファイナル公演を開催した。同ツアーは12月18日に地元・埼玉からスタートし、札幌、仙台、福岡、大阪、名古屋と年を跨いで敢行されたもの。そのファイナルとなった東京・TSUTAYA O-EASTは、“新山詩織というファインダー”を通して形成した楽曲の魅力を存分に味わえる二時間半となった。

◆新山詩織 画像

映写機独特のフィルム音とともに、サイドスクリーンに投影され言葉と新山詩織の声がこう語る、“私には何が見えるだろう”。そして新山詩織のモノローグに導かれるように、ツアーで訪れた土地、会場の風景が次々と映し出された。フィルムの回転音とシンクロするように、心地よいインストが会場を包み込むと、暗いステージにバンドメンバーと新山詩織の姿が現れた。一瞬の間の後、新山詩織自身の声でライブのスタートが告げられた。「ファインダーの向こう」。


1曲目はアルバムのオープニング曲「あたしはあたしのままで」だ。会場中が手を頭上に挙げてリズムを打つ同曲は、2016年6月にリリースされた8枚目のシングルでもある。パフォーマンスからはどこか大人っぽさが感じられ、一年前に観た新山詩織のライヴから、さらに成長したステージをみせてくれるのではないかという期待が膨らんでいく。続く2曲目も最新アルバム収録曲から「部屋でのはなし。」。さわやかな疾走感にちょっぴりセンチメンタルをのせ、はにかむような笑顔がまぶしい。

「改めまして、<新山詩織全国ツアー「ファインダーの向こう」>東京ファイナルへようこそ!」──新山詩織

小柄な身体からは想像できない力強い声で会場をあおると、ジャジーで妖艶さも漂わせる「気まぐれ」、歌詞に描かれる“夕闇”“夜明け前”に象徴される仄明かりのようなやさしいノスタルジーで会場を包み込む「もう、行かなくちゃ。」を続けて披露。すっかりステージに引き込まれたオーディエンスに向かって、「東京! 盛り上がってますか?!」と茶目っ気たっぷりに投げかけると、改めて自分自身の言葉を会場へと伝える。20歳を迎えてからのこの一年、自身がどうあったか、を。

「この一年はなくてはならない一年だった」──新山詩織

「“挑戦という言葉”をテーマに過ごした」という2016年は、初のドラマ出演(月9ドラマ「ラヴソング」に宍戸春乃役で出演)を果たし、劇中歌も手掛けた。このドラマと楽曲をきっかけに、新たなファンを含めたくさんの出会いがもたらされたと語る。そして、「心を込めて歌います」という言葉に続けてギターの音が繊細に響くと、その出会いをつくってくれた曲、福山雅治作詞作曲「恋の中」へ。新山の言葉通り、詞のひとつひとつ、音のひとつひとつを大切に綴り、今まさに恋をしている幸福感と切なさがじんわりと染み渡っていくような楽曲を歌い終えると、「ありがとう」と感謝をひと言。ステージが暗転した次の瞬間、オーディエンスの前にはギターを置き、ハンドマイクを持った新山が浮かび上がった。

「最近の口癖なんですけど、この間、20歳になったと思ったら、もう来月21(歳)です(笑)。この一年で、大人の仲間入りもしたかなということで、少し背伸びをして大人な雰囲気でお届けしたいと思います」──新山詩織

というMCとラグジュアリーなサウンドにのせて届けられた「午後3時」の甘い空間から一転、“♪もうどうしようもない わかってるよ でも簡単に泣きたくはないの”という感情をぶつけるアカペラで始まった「絶対」では、シンプルなアレンジが彼女のヴォーカルをより際立たせ、感情を吐露する激しさが伝わってくる。

再びギターを手にし、つま弾かれた楽曲は「糸」。映画「古都」のエンディング曲としてカバーした中島みゆきの名曲だ。これまで数多くのアーティストによってカバーされてきたナンバーだが、新山が歌う「糸」の魅力は無垢、触れた人を浄化するような癒しの1曲となった。最新アルバム収録曲「四丁目の交差点」を披露すると、ライブも中盤へ。

「ありがとうを今伝えたい」というモノローグとともに、再びサイドのスクリーンに光が灯った。「今 ここにいる」をBGMに、スクリーンで上映されたのはツアー中に新山自身が撮りためてきた写真の数々だ。“新山詩織のファインダーの向こう”は、とてもやさしい世界だった。あたたかな拍手が会場を包むと、ステージに照明が点き、装いも新たな新山が登場。前半の柔らかな白のシャツブラウスと赤いワイドパンツ姿とは打って変わって、黒のライダーズに赤いタータンチェックのミディアム丈のワンピースに。ROCK GIRLな衣装よろしく、後半はバンドのメンバー紹介からスタートし、アッパーチューンやPOPなナンバーなど、場内の熱気は高まるばかり。


最新アルバム収録のキュートPOPな「Sweet Road」、『冬スポ WINTER SPORTS FESTA 16』公式テーマソング「Snow Smile」、会場が一斉にクラップせずにはいられなくなったノリノリなナンバー「Everybody say yeah」、タオルを力いっぱい振り回す「Dear friend」、2ndシングルとしてリリースされた「Don’t Cry」まで一気に聴かせるなど、後半戦は怒濤。「Don’t Cry」では会場とのシンガロングを存分に楽しみながら、会場をますますひとつにした。

そのエネルギーを受け止めて演奏された「LIFE」から、本編最後の曲「隣の行方」へ。アルバム『ファインダーの向こう』のラストナンバー2曲がそのままライブ本編を締めくくる。本ツアーがアルバムの持つ世界観を、そのままライブに投影したものだということが明白に伝わた。

新山とバンドメンバーがステージから姿を消すや、始まったのは“しおりコール”だ。盛大なアンコールを受けて、新山が登場するとさらに大きな歓声と拍手が彼女を迎えた。ステージに戻ってまず新山が伝えたのは、ファンへの感謝の気持ち。感極まって一瞬言葉に詰まると、「言葉で言うよりも歌で返したほうがいいと思うので」と、『ファインダーの向こう』から「名前のない手紙」を客席に贈った。“♪Dear you 親愛なるあなたへ”と綴るこの曲は、ファンに向けた新山からの感謝の手紙なのかもしれない。

そして、ツアー中に感じたファンへの感謝を改めて語りながら、このツアーをずっと支えてくれたバンドメンバーともツアーでの思い出を振り返った新山。アンコールはさらに、彼女のルーツミュージックでもある「ありったけの愛」「現在地」が続けて演奏された。会場には新山の同世代だけでなく、40~50代の姿も見られ、彼女のルーツに共感するファンも少なくないはず。ちなみに、アルバム『ファインダーの向こう』通常盤にはTHEATRE BROOK、THE GROOVERSと共演したスタジオレコーディング曲が収録されている。

アンコール最後の曲はメジャーデビューシングル「ゆれるユレル」だった。デビュー当時はどこか危うげな部分も魅力だった同曲は、どんな迷いを受け入れる力を手に入れた今、より魅力的に輝いていた。そのエンディングでステージを駆け回り、ギターをかき鳴らす彼女の瞳には、会場を埋め尽くすファンの姿が。葛藤を歌にしていた少女は大人になり、たくさんの挑戦と出逢いを経て、鮮やかでやさしい世界を写すファインダーを手に入れていたようだ。

■<全国ツアー2016-2017「ファインダーの向こう」>
1月21日(土)@東京・TSUTAYA O-EASTセットリスト

01. あたしはあたしのままで
02. 部屋でのはなし。
MC
03. 気まぐれ
04. もう、行かなくちゃ。
MC
05. 恋の中
06. 午後3時
07. 絶対
08. 糸
09. 四丁目の交差点
MC
10. Sweet Road
11. Snow Smile
12. Everybody say yeah
13. Dear friend
14. Don’t Cry
15. LIFE
16. 隣の行方
encore
en1. 名前のない手紙
en2. ありったけの愛
en3. 現在地
en4. ゆれるユレル

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