【インタビュー3/3】デフ・レパード、ジョー・エリオットの音楽原体験は?

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デフ・レパードの最新ライヴ作品『アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム…ライヴ・フロム・デトロイト』発売を記念する、ジョー・エリオット(Vo)へのインタビュー最終回(全3回)。ロック界のトップ・アーティストである以前に、ジョーは一人の音楽ファンだ。2017年後半からバンドはオフに入るが、彼は音楽を聴き込み、別プロジェクトを始動させるなど、音楽漬けの日々を送ることになる。彼はまた、その音楽偏愛の原点となった地元シェフィールドでの交流についても明かしてくれた。

◆デフ・レパード画像


──デフ・レパードはオフでも、あなた自身はずいぶん忙しいですね。

ジョー・エリオット:うん、いつでも何かしているのが好きなんだよ。何もしないでダラダラすることができないタチなんだ。ただ、音楽を聴くのはいつだって大好きだ。数ヶ月前、ザ・ローリング・ストーンズの全アルバムを年代順に聴き返したんだ。『ザ・ローリング・ストーンズ』(1964)からずっとね。イギリス盤とアメリカ盤ではタイトルが異なっていても曲目が重複しているアルバムがあるから、それらはパスしたけどね。最初期のモノラル音源のポップやブルースから「ギミー・シェルター」「悪魔を憐れむ歌」などに進化していき、1980年代には苦戦したけど、再びモジョ(=精力・活力源)を取り戻した。『スティール・ホィールズ』(1989)や『ア・ビガー・バン』(2005)にも良い曲が幾つもある。現時点での最新曲「ドゥーム・アンド・グルーム」も最高傑作のひとつだ。もちろん1日24時間聴き続けるわけにもいかないから、10日ぐらいかけて全アルバムを聴いたよ。達成感があった(笑)。

──マイナーなアーティストの作品を掘り下げたりしますか?

ジョー・エリオット:どれぐらいのアーティストだと“マイナー”になるのかな? トム・ウェイツはいつも聴いているけど、彼は“マイナー”ではないよね?ジョブライアスは決してメジャーではないけど、モリッシーが彼の名を広めたことで、知名度は上がったと思う。誰も知らないプログレッシヴ・ロック・バンドやフォーク・バンドはあまり聴いていないし、馬鹿高い廃盤レコードにも手は出していない。自分の好きなアーティストのレアな音源や映像を追うだけで、かなりの時間を要してしまうよ。日本に来るとレコード店街に繰り出すけど、前回はポール・マッカートニーのライヴCDを手に入れた。(写真家の)ロス・ハルフィンはロッド・スチュワートの白レーベル・サンプル盤LPを入手したと言っていたよ。

──あなたの所有している最大級のレア盤は何でしょうか?


ジョー・エリオット:モット・ザ・フープルのファースト・アルバム『モット・ザ・フープル』(1969)の初期プレス盤かな。「ロックンロール・クイーン」が入るべきところに「ロード・トゥ・バーミンガム」が間違って収録されてしまっているんだ。さらに他の収録曲も別ミックスだったりする。初期ヴァージョンは5千枚とも言われているけど、回収されてしまったものもあるし、現在世界に何枚あるかはわからない。数年前、ファンが「何年も持っていたLPだけど、あなたが持っているべきだと思う」と譲ってくれたんだ。最高にクールな経験だったよ。

──ボブ・ディランの『フリーホイーリング・ボブ・ディラン』(1963)も初期プレスは収録曲が異なることで有名ですね。

ジョー・エリオット:俺はボブ・ディランのファンじゃないから、何の意味も感じないけど(笑)、彼の熱心なファンだったら、何千ドルを払っても欲しいだろうね。現代ではレコードを“狩る”感覚が失われている気がする。何でもアマゾンにあるし、金さえあればネットオークションで落札すればいい。どうしても手に入らなくてもYouTubeで無料で聴けるんだ。中古レコード店で棚を漁るスリルが失われた気がして、ちょっと残念だね。

──ジョブライアスといえば、映画『ヴェルヴェット・ゴールドマイン』(1998)でジョブライアスのアルバム・ジャケットを見ながら自慰行為をするシーンが印象に残っています。

ジョー・エリオット:あったあった(笑)。あの映画は悪くなかったけど、ボウイの曲から『ベルベット・ゴールドマイン』というタイトルを採ったのに、ボウイが曲の使用許可を出さなかったんだよね。ジョナサン・リース=マイヤーズの役柄はとても良かったよ。あとプラシーボの彼(ブライアン・モルコ)が歌う「20センチュリー・ボーイ」も良かった。あの映画のサウンドトラック・アルバムは凄く気に入っているよ。公開当時はちょっと微妙だと思ったけど、今観たらもっと楽しめるんじゃないかな。実際にロックを生活にしていると、ロック映画というのは違和感をおぼえることが多いんだ。現在に至るまで、ロック映画の最高傑作は『スパイナル・タップ』(1984)だからね。あと良かったのは『あの頃、ペニー・レインと』(2000)かな。キャメロン・クロウは優れた映画監督だし、実際にロック・ジャーナリストをやってきたから、リアルで説得力があった。

──デフ・レパードの曲タイトルから名付けられたロック・ミュージカルの映画ヴァージョンは?

ジョー・エリオット:『ロック・オブ・エイジズ』(2012)ね。けっこう楽しかったよ。ポール・ジアマッティとラッセル・ブランドの演技は良かった。あの映画でトム・クルーズが「シュガー・オン・ミー」を歌うシーンを撮影したとき、俺たちも現場にいたんだ。ちょうどツアーでフォートローダーデイルにいたからね。あの映画が史上最高のロック映画かというと違うだろうけど、娯楽作品としては楽しめるよ。『マンマ・ミーア!』だってそうだ。深くシリアスに考えずに、楽しむことを優先する映画だよ。今楽しみにしているのは『ロッキー・ホラー・ショー』のリメイクなんだ(2016年10月にTV放映)。録画予約をして、まだ本編は見ていないんだけど、予告編を見る限りではけっこう面白そうだよ。もちろんオリジナル至上主義者からは批判があるだろうけど、俺はオープンな気持ちで見るつもりだ。

──1970年代後半、デフ・レパードがデビューしたての頃、シェフィールドでどんなバンドと一緒にライヴをやっていましたか?ABCのマーティン・フライがあなた達と交流があったと言っていましたが…。


ジョー・エリオット:実はよく覚えてないけど、ABCと一緒にショーをやった可能性は十分にある。ABCのサックス奏者だったスティーヴン・シングルトンとは中学が一緒だったんだ。シェフィールドは決して大きな町ではないし、音楽シーンではいろんなタイプのバンドが交流していた。ヒューマン・リーグもそうだし、トンプソン・ツインズは12キロぐらい離れたチェスターフィールド出身だった。パルプは当時からやっていて、1990年代のブリットポップ時代にブレイクしたんだ。デフ・レパードがヒューマン・リーグの前座をやったこともあるよ。フリー・フェスティバルで、ノーギャラだったけど、大勢の人に自分たちの演奏を見てもらえた。1978年だから、「愛の残り火」のはるか前だよ。クラフトワークみたいな音楽をやっていて、女の子たちはまだ加入していなかった。

──ヒューマン・リーグと交流はありましたか?

ジョー・エリオット:俺が育ったブルームヒルに『レコード・コレクター』というレコード店があって、俺もフィル・オーキーも出入りしていた。長髪のロック野郎と、頭の左がショートで右がロングのニューロマンティクス野郎が並んでレコード棚を見て、同じミック・ロンソンのレコードを探していたんだ。フィルとは親しかったわけではなかったけど、会えば「よぉ!」って感じだったし、彼らが成功したときは嬉しかったよ。ところでデフ・レパードとヒューマン・リーグの3つの共通点って知ってる?

──…何ですか?

ジョー・エリオット:(1)シェフィールド出身だということ、(2)『ヒステリア』というタイトルのアルバムを出していること、(3)どちらもミック・ロンソンの「オンリー・アフター・ダーク」をカバーしたことだよ。同じ曲なのに、彼らのヴァージョンはクラフトワークみたいで、俺たちのヴァージョンはディープ・パープルみたいなんだ(笑)。

取材・文:山崎智之
Photo by Ross Halfin assisted by Kazuyo Horie & John Zocco


デフ・レパード『アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム… ライヴ・フロム・デトロイト 』

2017年1月27日日本先行発売
【150限定通販限定Blu-ray or DVD+2CD+アルバム『デフ・レパード』+Tシャツ+2017年カレンダー】¥14,000+税
【完全生産限定Blu-ray or DVD+2CD+アルバム『デフ・レパード』+Tシャツ】 ¥14,000+税
【初回限定盤Blu-ray or DVD+2CD】 ¥8,800+税
【通常盤Blu-ray or DVD】 ¥6,800+税
BD/DVD
1.レッツ・ゴー
2.アニマル
3.レット・イット・ゴー
4.デンジャラス
5.フーリン
6.ラヴ・バイツ
7.アーマゲドン
8.ロック・オン
9.マン・イナフ
10.ロケット
11.ブリンギン・オン・ザ・ハートブレイク
12.スイッチ625
13.ヒステリア
14.レッツ・ゲット・ロック
15.シュガー・オン・ミー
〈アンコール〉
16.ロック・オブ・エイジズ
17.フォトグラフ
ボーナス映像
1.レッツ・ゴー(リリック・ビデオ)
2.レッツ・ゴー(ミュージック・ビデオ)
3.デンジャラス(ミュージック・ビデオ)
4.マン・イナフ(ミュージック・ビデオ)
5.ウィ・ビロング(ミュージック・ビデオ)

【メンバー】
ジョー・エリオット(ヴォーカル)
フィル・コリン(ギター)
ヴィヴィアン・キャンベル(ギター)
リック・サヴェージ(ベース)
リック・アレン(ドラムス)

◆デフ・レパード『アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム… ライヴ・フロム・デトロイト 』オフィシャルページ
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